41 復讐劇その12
「…!!春香…」
春香…すまない。もう少し俺が早く動けていたら…。
「竜っ!!」
昔から知っている声が、後ろから聞こえた。振り向くと幼馴染みの雪奈、そして山下が走ってここへ来た。
「ハァハァ…その倒れてる人って…!!やっぱり春香なんだな…!?」
「ハァ…まじかよ…春香ちゃん…。」
2人とも走ってきたから、息切れをしている。と、雪奈が俺の肩を掴んだ。
「竜っ!!!なんで春香がこんなことになっているんだ!なんで…なんで!?」
「雪奈ちゃん、落ち着いて!」
山下がそれを言った瞬間に、雪奈は全てを吐き出すように叫んだ。
「竜と春香がいなくなって私、し、心配したんだぞ!?それで急に走って戻ってきて、何事かと思ったら照明が落ちて春香が下敷きになっているし…わけわかんないぞ!!なんで…なんで春香が…うあぁぁあ!!」
雪奈は泣き崩れた。まるで子供のように。
…春香と雪奈は、最初はあまり仲は良くなかった。だけどいつの間にか2人には、友情が芽生えていたようだ。雪奈につられて、俺も泣きそうになる。
「…お前は泣いてる暇はないだろ?竜二?」
ハッとして声のした方に顔を向ける。すると山下が真剣な顔で、俺のことを見ていた。
「竜二、俺さ、お前のこと結構見てきたからわかるんだ。この春城高校のイベントで、何かが起きることがわかっていたんじゃないのか?」
山下は、泣き崩れた雪奈の背中を擦りながら話した。
いつもとは違う山下の雰囲気に、俺は驚きを隠せなかった。
「…!山下、なんでそう思ったんだ?」
「だからさっきも言ったけど、お前のこと見てきたからわかるんだよ。最近のお前、殺気が凄かったぜ?」
…!今まで俺は山下のことをただの鈍いやつと思っていたが、本当は1番鋭いやつだったのかもしれないな…
「さて、とりあえず俺と雪奈ちゃんで、春香ちゃんとそこに倒れてるお前のお姉さんに付き添って病院まで行くわ。」
「!?なんでそこに倒れてるのが俺の姉さんだと…」
なんとも言えない表情をしている俺を見て、山下は笑いながら応えた。
「ははっ。俺は頭もいいし、聴力もいいんだよ。俺に任せとけって。お前はお前のやるべきことをやってこいよ。」
「あ、ありがとう…。」
こんなときに不謹慎かもしれないが、俺は幸せな気持ちになった。ついつい笑顔になってしまう。
「お、救急車が来たみたいだな。それじゃあ竜二、行ってくるわ。」
「おう、俺も用事が終わったらすぐに行くさ。またあとでな。」
「あぁ。あとで。」
山下は泣きっぱなしの雪奈を支えて、担架で運ばれている桜と春香に着いていった。
ありがとう、山下。お前のお陰で俺は桜をいじめていたやつら…つまり3年A組のやつらと話すことができる。そう、話すことがな!!それと桜のことだけじゃない。春香のことも…な。
俺は、山下と雪奈が体育館を出るまで、2人のことを見ていた。




