5 目が覚めるとツインテール女子に声を掛けられました。
「体育の鬼頭覚えとけよ…!まじでお前のこと恨んでやる…!」
新学期始業式が終わり、教室へ戻ってきてもなお俺は朝の出来事に対して怒っていた。鬼頭が頭を撫でて髪をぐしゃぐしゃにしたせいで俺はクラスのやつらに笑われたのだ。
「まぁまぁ落ち着けって。新学期からインパクトすごかったぜ。絶対クラス全員お前の名前覚えたと思うわ~」
「別に俺はクラスで目立ちたいわけじゃないんだよ!」
軽いノリで話してきたこいつは去年も同じクラスだった山下卓也。話しはかけやすいのだが、時たまその軽いノリで人をイラつかせる。友達は多いが親友は少ないタイプだ。だが俺はこいつのことは嫌いではない。なぜなら単純だからだ。わかりやすいやつが1番である。
「それにしても有園!このクラス当たりじゃないか?美人な吉田絵理ちゃんもいるし他にも可愛い子いるしさぁ!」
山下はにやにやしながら吉田さんの方を見ている。吉田さんは山下の視線に気づき、気味が悪そうな顔をしている。俺も吉田さんの立場であれば気味が悪いだろうなと思った。
「まぁこのクラスは俺も当たりだと思うぞ。ツインテールの女子の数がダントツで多いからな。ちなみに各クラスにいるツインテールの女子の数は1組と2組が2人で4組が1人、5組にいたっては0だ。それに対して3組は…」
「有園…お前、気持ち悪いな。」
引き気味の顔で急に山下に言われた。心外だ。ツインテールは正義である。ツインテールの素晴らしさがわからないとはなんてやつだ。それに…
「お前にだけは言われたくない。お前にだけは言われたくないぞ山下…!まず俺のことを気持ち悪いって言うなら吉田さんを見るのをやめろ。お前の方がよっぽど気持ち悪いぞ…ほら吉田さんの顔を見てみろよ。まじで怖がってる。」
「げ、まじかよ!?嫌われるのはごめんだわ~。」
そう言うと、山下は吉田さんから視線を外してまた話始めた。
「あのさあ有園ー。1年のときから思ってたけどツインテールに執着しすぎじゃね?もっと視野を広くした方がいいぜ~ポニーテールだって可愛いじゃーん!」
十人十色なんだから仕方ないだろうが!と、大きな声で言おうかと思ったがここは抑えた。そして冷静に応えた。
「あのなぁ山下?別にポニーテールを否定するつもりはないんだよ。ただ俺はツインテールが1番好きでツインテール以外の髪型に興味がないだけなんだよ。」
「でもよー…」
何を言っても同じことの繰り返しになりそうだったから俺は自分の腕を枕にして寝た。こういう行動をとることが単純なやつには1番効くのだ。
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「…ん、んー、ん?んん??え、嘘だろ。ガチ寝してたのか??」
目が覚めて周りを見渡すと誰もいない。
「まじかよ誰か起こしてくれればよかったのにー。」
「あら、山下君が何回も声を掛けていたわよ?でもあなた、熟睡していて起きなかったわよ?」
「!?」
急に後ろから声が聞こえ、俺はとても驚いた。それもそのはずだ。さっきまで誰もいなかったのだから。
「こんにちは有園竜二君。私の名前は佐野春香。1年間よろしくね。」
ご丁寧に自己紹介をしてくれた。だが俺は去年同じクラスではないがこの女子を知っている。佐野春香さん。この子は2年3組、つまり俺のクラスのツインテール女子の1人だ。