11 急になんなんだよ!
まさか竜二のあんなに泣く姿を見るなんて想像もしてなかった。竜二はイチャイチャカップルを見て急に泣き出した。なんで泣き出したのかわからなかったのでとりあえずあまり人が通らない場所に行き、竜二を落ち着かせた。そしてなぜ竜二が泣き出したのかを私は知りたかったから聞くことにした。
「…竜二?いったいどうしたの?なんであのカップルを見て泣き出したの?確かに衝撃的な光景だったけど…」
竜二は暗く複雑な表情になり、口を小さく動かした。
「…たんだよ。」
「え、なんて?」
竜二の声が聞き取れない。さらに竜二の表情は暗くなった。そして今度ははっきりと言った。
「俺の姉だったんだよ。さっきのカップルの女…」
「…!!」
竜二の顔が暗く複雑な表情になった理由がわかった。そういうことか、あのカップルの女の人。竜二のお姉さんだったんだ…
「竜二、辛いこと聞いちゃってごめん。」
「構わないよ、急に泣いたりしてごめんな。」
竜二は申し訳なさそうに言う。なんか竜二って可愛いな。
「いいよ、全然。さて、落ち着いたならそろそろ動こうか?」
私が立ち上がろうとした瞬間服の袖を掴まれた。もちろん掴んだのは竜二だ。
「なぁ、ついでにここ最近俺が落ち込んでいた理由も聞いてくれないか?」
竜二は恥ずかしいのか目を逸らして話してきた。私はきゅんとしてしまった。
「え、えぇ、いいわよ。いくらでも聞くわ。」
すると竜二は少し深呼吸をして話始めた。
「実は新学期の日、家に帰ると姉に彼氏ができたって言われたんだ。新学期の日の朝に姉に彼氏がいないことを馬鹿にしてたのにさ。まぁ馬鹿にしたことは今は反省してるけどな。」
「うん。」
苦笑いで話す姿、これは反則級の可愛いさだ…はっ、いけない!話に集中しないと…
「そんでもって次の日に姉は朝から誰かと電話していたんだ。姉はなぜか知らないけど電話している相手に対して怒っていた。何を話しているんだろうと思った俺は盗み聞きをしてしまった。そしたら…姉にそれがバレてしまってそのことがきっかけで大喧嘩に発展したんだ。」
「なるほどね。最近そのことをずっと考えていたんだね。」
竜二はコクりと頷いた。
「どうすれば姉と仲直りできるか考えていたんだけどさ、俺どうしても自分から謝るのが嫌で…最近はお互いに無視し続けてたんだよ。俺さ、姉のこと好きじゃないって思ってた。どうでもいいって思ってた。でもやっぱり本質は姉のこと好きなんだって、最近気づいたんだよ…」
竜二はいつ泣き出してもおかしくないくらいに目がうるうるとしている。私の心の中でなんとかしてあげたいという気持ちが大きくなった。
「それでようやく姉のことが好きだってわかったのに…さっき知らない男とキスをしてる姿を見て涙が止まらなくなっちゃったんだよ。きっと俺が今まで姉へ最低な態度をしてしまった理由は好きという気持ちの裏返しだったんだな。とんだシスコンだったってわけだ。」
あぁ、そんな悲しい表情にならないで竜二。
「…!!!!??」
次の瞬間、私は竜二の唇を奪っていた。
「…プハッ!な、え?ちょっ!」
「ハァ…ごめんね?竜二。竜二があまりにも暗い話をするものだからつい…」
「ついじゃないだろ!?」
顔を赤く染めて怒る竜二。でも私は竜二よりももっと赤くなっている自信がある。
「急にキスするなんて…反則だろうがよ…。」
「だからごめんってば!あ、急用思い出しちゃった!先に帰るね?」
私は竜二をその場へ置いて走って帰った。だってこんなことしちゃったんだもん。今日は恥ずかしくって一緒に帰れないよ!
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俺は春香がいなくなってもしばらくその場所にいた。
なんなんだよあいつ…あんなの…あんなことされて明日からどんな顔すればいいんだよ…!それに…意識したくなくてもしてしまうだろうが…!
俺はそう思うとさっきよりも顔が赤くなった。




