35 復讐劇その6
「ねぇ…今のって本当に演技だよね?」
「そ、そうに決まってるでしょ?じゃないとあんなんいじめじゃん…。」
義理の姉役の女子がシンデレラ役の桜を叩いたのを見て、周りの人々はとても驚いていた。そして全く演技に見えなかったようだ。まぁ演技でないことが事実なのだから、仕方のないことだ。
それにしても俺が置いておいた手紙は、何も効果はなかったようだ。ごめんな、桜。頬を叩かれて痛いよな。俺がもっといい対処法を考えられればよかったんだが…
桜への申し訳なさと、クラスのやつらへの怒りが込み上げてきた。
…そういえば桜を叩いたあの女。確か…SNSで使っていたユーザーネームは、『りんか』だったな。あいつは…明日香のことを尊敬している印象があったな。それ以外は大人しそうなイメージだが…。今の様子を見ると、なかなか俺の桜をいじめてくれているようだ。ここまで人を憎いと思ったことは、ないかもしれない。
「あなたたち。どうしたのかしら?」
…!!こいつ!!こいつがあの明日香だ。クラスでは人気者。しかしこいつは…桜を『殺そうとしたやつ』だ。絶対に許さない。絶対に…!!
「あら、お母様。聞いてくださいよ。シンデレラったら掃除はきちんとできなくて、さらにアクセサリーまで無くしてしまうのよ?お母様からシンデレラに注意していただけませんか?」
「まぁ、それは本当なの?いえ、本当よね。シンデレラったらなんて子なのかしら。私の産んだ子たちがそんなに嫌なの?それとも私のことが嫌いなのかしら?どちらにしろ旦那様には報告しないと、ね?」
「…!!」
そう言うと、明日香はゾッとするほどの笑みを浮かべた。隣にいる春香が冷や汗をかくくらい、それは怖かったのだ。そして、シンデレラ役の桜も春香と同じ状態だった。
「何をぼさっとしてるの?本当に嫌な子。」
明日香はそう言った。小さな声で。これをシンデレラに向けて言ったセリフだと、周りの人々は思っただろう。だが、桜の今の状態を知っている俺にならわかる。これは『桜』に向けて言ったのだ。さっき『りんか』も、今の明日香と同じように『桜』に向けて言っていたところがあった。こいつらは暴力もだが、それ以上に精神攻撃を仕掛けてくる。桜が傷ついているのを見て、喜んでいるのだ。なんて卑劣な…。
「…!!た、大変申し訳ありません!!お父様だけには言わないで…!」
「『言わないでください』でしょ!?本当にダメな子。私の子供たちの方が絶対に優秀だわ。」
明日香は桜に近づいた。そしてこう呟いたのだ。
「あなたなんか消えてしまえばいいのよ。」と。




