47 復讐劇その18
「チッ…」
りんかの笑顔に、思わず俺は舌打ちをしてしまった。
イカれている…俺はりんかと対面してそう感じた。人の話を全く聞いていない。春香とは性格が違っていて、姉妹とは思えないほどだ。
それにしても、だ。りんかは明日香に相当心酔しているようだな。明日香のために桜を傷つけ、明日香のために自分の妹を…春香をも傷つけた。そして…その事に対し、罪の意識は無いようだ。りんかには、人の心というものがないのであろうか。
「有園の弟くーん?それで?どうするのー?お姉ちゃんのことや春香を傷つけた腹いせに暴力で対抗するの~?それとも二人に謝ってほしいのかなぁ?」
煽りに煽ってくるりんかに腹立つが、ここでムキになってはりんかの思う壺だ。
俺は深く息を吸い込み、言葉を発した。
「そう…ですね。まずは二人に…姉と春香に謝ってほしいです。それから…」
「あははははは!!絶対に謝らないわ!!だって私たち悪くないもん!」
…自分がどうしてほしいかって聞いてきたから答えたのに、いったいなんなんだ。人の話を遮って…本当に話が通じないんだな。
「あ、ちなみに私はね~有園の弟君も有園も、あと春香も!明日香に対して謝ってほしいなぁ~。目の前にいるだけで腹が立つもの。それで、私と明日香の前からいなくなってほしいわ。あー!でも!それじゃあつまんないよねぇ明日香!やっぱり物理的に『排除』しないと!!」
ベラベラと勝手に話しているりんかを見て、俺は呆れた。『排除』?何を言ってるんだ。
「はは!あっははは!!排除!!そう排除よ!!明日香の気に入らないものぜーんぶ!!私の邪魔をする人もぜーんぶ排除!!あっはははははは!!」
「おいっっ!いい加減にしろっ!!」
ずっと笑い続けているりんかに今まで以上に苛立ちを覚え、俺は声を荒げてしまった。
くっそ…さっきまでりんかの思う壺になってしまうって思っていた冷静さはどこに行ったんだ。
「あはは!いい加減にしろ?なんのことかわかんないけど、とにかくこのやり取りを終わらせればいいのかしら?それなら簡単よ!」
そう言うと、りんかは俺に向かって走ってきた。
…なんだろう。すごい違和感だ。だけど何がおかしいのかがわからない。だが、嫌な予感がした。
『避けなさい!!!』
頭の中でその言葉が響いた。その言葉の通り俺はりんかを避け、振り返った。
それにしてもこの頭に響く感じは…
「…あーあ、避けちゃった。せっかく…終わらせようと思ったのになぁ?」
「…っ!!」
俺はりんかの右手に持っているものを見て、唖然とした。この教室にいる者達…特に女子は綺麗な悲鳴をあげていた。それもそのはずだ。なぜならりんかの右手に持っているものは人を殺せてしまう道具…ナイフなのだから。
「あはっ。物理的に『排除』よ!」




