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未だ咲かぬフリティラリア  作者: 逸見玲
4/5

04

 勢いよくドアが開いた、と同時に赤髪の少女が部屋に飛び込んでくる。

「さあ行くわよカナエ!起きて!」

「お、おはよう……」

 着替えが済んだ後でよかったと叶は思う。大きな声と共に飛び込んできたのはリゼ。同室になった少年、ロイガが鬱陶しそうに目をこすり、リゼを睨む。

「オレ休みなんだから寝かせてくれよ……」

「ごめんロイガ。俺が早く出て準備してればよかった」

「カナエは悪くねーよ。リゼはいっつもうるさいんだ」

「なによ失礼ね!」

「オレもっかい寝るから……」

 ロイガはもぞもぞと布団にくるまり、再度寝息を立て始めた。起こさぬよう叶はゆっくりとドアを閉じ、リゼと共にギルドへと向かう。リゼは弓を背負い、楽しそうに叶を先導する。ギルドは早朝なこともあってか人が多い。人垣をかき分け掲示板の前に行くとリゼは一枚の依頼書を指差した。

「やっぱり最初はスラミーの討伐かな」

「スラミー?」

「ああ、記憶喪失なんだっけ。スラミーっていうのはゲル状のモンスターよ。核が透けて見えるんだけど、その核以外は攻撃しても意味がないの。だから戦う時は核を壊して」

 リゼは手で丸を作って説明を続ける。

「そうするとゲルの部分が溶けてなくなるの。残った核は討伐証明として回収。動きは素早いけど核は脆いからすぐ倒せるわ。で、あたし達はそれを受けるつもり。大丈夫?」

「わかった。あ、ダガ―しかないんだけど、それなら槍のほうがいいか?」

「大きいのは滅多にいないし、出てもあたしが弓で撃つから平気よ。魔法が使えればその方が楽なんだけどね。じゃあ早速受けて行きましょ!」

 リゼは依頼書を剥がすとスタスタと受付へと行き、叶が追い着く頃にはほとんど処理を終えてしまっていた。叶がやったと言えばタグを出して登録するぐらいで、あとはリゼが済ませてしまったので受付方法を覚えることは出来なかった。まあ困ったら受付で聞けばいいだろうと考え、またもさっさと歩いて行くリゼを追うように叶は駆け出した。

 町を出て街道を少し進んだところで道を逸れる。街道が見えなくなるまで平原を進むと、十メートルほど先に水色や緑色の丸いものが跳ねているのが確認できた。叶はそれを指差しリゼへと声をかける。

「アレがスラミー?」

「ん?そうそう、アレ。出来高制だから多く倒したいかな。いつもは緑色が多いんだけど水色はレアよ。核が綺麗で人気なの。絶対仕留めるわよ」

 リゼが弓を装備し走り出す。叶もダガ―を抜き、スラミー達めがけて走り出す。数は五匹。水色が一匹に緑色が四匹。リゼの放った矢が先頭のスラミーを貫いた。それを横切り叶はダガ―を別のスラミーに突き立てる。ぬるりとしたゲルに手が触れ、ダガ―は核へと届き破壊する。何も考えず仕留めに行ったが、意外と不安や罪悪感は覚えなかった。まだどこか夢のように感じているのだろうか。残りは三匹。叶に飛びかかってきた緑色をリゼはしっかりと射貫くが、核には当たらなかった。

「カナエ、核を!」

「了解!」

 指示通りにダガ―を振るえば残りは二匹。勝てないと本能で悟ったのか逃げようと距離を取る。焦った様子でリゼが声を上げる。

「水色逃がさないで!」

 どうやらリゼの斜線が通らないらしい。レアと言われるなら逃すのはもったいない。だがスラミーの速度は見た目に反し俊敏で、一足遅れた叶が追いつくかは怪しい。即座に手をかざしイメージをする。想像するは氷の弾丸。鋭い氷柱。それを核めがけて複数発射する。作られた氷の一つが水色の核を捉えた。緑色の一匹は逃してしまったが、初戦闘にしては十分だろう。落ちている核を拾っているとリゼが近寄ってきた。

「緑が四、水色が一、まあまあかな。カナエ、魔法が使えるなら言ってよね」

「ごめん、まだうまく使えるか自信がなかったからさ」

「でもこれなら次はもっと楽に倒せそう!」

「まだ続ける?」

「水色入れても最低十匹は倒しておきたいかな。魔法もどんどん使っていこ!」

「りょーかい」

 ダガ―を持ち直し、新たなスラミーを探し始める。昼頃には目標数を討伐しギルドへと報告に帰っていった。討伐証明を渡すといくらかの小銭を手に入れた。一日過ごす分には十分だろう。こうして簡単な依頼や雑用を受けて孤児院の子どもたちは日銭を稼いでいるらしい。


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