43 復讐劇その14
「俺の名前は有園竜二。あなたたちが今までいじめてきた、有園桜の弟です。」
にっこりと微笑みながら、教室の中へと進んだ。
「…有園の弟…」
「え、これやばくない…?」
何が「やばくない?」だ。あんたらの行ってきたことの方が、よっぽどやばいわ。
心の中でそう思いつつ、表情はその感情を出さないようにした。
「さてみなさん。単刀直入に言うと、俺は皆さんのことを許せないです。俺の大事な姉のことを傷つけた。あなたたちは重大な罪を、犯してしまいまし…」
「うるせーよ!中坊が何イキッてんだよ!!」
話しているのを遮り、俺の側まで来る男。ははっ。こいつらの中で、1番最初に話すのがお前か。
「久しぶりですね、姉の彼氏の明久さん。」
「黙れクソガキ…!」
やれやれ、高校生のくせにちゃんとした文章で話せられないようだ。
「っは!俺は元々お前のねーちゃんなんてキョーミないんだよ!!俺がキョーミあるのは…」
「明日香さん、ですよね?明久さん。」
「…!」
「明久さん、あなたは明日香さんのことが好きだった。そんなあなたの好きな明日香さんが嫌いだったものは…俺の姉、有園桜だった。そしてあなたは決めた。明日香さんのために、『有園桜』を絶望させようと。」
俺はニヤリと笑い、こう続けた。
「でも!!俺の姉はもうすでに絶望していましたよね!!だってこのクラスの皆さんにいじめられていたんですから!!」
クラス中がどよめく。はぁ、全く。騒がしいクラスだ。
「…でもその時、こう考えましたよね?一筋の光を見せてから絶望させれば、さらに傷つくだろうと…。だから、だから…姉と…桜と付き合って…あんなことやこんなこと…」
プルプルと震えた。その様子を見て、相手は泣きそうになっていると勘違いをしたらしい。
「何?泣くの?ねーちゃんいじめられて?というかそのことねーちゃんに言われたの?あいつ、鈍いから気づいてないと思ってたのに…くそつまんね………っ!!」
「何がくそつまんねーだよ。黙ってろ。」
ガタンッ!!!!!
俺がそう言ったと同時に姉の彼氏、明久は盛大に机にぶつかって倒れた。
「えっ…?」
何が起きたのか、明久はわからなかったようだ。間抜けな声を出している。
「油断しているから、足蹴られてバランス崩れるんですよ。バーーカ。」
中学生にバカにされて、相当頭にきたらしい。
「て、てめぇ!!ふざけるな…!」
すぐに立ち上がり、殴りかかろうとしてきた。しかし…
「待って…もう、やめて!!」
ピタッと、明久の攻撃が止まる。声のする方を見て、とても驚いた表情をしている。正直俺も驚いた。
「な、なんで…どうして止めるんだよ、明日香…。」




