15 隣の席のあの子は昔隣の家に住んでいた幼馴染みでした。
「あ、竜二…今日私用事があるから先に帰るね?じゃ、じゃあね!」
「また明日な…」
俺と春香は昨日のキスの件があり少し気まずい状況だった。今日も一緒に帰ることになっていたらどんな顔をすればいいかわからなかったので少しほっとした。
「有園と春香?はいつも一緒に帰っておるのか?」
その疑問系は本当になんなんだろうか。右隣の宇野さんが話しかけてきた。
「まぁ特に予定がなければ最近は一緒に帰ってるよ。」
「仲がいいんだな、春香?と付き合ってるのか?」
うっ、確かに周りから見ると一緒に帰ったりよく話したりしていればそんな風に思われるか…だけど…
「いや、俺たちは付き合ってないよ。友達って感じだな。」
「そうなのか…ふむ、ならちょっと待っててくれ。」
宇野さんはそう言うといつも一緒にいる仲のいいグループの子のところへと行き、少しだけ話しをして戻ってきた。
「有園よ、今日は私と一緒に帰ってくれ。まぁ隣の席になったよしみということで…」
「え、いや、ちょっと待て?急に言われても…まだあまり話したことないしさ?それにあの子たちと一緒に帰らなくていいの?」
俺は宇野さんがいつも一緒にいるグループの方を指した。
「それなら気にするな。さっき話をつけてきた。それとも私と帰るのは不服なのか?」
「そ、そういうわけではないけど…じゃあ一緒に帰ろうか。」
まさかこんなことになるなんて…くっ、ツインテールが眩しい…意識をしなければついまた見てしまう…気を付けなければ。そう思いながら俺は宇野さんと一緒に教室を出た。
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帰り道の途中で俺は宇野さんに気になることを聞くことにした。
「そういえばさ、なんで宇野さんは名前の後に『?』をつけるの?俺のことも最初は『?』があったし春香に関しては今もだしさ。」
すると宇野さんは少し暗い顔になった。
「私はな…昔、体が弱くてな。家からあまり出られなかったんだ。つまり学校にあまり行けなかった。そのお陰で人とは触れ合う機会がなくてな…」
暗い顔がさらに暗くなり、小さく震えながら続いて話し出した。
「私は『人を覚える』ことができなくなった。名前と顔が一致しないんだ。友達なんてほぼいなかったよ…静かな部屋でずっとベッドで寝ていた。なんで私は体が弱いんだ。なんで学校に行くことができないんだ。ずっと、ずっと私は私を許せなかったよ。でもな…」
暗かった顔がパッと明るい顔になった。その表情に少しドキッとした。それにしてもこれは…
「でもな!そんな私をいつも訪れてきた男の子がいたのだ!同じ歳の隣の家の子だったのだがな!優しくて私はその子のことを好きになってしまった。しかし、しばらくするとその子は引っ越ししてしまったんだよ。あのときは泣くほど辛くてなぁ。」
急に興奮したのか話すスピードが上がった。俺は確信した。こういうところ昔から変わってないんだな。ははっなんというかこれはもう…
「おっと、話が変わってしまったな。まぁそんな感じで人の顔と名前が一致しないから疑問系になってしまうんだろうな。」
「あの、ちょっといいかな?その引っ越した隣の家の子のこともしかして『竜』って呼んでなかった?」
すると驚いた顔をして話してきた。
「な、なんで知っているんだ!?私名前言ってないよな!?」
いや、普通なんとなく気づくだろ。
「雪…。お前なぁ、さすがに隣に住んでた好きなやつの顔くらい覚えとけよ。俺はお前のこと最初見たとき似てるなぁとは思ってたぞ?」
するとぶわっと涙が宇野さん…雪奈から溢れだした。
「竜…!竜なんだな!!うわぁぁぁあ!!こんな、こんな奇跡ってあるのか!?もうこれは運命だよな!?」
雪奈は俺の胸へ飛び込みそのまま泣き崩れた。
「泣くのはいいが、鼻水だけはつけるなよ…。」
そう、宇野雪奈は俺の幼馴染みである。




