36 復讐劇その7
ガタンッ
「…!!竜二っ!急に立っちゃダメだよ!!」
「あいつ…!あいつ絶対に許さない!!」
あいつは…明日香は桜に今確かに、『あなたなんか消えてしまえばいいのよ』って!!くそ、許さない!!
「竜二!!ねぇ変だよ!?どうしたの!?」
「シンデレラ役のあの女の人は、俺の姉なんだよ!!俺の大事な姉なんだよ!!あいつらは…あいつらはずっと俺の姉を傷つけてきた!もう見ていられない!!」
俺は舞台の上まで行こうとした。すると春香は、俺の服を掴む。「やめろ!!」と言おうと振り返ると、ほろほろと泣く春香の姿があった。
「ごめんなさい…。本当に、ごめんなさい…!!」
なぜ泣いているのか、なぜ謝ってくるのか俺は理解できなかった。俺はどうすればいいのかわからず、とりあえず春香と2人で体育館を出ることにした。
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客席の方からガタンッていう音が聞こえた。そして聞き慣れた声も。…やっぱり来ちゃったんだね。こうなると思ってたよ。やめてよ。その声を今聞くと…
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「…」
たくさん言いたいことがあったはずなのに、いざ体育館を出て2人きりで静かな場所にいると、何も出てこない。泣いたままの春香に、どう声をかければいいのかわからないのだ。
「あ、あのさ、竜二…。その…シンデレラ役の女の人は、竜二のお姉さんなんだよね…?」
下を向いて春香は話しかけてきた。
「あ、あぁ。俺の大切な…大切な『姉』だ。だから…さっき姉のことを傷つけたあいつらが気に入らない。許せないんだ。」
思い出すと、つい眉間にシワが寄ってしまう。
そんな今まで俺がしたことのない表情を見て、春香は一瞬驚いた顔をしていたが、すぐに暗い表情になった。そして口を小さく動かす。
「あのね、竜二…。実はね、竜二のお姉さんを叩いていた、義理の姉役の女の人は…私の実の姉の凜香なの。そして…継母役の人は、凜香姉さんの幼馴染みの明日香さん…。あの…私が謝っても何もならないかもしれないけど…本当にごめんなさい。」
「…!」
このことを聞いて、春香が謝ってきた理由がようやくわかった。そういうことだったのか…
「…。いや、謝ってくれてありがとう。だけど俺は当然のことだが、春香が謝っても許せられない。謝ってほしい相手は姉だし、何より春香じゃなくて本人たちから謝ってほしいんだ。」
俺はいつもよりも低い声で、真面目にそう告げた。
「…そう、だよね。…あのさ、私の姉さんたちの話を聞いてくれるかな?」
「あぁわかった。話してくれ。」
春香は深呼吸をして、語り始めた。




