13 新しい席は両隣ツインテールでした。
「ねぇねぇ!最近春香ちゃんと有園ってなんか2人でよく話してない?!付き合ってるのかなー?」
「えー!?まさかそんなわけないよ!だって春香ちゃん綺麗で頭いいしそんなはずないでしょー?!」
「…ん、んー?」
なんか騒がしいなぁ。せっかく眠ってたのに起きてしまった。
私は座ったまま背伸びをした。
「あ、ねぇ!雪奈はどう思う??」
目を輝かせて話してきたのは去年も一緒のクラスだった遠藤美咲。元気が少々よすぎる運動得意系ポニーテール女子だ。さっきうるさかったのはこいつだろう。黙っていれば可愛らしい系だからモテたであろうに。
「ふわぁー…。私はそういうの興味ないからな。というか有園って誰だ?春香は去年一緒のクラスだったやつか?」
「うわ、雪奈まじで??有園も春香ちゃんも結構クラスで目立ってると思うんだけど…。有園はこのクラスになった1番最初の日に遅刻して目立ってたし春香ちゃんは去年一緒のクラスじゃないけどクラスでは美人だから目立ってるのよ?」
「…わからんな。」
説明をしてきたのは美咲と同様うるさい&去年も一緒のクラスだった海原真理。色白でストレートな長い髪。こっちも黙っていればモテるのに。私の友人は少々もったいないやつが多い。
それにしても説明されても有園の方は何となく思い出せたが春香とやらは思い出せない。昔、ある出来事があってから私は人を覚えにくくなってしまった。覚えることはできる。ただ普通の人よりも何倍も時間が必要なのだ。
「キーンコーンカーンコーン」
チャイムの音がした。まだ先生は来ていない。
「あ、チャイムか。それじゃあ戻るねー。」
そう言うと美咲は席へと戻った。
「私たち3人って4,5,6って番号続いてるけど6番は席が1番前になるから別れちゃうのよね。寂しいよねー。」
「まぁな。」
海原真理、鵜野雪奈、遠藤美咲という名前だから番号は3人で連なる可能性が高いのだ。去年も3人で番号が連なっていたからそれがきっかけで仲良くなった。だが正直席はどうでもよかった。普段寝ていることの方が多いから最低限話せる子がいればそれでいいのだ。
「ガラガラガラッ」
扉の開く音がして中から若い女性が入ってきた。あれ?この先生なんの授業担当だっけ?
「なぁ真理。あの女性の先生はなんの授業担当だ?」
小さな声で前の席の真理に聞くと呆れた顔で応えた。
「はぁ、数学担当よ?しかも担任。さらに言えば次の授業はホームルームよ。」
「あ、そうだったのか。すまん、ありがとう。」
真理はヒラヒラと手を左右に振って別にいいよと合図をしている。
「さて皆さん。今日はこの時間を使って席替えをしようと思います。さぁ、クジを1番の赤坂さんから引いて下さい。」
担任がそう言うとクジを赤坂?とやらから引き始めた。
「席替えかー!近くなるといいね!」
「そうだな。昼ご飯を一緒に食べるために大移動しなくていいしそれが楽だな。」
「単純に近いといいねって思ってただけなのに雪奈は効率のためなのね。まぁ雪奈らしいわ。」
真理は苦笑いをしている。なぜだろう。
「はーい。全員クジが引けたようなので前を見てください。黒板に席と番号が書いてあるからよく見て移動して下さいね。」
前を見ると…1番後ろの廊下側から3番目か。悪くないな。真理と美咲は…
「やったね雪奈!私は雪奈の右隣の席で美咲は私の前の席だよ!席すごい近いよ!」
確認する前に真理に言われた。手間が省けて楽だ。ん?左隣のやつ…これはさっき話してた…。
「さぁ、早く移動しなさい!」
おっと、移動しなければ。まぁそんなに離れてないから楽だな。私は荷物を持って次の席へと移動した。
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席替え…うっ、これはかなりきつい。まさか春香と…春香と隣の席になってしまうなんて!!俺はどんな顔をすればいいのか…考え込んでいると春香が声を掛けてきた。
「竜二、これからしばらくよろしくね?」
「お、おう。まぁよろしくな。」
少し返事が辿々しかっただろうか。それにしても春香、今日少し赤くないか?それに目を逸らしている…いつもは綺麗だなと思っているけど今日はちょっとかわいいかも…?
「トントンッ」
そんなことを考えていたら急に背中をつつかれる感触がした。どうやら背中をつついたのは右隣の人らしい。そういえばさ春香に気を取られていたけど右隣は…
「有園?だったか?まぁよろしくな?」
この『?』はなんなんだよ!と突っ込みたくなった。右隣のこいつは…クラスのツインテール女子の1人、宇野雪奈。不思議系ツインテール女子だ。
「あぁ、よろしく?」
こっちまで『?』を付けてしまった。それにしてもこの席はツインテールに挟まれている!?これは…ツインテールに興奮してそのうち鼻血が出てしまいそうだ。しかも左隣は春香。キ、キスをしてきたツインテール女子…思い出すだけでもう…!!
俺はこれからこの席で生きていけるのか心配になった。




