23 潜入。
「よし、と。」
俺は春香と別れてからとある場所に行くために、駅のトイレで服を着替えた。この服を着ることにより、怪しまれなくなる。それにしてもこの服…懐かしいな。
今日はこの服がないと話にならないのに、家を出る前に変な夢を見たせいで、忘れるところだった。
ネクタイをきゅっと締めて、俺はトイレから出て、歩き始めた。
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しばらく歩いていると、高校生をちらほらと見掛けるようになった。授業が終わって、帰っているのだろう。
「え!?桜、昨日トラックに轢かれかけたの!?」
「う、うん…で、でも弟が助けてくれたから…。」
この声は…桜!?まずい、どこかに隠れないと…。
俺は慌てて、すぐ近くの電柱の後ろに隠れた。
「弟?昨日って…彼氏の明久と一緒に帰ってたんじゃないの?」
「それが…明久、助けてくれなくてさ。たまたま通りかかった弟が、助けてくれたの。」
学校の友達と、昨日の話をしているようだ。桜は今にも、泣きそうな顔をしている。
「そっか…だから今日は、明久と一緒に帰らなかったんだ。」
「うん、それと実は他にもあってさ…」
どうしたんだ?桜の元気が、どんどん無くなっているような…
「あのさ…さっちゃんは、クラスが違うから知らなかっただろうけど…実は最近、ノートに落書きがされてたり、靴の中に画鋲が入っていたりするんだ…」
「そ、それって…どう考えてもいじめじゃないの!?
なんで言ってくれなかったの!」
そんな…桜がいじめられているだと…?しかも話を聞く限り、かなり陰湿だ。
「だって私の問題だし…それに最初は耐えられたの。でも最近は、ひどくなっててさ…」
くそ、もう聞いていられない。桜が辛い思いをしていたことに気づけなかったなんて…家族失格だ。すまない桜…。
桜たちが通りすぎるのを見守って、とある場所へと歩き出した。
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「みんなー!今日はグラウンド3周ねー!」
「はーい!」
「ダンスは全身を使うの!もっと大きく動いて!」
「はい!」
門の前まで来ると、部活動を行っている生徒の声が、そこかしこから聞こえてくる。…ここに来るのは、いつぶりだろうか。
そう、とある場所とは高校だ。
この高校は、今は桜が通っている。そして、かつて竜一だった頃に、俺も通っていた高校だ。(まぁ1年も経たずに、トラックに跳ねられて死んだから、あまり高校の印象はないけど。)
さっき駅で着替えたのは、高校への潜入を楽にするためだった。
高校へ来た理由は、桜がトラックに轢かれかけた原因の、突き飛ばした女の情報が、あるかもしれないと思ったからだ。
そして、先程もう1つ目的ができた。桜をいじめているやつを、見つけることだ。
もしかしたら、この2つは関連があるのかもしれない。
俺はそんなことを思いながら、堂々と胸を張って門を通り抜けた。こういうのは、おどおどしている方が怪しいと思われるからだ。
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しばらく校舎の中を歩いていたのだが…どうやら迷ったらしい。1年生の教室は何となく覚えていた。しかし、桜の学年の3年生の教室…まず校舎がどこだ?
すれ違う先生に聞くのも、変な風に思われるかもしれないし…困ったものだ。
俺が少し困っていたところで、突如大きな声が聞こえた。
「お願い!そこの君、どいてぇぇえ!」
そう言われても、急には反応できない。数秒後には、その声の主とぶつかっていた。
みなさんお気づきでしょうか?
桜と竜二が、どれくらい歳が離れてるいるのかを書きました。
今まで諸事情により、書いていなかったのです。
それに伴って過去に書いたものを、ちょっと編集したりしました。
内容にはあまり関わらないので、気にしないでください。




