42 復讐劇その13
「ねぇちょっと…あの照明が落ちたのって、凜香ちゃんが仕掛けたからなんだよね?」
やめて。
「うん。照明が落ちるように細工してた凜香ちゃんを、見た子がいるんだって。」
やめて。
「やっぱり目的は桜だよね?前に殺そうとしてたし…」
やめて。
「でも実際は、別の子に落ちちゃったんだよね…。しかも噂によるとね、照明の下敷きになった子は凜香ちゃんの妹なんだって…」
やめて。
「え、本当に…?それって絶対に、凜香ちゃん後悔してるよね…」
やめて。その話をしないで。
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ガラガラッ!
教室の扉が開き、クラスのみんながそちらに注目した。
「ハァ…おい!照明の下敷きになった子、命に別状はないってさ!」
「凜香!よかったね!春香ちゃん一応無事だって!」
私は話しながら凜香の方を向いた。
「くそ…あいつのせいで…あいつが邪魔をしたせいで…」
「えっ…」
凜香、いったい何を言っているの?と、普通だったら言うだろう。でもそんなことを言える雰囲気ではなかった。様子が明らかにおかしい。
すると、急に凜香が目を見開いて私の肩をぎゅっと掴む。
「い、痛い…!凜香、手を離して!!」
精一杯の大きな声を出した。クラスの人たちは、何事かと凜香と私に注目する。
「明日香…ごめん、ごめんね…!春香が勝手にでしゃばったせいで、有園を殺せなかった…!!本当にごめん…!」
私は凜香が何を言っているのかわからなかった。勝手にでしゃばる…?有園を殺せなかった…?
「ちょ、ちょっと凜香?どういうこと…?」
きょとん、という表情をする凜香。いや、きょとんはこっちの方なんだけど…
「え、だって凜香は有園のこと嫌いでしょ?」
「まぁ、うん。いじめる程度には。」
凜香は急に、何を聞いているのだろうか…いまいちピンとこない。
「有園のこと、消えてほしいって思ってるでしょ?」
「まぁ、本人にも言ったしね。私の前に現れてほしくないわ。」
…なんだか嫌な予感がしてきた。
「ねぇ、凜香。どうしたの…?絶対おかしい…」
「あっは、あははは!やっぱりそうだよね!?だから私、明日香のために有園を殺そうと思ったの!殺して明日香に褒められたかったの!凛香すごいね!って!なのにあいつが…春香が邪魔をしたから…」
私は冷や汗が止まらなくなった。
「有園を殺せば明日香は私のこと、褒めてくれたよね…?」
急に凜香は真面目な表情になった。
「………。そ、それは……」
バンッ!!
後ろの教室の扉が、勢いよく開く。私が凜香に言おうと思った言葉は、それに遮られた。
「どうもこんにちは。春城高校3年A組のみなさん。」
いきなり入ってきた人の声を聞いただけで、背筋がぞわっとした。
な、なんなの…この威圧感…。
「俺の名前は有園竜二。あなたたちが今までいじめてきた、有園桜の弟です。」
クラスの人たちは、ざわざわと騒ぎだした。それもそのはずだ。いじめてきた人間の身内が来る。何かが起こるに決まっている。
…!!そういえばこの顔!さっき舞台に上がってきた、男の子だわ…。そっか…有園の弟か…
複雑な感情を私は抱いた。




