22 女子ってめんどくさい。
まさか最後まで夢の通りに寝過ごすなんて…危うく遅刻するところだった…。それに忘れ物もするところだった…
俺はチャイムが鳴る寸前に教室に入り、新学期初日と同様に注目されてしまった。
「竜!何をしているのだ!遅刻しかけるなんて…可愛い幼馴染みが待っておるというのに!!」
席が右隣で俺の幼馴染みのツインテール少女、雪奈がポコポコと背中を叩く。全然痛くない。
「ごめんって。でも二度寝するように誘うベッドが悪いと思うんだけどな…まぁ俺の責任だけどさ。」
「竜の馬鹿!!私はまるで、鬼ごっこをしていて最後まで見つけられず、勝手に帰られた子供の気持ちになってしまったんだぞ!」
いやいやいや、例えが全くわからないんですけど。
俺はそう思いつつもなんとか機嫌を戻してもらえるように、ポケットから飴を取り出して雪奈に渡す。
案の定、宝石をもらったようにとても喜んだ。小さい頃から本当に変わっていないんだな…。
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キーンコーンカーンコーン
「はぁ…」
授業が終わり、帰る時間になる。
「ねぇ竜二…今日は一緒に帰らない?」
春香が声を掛けてくる。キスをされてから少しだけ気まずい。
「あ、うん。いい…」
「ちょっと待ったぁぁあ!私も竜と帰りたい!」
鼓膜が破れるかと思った…。待ったをかけたのは、もちろん雪奈だ。
「ちょ、ちょっと雪奈ちゃん!?急に割って入って来ないでよ!」
「私は竜のことが好きなんだから、当然一緒に帰りたいんだ。だから、えっと、名前なんだっけ?」
「佐野春香!!」
急に言い合い?が始まってしまった。なんとかしないと…。
「2人とも!喧嘩するなって!」
そう言うと、2人のツインテール少女は俺の方を向いた。
「竜二?ちょっと待っててね?雪奈ちゃんを説得するからさ?」
「何を言っておるのだ。説得されるのは春香?の方だ!待たせてすまんな、竜。」
これは…しばらく帰れそうにないな…。
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はぁ、疲れた…
春香と雪奈は、30分ほど言い合いをしていた。それを見かねた雪奈の友人が、半ば無理矢理雪奈を連れて帰った。
つまり今は、春香と2人で帰っている。
「全く…雪奈ちゃんと始めてちゃんと話したけど、あんな強引な子だなんて知らなかったわ。」
「ははは…」
そっちも結構強引だったぞ!と、言いたいところだが、ややこしいことになってしまうので笑って誤魔化した。
「あ、あのさ竜二!この間はその…急にキスをしてごめん!」
申し訳なさそうに謝る春香。
春香もこのこと気にしてたんだな…。まぁ、そりゃそうか。しばらく話してこなかったしな。
「あ、えと、本当に急なことでとても驚いたけど…べ、別に気にしないから。これからも普段通りよろしくな?」
お互いにもうこのことで気にしないように、という気持ちを込めて俺は春香にそう言った。
「普段通り、ね…」
少しだけ春香の顔が暗くなった気がした。
「俺、何か変なこと言ったか…?」
「ううん!全然そんなことないよ!こちらこそ普段通りよろしくね!」
どうやら顔が暗くなったような気がしたのは気のせいだったようだ。いつも通りの表情をしている。
「あ、春香。俺ちょっと用事があるからここで…」
「う、うんわかった。竜二、また明日ね。」
「あぁ、また明日。」
俺は春香と別の方向へと歩きだした。ある『場所』へと向かって。
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「あーもう!竜二の馬鹿!なんで普段通りなのよ!」
私は竜二と帰りに話した内容を思い出す。
普通は女子にキスされたら男子は、『え、もしかして俺の子とが好きなのか??』とか考えるところでしょ!!
「馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿!馬鹿竜二ぃぃい!」
私は枕に顔を埋めて叫んだ。声の大きさが少しは緩和されるかなと思って。しかし、実際はあまり効果はなかったようだ。
「ちょっと春香!?うるさいわよ!静かにしなさい!!」
うわっ、母の声だ。そんなに大声だったのかしら…。
それにしても竜二の鈍感さはどうにかしてほしいわね…。
私はポスッと枕をグーで殴った。




