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3 新学期その2

「なんなのあいつ…!本当になんなのよ!!」


大声でさっき玄関へと向かった弟の竜二に叫んだ。


朝から私の地雷を踏んで半泣きにさせるようなことを言っておいてそのあとにちょっと優しくするとか卑怯すぎる…!姉の顔を赤くさせてそんなに楽しいのか!!からかうのもいい加減にしろ!


「優しくされると…きゅんとしちゃうでしょ?馬鹿竜二…」


本音がつい口から出てしまう。からかわれただけのはずなのにきゅんとしてしまうなんて…竜二の目の前では絶対に言えない言葉だなと思った。


それにしても竜二は反抗期真っ盛りで困ったことだ。昔はもっと可愛かったのに…




「ねぇ!お姉ちゃん!なんであの人ツインテールじゃなくてポニーテールなの???僕ツインテールじゃなきゃやだ!!」


そう言われても人の個性だしなぁ…その事を話すしかないよね…?


「竜二、世の中にはたくさんの人がいるんだよ?全員ツインテールだったら個性がないじゃん?あの人はポニーテールが好きだからポニーテールにしてるんだよ。」


そういうと竜二の顔から喜怒哀楽の表情がなくなり遠くを見る目になっていた。そして一言。


「お姉ちゃん…世の中って世知辛いんだね…」


私はその表情を見て竜二の将来が不安になった。




む、昔は可愛かった??いや、今思い出したのは昔も今も変わらない気がする…あいつは今もツインテール狂いだから…さっきも一瞬だけど私のツインテールを見てたし。きっとあいつはツインテールで変な妄想をしてたのね。この事に関しては本当に気持ち悪いわ…


とにかく成長するとどんどん可愛いげがなくなっていっている気がする。でも可愛いげはないけど死んだ兄と重なる時がある。さっきも兄と重なってしまった。そして私は兄と重なる度に少し切なくなる。


「竜一お兄ちゃん…」


返事が返ってこないのはもちろんわかっていた。しかし兄の写真が入っているロケットペンダントを握りしめながらそう呟いた。


兄のことは本当に好きだった。あの日、私が『大切なもの』を飛ばされなければ兄は死ななかった。『トラックに轢かれる』ことはなかったのだ。私のせいで兄は死んでしまった。今でも後悔している。でも後悔をしても死んだ人は戻ってこないんだ。そう思って吹っ切れたはずなのに…どうしても兄のことを思い出すと胸が痛くなる。


「って、何考えてるの私!!朝からネガティブモードじゃだめでしょ!?元気出せ有園桜!私は有園家の長女なんだから!!」


無理矢理ちょっと沈んでいた気持ちを抑えて私は自分の部屋へと向かった。

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