46 復讐劇その17
なんで…なんでこんなことになっちゃうの…。こんなの、本当の私じゃない…。だけど私自身では止められない…。私の身体なのに…。いったい私の身体を操っているあなたは誰なの?私の身体から出ていってよ!
(ははっ!出ていけって言われて、「はいそーですか。出ていきます。」って言うやつなんてどこにもいないわよ!私たちは明日香が自殺しようとしたあの日から、ずっと一緒にいたじゃない。それに前から言ってたけど、凜香ちゃんに私のことなんて理解できっこないわ。ははは!それにしても…とうとうこの日が来たんだわ!!あぁ、私はこれから初めて人を『殺すの』!!)
!!何言ってるの!?人を『殺す』ですって!?
(えぇ!有園の弟君を殺すわ!!あぁ!!早く可憐に咲く、血の花を見たいわ!)
あなた…絶対に狂っているわ…!人を殺していったい何になるの!?
(何になるも何も、自己満足のために決まっているじゃない!明日香に褒められたい、人を殺す理由なんてそれだけで十分でしょ?明日香の気に入らないものは物理的に『排除』するのよ!)
明日香は…明日香はそんなことを望んでなんかいないわ!明日香はそこまでひどい子なんかじゃない!そんなことで喜ばないわよ!
(はぁ…ホント明日香のことわかってないわね。まぁいいわ。凜香ちゃんの身体は、しばらく私が使わせてもらうから。凜香ちゃんはそこで見ていなさい。)
ちょっと!待ちなさいっ!!…嘘でしょ…私はいったいどうすればいいの…?
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私はしばらく外の様子をただボーッと見ているだけだった。私の身体なのに、私じゃない誰かが好き勝手に動かしている。嫌なことだが、慣れてしまった。
「わ、私はもう憎くなんてないよ!有園のこと!だからっ…」
明日香…やっぱり、そうだよね…。本当はもう憎くなんてないよね。
明日香の言葉を聞き、目頭が熱くなった。
「無理、しなくていいよ。わかってる。明日香は強がってるだけ。」
…違う。明日香は強がってなんかいない。さっき私に明日香のことをわかってないって言ってたけど、あなたの方が明日香のことをわかっていないわ!!
「そ、そんなことない!心から思ってるわ!」
必死に私(厳密に言うと私の身体を操ってる人)に訴えかける明日香。ごめんね…わかってる。わかってるよ明日香…。本音ってことわかってるのに…。
「それにね、明日香。」
私は…私の身体を操る権利はないみたい。私には私を…
「もう、止められないんだよ。」




