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17 例えツインテールでなくとも絶対に俺が守るから。

姉はフードを被った女に突き飛ばされて道路へ倒れた。約10メートル先にはトラックが…。このままでは確実に姉はトラックに轢かれてしまう。


だが姉には彼氏がいるんだ。きっと彼氏が助けるだろう…そう思っていた。だって彼氏なんだから彼女を助けるのは当たり前だろうと。しかし実際は彼氏は姉を助けようとしなかった。いや、あまりの出来事に驚いて動けないのか…?


とにかくこのままではまずい。助けなければ…!俺は全力で姉の下へと走る。


『トラック…轢かれる…』


「うっ…」


急に頭痛が…それに頭の中で映像が勝手に流れる。その映像が流れると胸がざわざわした。それよりも今は姉のことだ。あと数メートルでトラックが…!姉が…!喧嘩のことなんて今はどうでもいい。ツインテールじゃなくたって大事な家族なんだ!轢かれて大怪我なんてさせるものか!姉の人生を終わらさせてたまるか!


『トラックに桜は轢かさせない。俺が桜を守るんだ。』


「うっっ!!」


また頭痛だ。さっきよりもひどく痛む。でもやっぱりそんなことよりも姉だ!…よし!着いた!


「姉さん、早く手に掴まって!」


俺は姉に手を差し出した。姉はなぜ突き飛ばされたのか、なぜ俺が目の前にいるのかという表情をしている。そんなことよりも早く掴まってくれ!もう本当にトラックは目の前なんだ…!


『桜…愛しい桜。桜を守れるなら俺の命など惜しくない。』


だからなんなんだよ!このチラチラと見える映像は!頭痛と共に何かが見える。でも今は目の前のことに集中しろ…!


「姉さん早くっ!姉さんの、『桜の死ぬところなんて見たくないんだ!!』」


姉はハッとし、俺の手を強く握った。俺は姉を引っ張って立たせた。


それにしても本当になんなんだよこれ…。映像に出てきたやつとセリフがハモったし。…!?それにしてもこの状況、話だけにしか聞いたことのない兄が姉を助けて死んだときの話と似てないか!?いや、だから今は助けることを…!!


姉を自分の方へ抱き寄せた。これでもう安心だ…。


「竜…一…お兄ちゃん…?」


姉は一言そう呟いた。


「…!!」


『桜…?急にどうしたんだ?…!危ない桜!』

『桜が助かったなら…それならよかったよ。』

『桜…大好きだよ…。』


たくさんの映像が頭の中で流れ出した。あぁ、そういうことか…なるほど、俺がモヤモヤしていた理由がわかった。姉が…桜が彼氏とキスをしているところを見て涙が止まらなかった理由がわかったよ。俺は…


「姉さん、怪我はない?大丈夫?」


桜は困惑した表情をしている。それはそうだろう。急に道路に突き飛ばされたのだから。


「竜…二?あ、えと、ちょっと足捻ったかも…。」


俺は桜の足を見た。確かに少し腫れているようだ。俺は立て膝になり、桜に背中に乗るように促した。


「こんな足じゃ歩けないだろ?ほら、背中に乗って。」

「え、でも…」


心配しなくても大丈夫だから。歳は桜の方が上になってしまった(・・・・・・・)けど体つきは俺の方がしっかりしているから…。


「早く乗りなよ。」


もう一度言うと桜は素直に背中に乗った。俺は立ち上がり、桜の彼氏の側まで歩いた。


「ねぇ?なんで姉さんを守らなかったの?助かったからよかったものの下手したら大怪我してたよね?死ぬ可能性もあったよね?」


唖然とする桜の彼氏に俺はチッと舌打ちをした。


「彼女だったら死ぬ気で守れよ!大事じゃないのかよ!大体さ…」

「やめて竜二!この人は私のことを好きになってくれた人なの!そして私の好きな人なのよ!これ以上言わないで!!」


うっ、桜にそう言われたら…そんな悲しそうな表情をされたら俺は何も言えないじゃないか…。


「チッ、姉さんはこのまま家に連れて帰る。俺はお前のことを姉さんの彼氏とは認めないからな。」


俺は桜の彼氏に言いたいことを簡潔にまとめて話した。


「姉さんのか・れ・しとは断じて認めないからな?」


最後に念押しをして背中におぶっている桜に負担が掛からないようにゆっくりと歩きだした。


愛しい愛しい『俺の姉であり俺の妹』。全部思い出したよ、桜。

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