16 こんなことになるなんて思いませんでした。
「ひっく、ひっく。本当に竜なんだな…?」
雪奈は泣きながら改めて確認をしてきた。
「あぁ、そうだよ。雪。」
「わ、私がどれだけ寂しかったか…どれだけ会いたかったかわかるか?」
「んー、わからん。」
俺が素っ気なく返事をすると雪奈は頬を膨らませた。そういうところ変わっていないんだな。ついつい意地悪をしていたことを思い出す。
「冗談だって、きっとすごく辛かったんだよな。俺も引っ越したばかりの頃は寂しかったよ。」
「か、からかうな!昔から竜はそうやって私に意地悪をしてきた…!竜のことは好きだけど今でも根に持ってることは山ほどあるんだからな?」
雪奈は先程よりも怒ってるんだぞ感を出しているが正直怖くない。むしろ可愛い。
「はいはい、ごめんって。」
「謝り方がなっとらん!で、でも昔からそうだから別にいいんだけどな…」
今も昔も性格はあまり変わっていないようだ。見た目に関しても昔の面影がある。ただ唯一変わったとするなら…
「雪、髪を伸ばしたんだな。ツインテールの長さが変わってる。」
「ま、まぁな?どうだ?似合っておるか?」
雪奈はくるっと一回転をして俺にツインテールを見せてきた。
「うん似合ってるよ。俺はそれくらいの長さがとても好きだ。」
そう言うと雪奈は耳まで赤くなった。どうやら褒められて相当嬉しいようだ。
「あ、雪のことが好きって言ったわけじゃないからな?俺はツインテールのことが好きなんだからな。」
すると雪奈の表情がみるみる悲しげになっていく。思わず笑ってしまうところだった。
「うぅ…竜ひどいぞ!私は竜が昔『もっと長い髪のツインテールの方が好きだ』って言ったから髪を伸ばしたんだぞ!そ、そしたらいつか竜が私に振り向いてくれるんじゃないかと思ってたんだ!」
そんなことを覚えていたのか。少し俺は驚いた。それにしても雪奈は必死感がすごいな…
「でも…私の髪が伸びる前に竜は引っ越してしまった。だがいつか再会したときのためにと私はこのまま髪を伸ばしたままにしたんだ…」
雪奈はしゅんと寂しそうに言った。
「そんなことを覚えていてくれたんだな。雪、ありがとうな。」
俺は自然に感謝の言葉が口から出た。こんなに俺のことを想っていたなんて知らなかった。雪奈は本当に俺のことを好きだったんだな。雪奈の俺に対しての気持ちが知れてちょっとだけ嬉しかった。
「な、何を急に感謝しているんだ!?まぁ別に感謝されて悪い気はしないが…」
俺たちはゆっくり歩きながら話をして帰った。
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雪奈と別れてからしばらく歩くと姉と姉の彼氏が信号待ちをしていた。仲良く話している姿を見て俺は嫌な気分になった。
「ちっ、今はそっちに行けないな。別の方向から帰るか。」
俺は歩いてきた道を少し戻って別の道で帰ろうと思い後ろを振り返った。
「ドンッ」
結構な強さで人とぶつかった。そいつはフードを被っていて男物の服を着ている。が、体つき的に女だろう。そいつが俺の横をすごい速さで走って通りすぎた。危ないなと思い、目で追いかける。
そいつは俺の姉と姉の彼氏めがけて走っていた。どう考えてもなんだかおかしい様子。俺はフードを被ったやつを追いかけてみた。
「…!?姉さ…!!」
するとフードを被ったやつはまだ信号が赤という状態で姉を道路へと突き飛ばした。




