表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
33/53

32 復讐劇その3

 教室を出て、私と明日香はトイレで話していた。

 

 「ねぇ明日香…あの手紙のことなんだけど…」

 「え?凜香、まさかあの写真をバラ撒かれることを心配してるの?馬鹿だなぁ。」


 違う、そんなことはどうでもいいの…。否定しようと思ったけど、クスクスと笑いながら明日香は続けて話した。


 「あんなのバラ撒いたからって、何になるのよ。クラスの人たちは、あの手紙を書いたやつ以外は私の味方よ。それにこの学校の先生たちって、いじめを見て見ぬふりしてるからさ。もしも先生たちにあの写真を見られても、特に何もしてこないって!」

 「…。」


 …明日香、あのね。私、ずっと近くで明日香のこと見てきたからわかるんだ。クスクス笑っているけど、本当はそんな気分じゃないよね?目が笑っていないよ。暗くて、冷たくて、なんだか悲しそうだよ?

 私にとって明日香は大切な友達。だから明日香にずっと着いていくって決めている。明日香の嫌いなものは私が『排除』する。物でも、人でもね。きっと、明日香の大っ嫌いな有園桜をあのとき殺すことができたなら、私のことを褒めてくれていたんだろうな…。


 『凜香!ありがとう!』


 私は明日香にそう言ってもらえるだけでいいんだ。その一言を聞きたい。明日香以外の人なんて、正直どうでもいい。明日香なら…私のことを見捨てたりなんかしない。明日香のためなら、例え常識から外れた行為でも私はやり遂げてみせる。

 最近はそんな風に考えている。自分自身でも明日香に依存しているな、と感じるときがある。でも…そんな私も嫌いじゃない。誰かのために、なんでもできるってことはとても素晴らしいことでしょ?ただちょっとだけ、私はその気持ちが大きすぎるだけ。


 「そうでしょう?凜香。」


 ねぇ明日香。悲しそうな目をしている理由、私ならわかるよ。クラスの誰かが、有園の味方をしていることが気にくわないんだよね?だって今のクラスは明日香中心で動いてきたもん。それなのに、急に反抗するやつが出てきて悔しいんだよね?だから悲しいんでしょ?


 「凜香?」


 あのさ、明日香は有園のことが大っ嫌いなんでしょ?うざいんでしょ?同じ空気を吸うことさえ、嫌なんだよね…?あは、あははははは!明日香!大丈夫だよ!!今日はとびっきりの舞台を用意したからね!たっくさん有園を痛めつけよう?体も心もぼろぼろにさせようよ!きっとぼろぼろになった有園のことを見て、手紙を書いたやつは、自分もこんな目に遭うんじゃないかって思って何もできないよ!


 「凜香っ!!」


 明日香が大きな声で私のことを呼んで、ようやく我に返った。


 「え、あ、明日香?ごめん…。」

 「ちょっと大丈夫?凜香ってさ、たまに自分の世界に入るよね…。まぁ慣れたけどさ。」


 あまりの恥ずかしさに、体温が上がった気がした。


 「えっと、明日香!今日の劇、絶対成功させようね!!あんな手紙なんて無視してさ!いつも通り(・・・・・)やろうね!」

 「えぇ、いつも通り(・・・・・)…ね。」


 私は嘘をついた。いつも通り(・・・・・)なんて起こるはずは絶対にない。


 明日香、待っててね。あなたの嫌いなもの、今度こそ『排除』してみせるから。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ