4 遅刻回避できました?いえ、恥を掻きました。
「ふう…間に合った~。あーしんどかったー。」
走って門を通った直後に予鈴がなった。俺はギリギリ間に合いほっとした。しかしほっとしたのもつかの間、背中を叩かれた。朝から叩いてくるとか非常識なやつがいたものだなと振り返ると
「有園ぉ!お前は新学期からギリギリとかやる気あるのか!?先生は悲しいぞ!?」
げっ、熱血体育教師の鬼頭だ。鬼頭は生徒指導部に所属しており、遅刻や身だしなみなどに過剰に反応して指導していると言われている。恐ろしいやつに目をつけられてしまった。ひとまず逃げなければめんどくさいことになるな…
「あはは…鬼頭先生おはようございます。今日は家の都合で少々遅れてしまっんです。俺も新学期からギリギリで登校するのはあまりよくないと思います。しかしあくまで今日は家の都合ですので…」
すると鬼頭は俺の頭をグシャグシャと撫でてきた。力強くて少し痛い。
「そうだったのか有園ぉ!それは仕方ないなぁ。玄関の前にクラス発表の紙が貼られてるから見て新クラスに行くんだぞぉ!」
まぁ姉との口論は家の都合という言い方で大丈夫なはずだよな?俺はそう思いつつ鬼頭に笑顔で会釈をした。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
玄関に着くと思った以上に人がいた。なぜか周りのやつらが俺のことを見て笑っている気がするが気のせいだろうと無視をした。それにしても人が多くてクラス発表の紙と俺との間に距離があって見えないなぁ。
「ちょーっと失礼しますねー。通らせてくださいねー。」
そう言って人と人との間を通ってクラス発表の紙の前へと近づき少しドキドキしつつ俺は紙を眺めた。
「2年3組で担任は国語の斎藤か。あと5年若くてツインテールだったら俺のストライクゾーンだった先生だな。悪くはない。あと知り合いはいるか…?」
俺が思うにクラス発表で大半の人が気になることは担任と知り合いがいるかということだと思う。しかし俺にはもう1つ大事な要素がある。
「2年3組のツインテールの女子の数は…3人、いや、4人か。髪型がたまに変わるけどツインテールで学校に来たことがある子も含めると6人かな。40人のクラスで女子の人数は19人。19人中6人は多い方だな…よし!当たりのクラスだ!」
俺はぶつぶつ言いながらツインテールの女子についての分析を行った。俺の頭の中にはこの学年だけでなく3学年分のツインテール女子についての情報が入っている。一応ツインテール女子についてまとめたノートもあるのだが記憶力は昔からよい方なのであまり確認する機会はない。しかし鞄の中に常に入れてある。
キーンコーンカーンコーン
気づけば先程までは人がたくさんいたのにいつの間にかいなくなっている。
「って!本鈴鳴ってんじゃん!?これはやばいだろ!!」
俺は走って新しいクラスの2年3組へと向かった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
あーあ、クラス変わって最悪。仲のいい子とはクラス離れちゃったし全然知らない子だらけだし。
私は空をボーッと眺めていた。
「出欠をとります。赤坂愛さん。」
「はい。」
「有園竜二君。」
「…有園君?あら、いないのかしら?」
新学期から来ないとかなかなかすごいやつがいるのね。あ、白い鳥だ。可愛いなぁ。
ダッダッダッガラガラ!
急に教室の扉が開いて人が入ってきた。クラスの人全員がそちらへ注目する。
「遅れてごめんなさい!出席番号2番の有園竜二です!」
クラスの人たちは一瞬固まった。が、次の瞬間大笑いの嵐が起こった。
「有園君、本鈴に間に合うようにこれからはクラスに入ってくださいね?あと髪がすごいことに…なっているから直した方がいいわよ…?」
先生は笑いを抑えながら声を震わせ話した。
「え、あ!こ、これは鬼頭先生が!!鬼頭先生がさっき髪をぐしゃぐしゃって撫でてきたせいです!!」
顔を真っ赤にして髪を手で隠しながら席へと彼は座った。
「えー、では、出欠に戻りますよ?今井正浩君。」
「はーい。」
クラスはまだ笑いの雰囲気に包まれている。
有園竜二か…前言撤回ね。なかなか面白そうなクラスかもしれないわ…!