31 復讐劇その2
「な、何よこれ…というかこの写真って…確か桜以外のクラスの人しか知らないサイトに、貼ったやつじゃなかったっけ!?」
手を震わせて、凜香は眉間にシワを寄せた。
「そうよ。つまりこのクラスの中に『裏切り者』がいるってこと…。」
明日香が発した『裏切り者』という言葉に、クラスの人たちは動揺した。
「裏切り者…いったい誰なの!?」
「絶対に私たちの中にいるってことよね…?」
「ふざけるなよ…出てこいよ!!」
クラスの人たちは怒っていたり、少し怯えていたりしている。
私のクラス…つまりこの3年A組は、私をいじめることで団結力がどんどん固くなっていった。しかし、このクラスの中に実は、私をいじめることを快く思っていない者がいる。それだけで、クラスの団結力が綻ぶ条件は十分だった。
正直私は凜香が読んだ手紙の内容を聞いて、とても嬉しかった。少しだけ過激だった気もするけど、私の味方がこのクラスにいたってことだよね…?そう思うと嬉しくなってしまって、ちょっとだけ、にやけてしまう。
そして、そのにやけ顔がどうも凜香と明日香の逆鱗に、触れてしまったらしい。
2人は、とても冷たい目で私のことを見ていた。
「ねぇ?何か勘違いしてない?」
「本当にうざいわね。桜?」
凜香、続いて明日香が、私の側まで歩きながら話した。
嫌、やめてよ。だって、だって私にもクラスの中に味方がいたんだよ?嬉しいじゃん…。にやけちゃうでしょ?そういうときってさ…
私が黙って何も言わないから、明日香の機嫌がさらに悪くなった。
「何か言えよ!黙るんじゃねぇよ。マジでお前のそういうところムカつく。」
大声で言わると、怖くてさらに何も言えなくなる。クラスのみんなが、私に注目する。こういうことで注目されるの、大っ嫌い。お願いだから見ないで…。
「まだ黙ってる気なの?」
小さな声で凜香が呟く。これはまずい…。こんな風になったときが1番…
「…!!きゃぁぁあ!!」
やっぱり!やっぱりそうだ。明日香は小さな声になったあとが、1番怖いんだ。
明日香は私の髪を引っ張りながら、言葉を浴びせてきた。
「うざいうざいうざい!マジあんたの存在を否定するわ!なんなのよ!この手紙入りの封筒を寄越したクラスのやつも、許さないから!『今日の劇で変なことをしたら』?私は変なことをしてるつもりなんて、一切ないわよ!!今日の劇は、普段通りやるわよ!こんな脅しに劇がぶち壊されて…たまるものか!」
痛い、やめて。髪を引っ張ることも、私の目の前で大声を出すのも。そして…私の味方を悪く言うのも。
思わず両手で耳を塞いでしまう。
その姿を見て、髪を引っ張るのをやめ、強引に私の両手を押さえつけた。
「勝手に耳を塞ぐなよ。現実から逃げることは、私が許さないから。今日の劇、覚悟しててよ。シンデレラさん?」
満面の笑みで明日香はそう言い、凜香と共に教室を出た。
背筋がぞわっとした。怖い…怖いよ。
竜一お兄ちゃんに『助けて』という気持ちを込めながら、ロケットペンダントを握りしめた。




