40 復讐劇その11
ガシャンッ
「きゃぁぁぁぁぁああ!!!」
「え、おい!!あれって人だよな!?」
叫び声や動揺している人の声が、体育館中に響く。
「嘘だろ…まさか…」
隣の席で一緒に劇を見ていた山下は、今起こっていることが信じられないようだ。無理もないだろう。だって…
「春香っ!なんであんなところにいるんだ!!」
あの照明の下敷きになっている人は、紛れもない春香だ。
それにしても私が思っている以上に、私自身は焦っているようだ。いつも以上に早口になっている。
「!?今、俺のこと…」
「そんなことは今はどうでもいい!!早く行くぞ!!!」
私と山下は舞台へと向かった。
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「おい、春香っ!!」
「うぅ…」
くそ…もっと早くこの状況がわかっていれば…いや、今は悔やむことよりも、春香を助けることが大切だ。
「誰かっ!救急車を呼んでください!!それと照明をどかすので、手伝ってほしいですっっ!」
俺は大きな声で、周りの人に向けて叫んだ。するとすぐにみんな動いてくれた。
「お、俺、救急車呼ぶ!」
「私は保健の先生を呼ぶよ!」
「俺たちで照明どかすから、少し下がってて!」
周りの人が、早く反応してくれる人たちで助かった…とりあえず、今やるべきことはやれそうだ。
桜は、突き飛ばされた衝撃で気絶しているようだ。念のため桜も病院に連れていってもらおう。
「…なんで。なんでなの…」
後ろから静かな声が聞こえた。振り返ると、春香の姉の『りんか』が立っていた。そしてその隣には、明日香もいた。2人ともその光景をボーーっと眺めているだけ。正直ぶん殴りたい。
「うっ…竜…二…」
男の人たちに、照明をどかしてもらった春香が、苦しそうな声で俺を呼んだ。
「どうした春香?俺はここにいるぞ!!」
春香の側に行き、手を握る。
照明のどかされた春香の下半身を見ると、足が不自然に曲がり、照明の破片が刺さっていた。血の量もすごい。パッと見ただけで、重傷だということがわかった。
「竜二…ごめんね…凜香姉さんのこと、止められなかった…。そのせいで、お姉さんのこと突き飛ばしちゃって…」
春香は泣きながら謝罪してきた。
「お前…そんなことよりもその足!お前の方がよっぽどひどいよ。俺の姉さんに対して謝るよりも、お前は自分のことを大切にしろ…!」
俺は真面目な顔でそう言った。
「…竜二、心配してくれてありがとう。でも、謝っても謝りきれないよ…。だって…事の発端は凜香姉さんなんだもん…」
「それは春香には関係ない!春香の姉さんが勝手にやったことだ!」
春香には…春香には関係ないんだ。そう思うと、さらに辛くなった。全く関係のない妹が、とばっちりを受けているということに。
「ねぇ…竜二…。言いたいことがあるの……。」
すぐに意識が飛んでしまいそうな、そんな様子の春香が力を振り絞って俺の方へ体を向けた。
「…!おい!無理するなよ!!」
「無理するよ…!!お願い…聞いて!」
止めようと思っても、春香は話し続けた。
「竜二…あのね…凜香姉さんは、明日香さんのことが大切なの。でもそれが空回りして、凜香姉さんと明日香さんは歪んでしまった…。凜香姉さんたちは悪いことをしたわ…。でも…でも!あの人たちは、本来は優しいの。だから………」
「おい!!」
俺が手を握ったら握り返してくれていたが、どうやら気を失ってしまったらしい。俺の手から春香の手がすり抜けた。




