表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

短編

「僕も、人を殺したことがあるんです」

作者: 譚月遊生季

「あなたは人を殺したことがありますか?」


部屋の前で、黒服の男が聞いてきた。


「ありません」

「本当にそう言いきれますか?」

「……ええ」


即答できなかった。

男が口を開く。


「あなたはいい人ですね」


その言葉が心を割いて、涙が溢れた。


「……本当は、殺したかも……」

「どなたをですか?」


抑揚のない声が聞いてくる。


「友達……。もう、何年も前……いじめられてたあの子の話を、ちゃんと聞いてたら、もしかしたら」


あの子はまだ、生きていたかもしれない。

笑っていたかもしれない。

私みたいに、一人暮らしをしていたかもしれない。


「あなたは悪くありませんよ」


どうして、あなたも責めてくれないんだ。


「本当に悪いのは、忘れ去ることです」


そんなことはない。だってあの子を追い詰めた。

あの子の話を聞かなかった。

見て見ぬふりすらしていた。止めなかった。


「ありがとう、覚えていてくれて」


男の背後で、少女が言った。


「もういいよ。やっと見つけたね」


男の頬に、涙が伝った。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ