神様、仏様……G様!
『いやぁ、なんて言うか紅璃さんの過去回想とっても見応えありました。……神様ちょー感激ってカンジ! 』
両手をグーにして顔の元に持っていき、更に一昔はやったアヒル口をして斜め上を見ている金ぱ『金髪じゃありませーん! 神様デース! 』……自称神様。
これがまた似合ってんのが腹立つ。
『おほーめ頂きカンシャです!』
「……全く褒めてねぇよ。……んで、仮にアンタがその……神様? だったとして? アタシはな・ん・で、こんなとこにいるわけ?」
もうアタシが、後藤紅璃が死んだのは思い出した。けどなんで死んだはずのアタシはここにいるんだ。
『ソレハ、カクカクシカジカで……』
「ここで誤魔化そうとすんならアンタのその顔、勿体ねぇけど原型とどめねぇくれぇに殴ってやる」
アタシがそう言いながら片手で握り拳を作り、もう片方の手にパンッと叩き付けるように殴ってみればガタガタと震え出す目の前の金髪の自称神様。
『だから自称じゃなくてホンモノの神様デース!!』
「だからひとの思考に許可なく割り込んでくんな!!」
これじゃ全然埒があかねぇ。
もう話をさっさと進めてくれよ。なんか疲れてくるわ。
『じゃあ、本題に入りますね』
「だから最初からそうしろってつってんだろ」
『実はですね、アナタは本来まだまだ寿命があってこれから何十年も先にお亡くなりになる予定でした……しかし!
そこに大きな罠が仕込まれていたのです!!』
おい、何か急に大げさに語り出したぞ。
わざとらしい身振り手振り使ってオーバリアクションしながらやつは語り続けていく。
『な、なんという……ことでしょうか……。こんな事あっていいのでしょうか……ということがあってあなたを救済しようとここへ呼んだのです』
「……」
……結局、誤魔化してんじゃねぇか!!
思わず勢い余ってさっきから飄々としているコイツにいい加減に腹が立って首元をつかみグラグラと頭を揺らす。
『ジョーク! ジョークじゃないですか!』
「……ジョークを言うなら時と場合、TPOを考えろ! 結局何も説明になってねぇじゃねぇか!」
『仕方が無いでしょ!本当は私以外の神たちがUNOをしててそれて負けた神が腹いせに勝者の神が管理しているやつに攻撃して誤って死なせてしまって、『どうしよう』とその負けた神が私に泣きついてきて関係の全くない私がとりあえず間を取りなすということであなたをココに連れてきたなんて言えないでしょ!! 』
「……負けた……腹いせだって?」
『……あ…』
じゃなんだ……アタシはしょうもねぇコイツらのUNOの勝負のせいで死んだのか?
ただの腹いせで?
ヤツの言葉にゆっくりとグラグラと苛立ちが煮えていく。
ヤツはヤツで既に数歩後ろに下がって行こうとしてるがアタシが未だに首元を掴んでいることに気づいて顔が段々と青くなっていってる。
『……わ、私はそれには参加は一切して無かったんですよ!! それは本当です!! 私は無実です!!』
「……」
既にコイツは泣きべそかいて震え上がっている。
ガタガタ子供のように怯えるそれになんとなく、かつての自分への向けられてきた目を思い出した。
小さい頃から心細くて、一緒に遊ぼうとかつては勇気を振り絞って声を掛けに行ったこともあった。
だけどいつも向けられる目は常に恐怖と怯えだった。
アタシ自身が何もして無くても家が極道ってだけで評価されるそれはどれだけ時が経とうとも変わらなかった。
いつしかアタシは……もう誰かと話すことを諦めた。
『……紅璃さん、この度は大変申し訳ございませんでした。
また私も変に誤魔化そうと、アナタにあわよくば嘘をつこうとしてしまい、本当にすみません。
アナタは誰よりもまっすぐ、正しく生きていらっしゃいました。
それは私達はしっかりと見ていましたよ。
苛められている子がいたら庇ってあげてたり、わざとらしくアナタが悪役になったり……まあ、あなたの周りではそれに気づいている人は少なかったかも知れませんが……』
「……なんで、それ」
『言ってますでしょう、私は神様です』
いつの間にか掴みかかっていた腕は力が抜けたように首から手を離していた。
……誰にも言ったこともなかったそれに驚いて手を離しちまったという方が正しいか。
『アナタはずっと孤独ながらも人のぬくもりに飢えていた。
諦めたつもりでも憧れは強く残った。
だからせめて気づかれなくても、あわよくば気づいてくれるように影であなたは動いていた……あくまで表面では無関心な様にして。
……随分とひねくれた性格をお持ちですね』
「……うるせぇよ」
ヤツのその的を得た言葉に思わずチッと舌打ちをこぼれた。
『そんなあなたに朗報です! こちらのミスもありますのでアナタを救済処置として転生して頂くこととなりました! ハーイ、拍手拍手!!』
パチパチとさっきまでのシリアスから一転、ヤツは両手から軽快にリズムを奏でる。
……そういや言ってたな、転生とかなんとか……。
『……ちなみにですね、通常1度お亡くなりになられました魂は100年程度あちらの世界で癒すなりなんなりしてから転生なので今回は或る意味飛び級みたいなものですよ! 凄いですね、紅璃さん!』
へぇー、飛び級か……なんか優等生になった気分……って!
「なんで転生とかそんな話になるんだよ!
生き返りとかじゃダメなのかよ!」
あっぶねー。うまーく流されるところだった。
『生き返り……させて上げたいのですが、もう事を起こってしまった手前、それは難しいんです。
その代わり新しい命として別の世界でもう一度人生を送り直すということはできます』
……別の世界……。ということはだ。
「もう……後藤組のヤツらに会えねぇってことか……」
……アタシだって鬼じゃない。
ヤツが申し訳ねぇって思ってるのは伝わる。
無理なものはムリなんだろな。あーあ……それなら最後にくそジジイの顔ぶん殴ってりゃ良かった。
『紅璃さん……』
「気を遣うなよ……分かってる。無理なものはムリなんだろ。
もう仕方がねぇから転生で我慢してやるよ……その代わりなんかプラスアルファしろよ。アンタらのせいであたしの花の女子高生の生活が終わっちまったんだからな」
『それはもちろんです! 精一杯ご奉仕しますよー!』
いやご奉仕はちげぇだろ。
と思ったが『オプション色々お付けしますし、転生後にサポートもしまーす! 名前呼んだらスグに駆けつけますよ!』と言ってるからあながちご奉仕で間違いないかもしれない。
「……そういや、アンタ名前は?」
ずっとさっきから金髪やらなんなのと適当に呼んでいたがイマイチどれがどれになんのか訳が分からねぇ。
『……そうですね……名前を名乗り忘れていました。
私の名前は《フィルナンデス・グロース・マルク=エレン》と言います』
……聞くんじゃなかった……なげぇ。覚えらんねぇ。
「じゃ、んーG様って呼ぶわ」
『さっきのやりとりの意味は!!? 私の名前は《フィルナンデス・ぐろー》「長いから却下だ」……グスン』
アタシが一刀両断したら嘘泣きし始めた、G。
『Gで止めないでください!! なんだかそれでは黒くカサカサ動くものが頭に浮かんでしまいますぅー!!!』
……それって、ごきぶ…『例え心の中で思ってても言わないでください!』……あ、そう。そういや、アタシの思考も読めるんだっけ?
『……せめてもう少し名前もじってもらえませんかね……』
「いや、既にアタシの中では結構してるぜ、G様って。うんうん、なじむ馴染む。ハイ、G様でけってーい!転生したらそう呼ぶからよろしくっ!」
『……わかりました……善処します』
まだ納得してないG様。……まあこっちは勝手に人の命腹いせに終わらされてるんだしこれくらいどうって事ねぇだろ。
なんかさっきより極端に肩が下がったような気もするが気のせいだろうし。そんなこと思っていればG様はわざとらしく『……ごほんっ』と咳払いをした。
『では少し長話をしすぎましたね。アナタを転生させます。
宜しいですか?』
G様が真剣味を持たせてアタシに聞いてくる。
それにアタシはゆっくりと頷いた。
するとじんわりと体に熱がこもっていき体から光が放たれていく。
『……アナタの次の人生がより豊かになるように天からの祝福を送ります。……では素敵な人生を送ってください』
G様が話終わった瞬間一気に光にアタシは包まれていく。
微笑んだG様をみて咄嗟にアタシの口から零れた言葉はなんて言ったのかはもう覚えてない。
ただ、それを聞いたG様は少し目を丸くしたかと思えば嬉しそうに笑った様に見えたのを最後にアタシの意識はブラックアウトしていった。
次回よりやっと転生します