薔薇に舞う黒
アタシの目、ちょい狂ったか……?
連れていかれた先には満開の薔薇が咲き誇り、その中で優しく微笑む薔薇の女神(お母さん)。
なんか後光みたいな見える気がすんのは気の所為?
今ならあの人が女神だって言われても信じられる気がする。
実際G様より神々しいオーラがバリバリだし。
『………はっくゅん!!』
「……うぅ?(ん?)」
……なんか今……誰かがくしゃみしたような……。
「ルージュ、可愛くなったわね。 さて、お庭をお散歩しましょう……メリアさん」
「はい、奥様」
お母さんがメイドA……メリアさん?に声を掛けるとそのまま交代するようにアタシを抱きかかえた。
ふぉっ! やっぱりなんつーか、安心感が違うな!
その、メリアさんって言うメイドさんもしっかり落ちないように抱き抱えてくれてたって分かってっけど、お母さんに抱かれてる方がほっとする。
うーん、これが赤ん坊としての本能ってやつ?
そんなことを考えているアタシを抱き締め、ゆっくり中庭らしきところを歩いていくお母さん。
しかしながら立派っつーか、金持ちっぽい庭だよなぁ……。
紅璃時代? もまあ有名所の後藤組だったから庭は立派だったけど。
まああっちはthe日本庭園でこっちの庭はヨーロッパ風で全くちげぇから違和感バリバリだわ。
色とりどりの花に丁寧に手入れされているのが見て分かるくれぇ、ここの庭は素晴らしい。
きっとここ管理してんのって厳しそうなガミガミジジイとかクソ細そうな偏屈オヤジぽいよな(アタシの自論)。
「ほらルージュ見て、貴方の瞳みたいに真っ赤な薔薇が咲いてるわ」
ルビーお母さんに促されて見れば中庭に咲いてる中でも特に目立つ立派な薔薇の木。
……すげぇな。
そこで綺麗に咲き誇る真っ赤な薔薇の花はホントにおとぎ話しとかに出てきそうな感じだ。
思わずアタシも圧倒される。
「ふふ、この薔薇の花から貴方の名前になったのよ?
パパがね、ルージュの目を見てまるでこの薔薇のように美しい紅だからってルージュって名前にしたのよ」
ここでまさかのアタシの名前の由来が発覚した!
え、マジで?
アタシの名前薔薇の花から来てんの?
驚きながらも薔薇の花を見つめる。
薔薇の花ってあんまりじっくりと見たことなんて無かったけどなんかこう……アタシの名前の由来かと思うとちょいとむずむずするな。
ルビーお母さんと2人でゆったりと薔薇を見つめていればさっきのメイドガールズが呼びに来た。
「さあさあ奥様、ルージュ様。
こちらにおかけになって下さい。今お茶を入れますから」
毛先がくるくると巻かれたミルクティ色の髪のメイド、ミレイさんがずいぶんと楽しそうにお茶菓子を準備している。
「ルビー様、ルージュ様は私がお預かりします」
そしてどこからともなく再び現れた黒の麗人シルカさんがルビーお母さんが言うまもなくあっという間にアタシを抱き上げた。
「うぁう!(おっと!)」
「はい、ルージュ様はこちらに行きましょうね」
「うぁぁあう!!(おいどこに行くんだ!!)」
シルカさんに文句の一つ言おうにも悲しいかな、全くしゃべれん。
くっそぉ、やっぱり赤ん坊で転生はねぇよ!
あのクソ神め!!今度会ったらコテンパンにしてやるからな!!
『……ぶへぇっくしゅん!!!』
……あれ?
また誰かのくしゃみしたのが耳に届いた。
誰だ?いったい……。
ルビーお母さんじゃ確実にちげぇし、メイドガールズがそんなことするはずねぇもんなぁ。
あとアタシを抱き上げてるシルカさんは微動だにしてねぇし。
当たり見回したくても首も回んねぇし、そもそも抱かれてる状態だから全く動けない。
あぁもう!腹立つなぁ!!
「ルージュ様。ほら、見てください」
ふといつの間にかシルカさんは立ち止まってアタシが見やすいように腕を少しずらす。
……すっげえ。
シルカさんによって見せられた景色は広大に広がる海。
ちょうど今いる場所が高台みたいになってるらしく、海岸を全体的に見渡すことが出来る。
何よりも海の透き通るようなエメラルドの色とゆっくり日が落ちていくことでオレンジが柔らかいグラデーションとなってまるで絵葉書に描かれてるような景色だ。
「……ここは私の1番好きな場所なのですよ。
しかもここも領地であるのですが誰もここのことを知らないようでして今のところ誰もここで出会ったことはありません。
ここの海を見てるとどんなに嫌なことや苦しいことも全てが小さなことに思える。
私の秘密の場所なのです」
……なるほどな。で、なんでアタシにそれを言うんだ?
あれか?赤ん坊だからなんも分かんねぇって思ってんだろ。
ザンネンデシター!全部はっきりと今インプットしましたァあ。
「……何ででしょうね。
ここには誰も連れてこなかったのに今日のあなたを見ていると不意にここに来たくなった。
……今は覚えられないかも知れませんがいつか、また成長した時にお連れしますね。
……今日からここは私とあなたの秘密基地です」
なんでそんなにアタシのこと気に入った?
今日アンタ言った言葉うぁうバブー的なことしか言ってねぇよっ!?
え、まさか子供好きだったの?
だったら最初のあの仏頂面は何!?
「さて、そろそろルビー様のところへ戻りましょうか」
シルカさんは切り替えるようにそう言うとゆっくりと歩きながらルビーお母さんの元に戻っていった。
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