プロローグ
初投稿です。
『紅璃さん、今からあなたを転生させましょう。第二の人生ってやつです!』
気がついたら目の前におバカな発言する美形の金髪がいた。
第二の人生? 何言ってんだコイツ……。
つか、誰だよ。
「……もうひとねむりすっか。最近ゲームのし過ぎで疲れてんのかな? 幻聴見えだしたらやべぇしちょっくら控えるか……嫌でも今攻め際か抑えに入るかの超いいところ『サラッと流さないで!!』……だし」
アタシの秘技【今見たこと無かったことにしよう♡】を見事に打ち破った目の前の金髪美形の男かもしれないヤツ。
ちなみにかもしれないって言ったのはこいつがあまりにも美形すぎて男か女なのか顔じゃ判別付かねえからだ。こんなヤツが『うー悲しいな悲しいなーしくしくしくしく』と明らかに棒読みで泣き真似をしてる姿すらなんともまあその……眼福並の威力を誇っている。
……ったく、腹立つくらいの美形。お陰でアタシの心がしくしくしくしくだっての。
『紅璃さん!! ツッコミしてよ、早く!!』
……しかもツッコミ待ちしてたのかよ。
『こう色々あるでしょ? 《棒読みやないかーい!》 とか 《しくしくとかわざとらしいわ!》 とか……あ、それか 《泣き真似ヘタやねん、アタシの方がうまいわ!見ててみ……しくしくしく……って何でやねんっ!》 っていうノリを持たないと!!』
いやいや、その前にひとつ言わせてくれ……なんで関西弁やねん。
いきなり一気に話し出す金髪美形 (……もう長いな、略して金美にしよう! )は話だしたら止まらないらしく、正直うざいくらいのテンションだ。
『あーもう、これだから最近の若者はノリが悪いねぇ。
昔はさ、テンションだってアゲアゲパーリナイだったのにいつの間にかこんな草食系草大好物達が増えたんだろう……はぁ……。』
「……言わせてもらうが、草食系は揃って草大好きって訳じゃないからな。」
どうしても気になってそこだけはアタシなりに丁寧に金美に訂正する。……全く聞いてねぇけどな。ずっと今どきの若者は~談義をひとりでやってるよ。つかこの人いくつよ?
『そう、今思えば46年前の彼はとてもユニークだったな。何しろいきなりひとりで正座したかと思えばてやんでいてやんでいっ!って面白い人間模様を物語を聞かせてくれた。あれはとても面白かった……今でもとても印象的ですね。あと、そう37年前のあの女性!とても魅力的だった。とても色っぽいダンスをここで披露してくれたんです。パーリーピーポー! ……最高でした。
それなのにココ最近来る子達ときたら早く帰りたいだの、寝たいだの、二言目にはめんどいだの、ヤバいだの。……全く世の中変わりましたね……』
タラタラと話し続ける目の前の金キラキラはほっぽいて改めて辺りを見渡す。
いや、見渡したはずなのだが……なにも、ない。
頭の回路が停止したように固まった気もしたがゆっくりと前後左右くるくる回ってみてもなんにも変わりはしない……。
ここ……どこだ?
と言うかアタシはなんでこんなところにいるんだ?
なんでここは……何もないんだ?
『やっと紅璃さん疑問に思っていただけましたね? 』
「……いただけましたね、ってここどこだよ」
ニッコリとしたイヤミったらしい顔で訪ねてくる金髪。
この顔がまた輝いてるように見えるから顔がいいやつは腹が立つ。
『あちらとこちらの間の世界ですよ……というか紅璃さんさっきから酷くないですか? 思考、ダダ漏れです』
『まあ、私が美形だと認めてくださるのは正しい判断ですね』とかなんとか言っている目の前のナルシスト。
よほど自分の顔に自信があるらしい。……殴って変形したらどうなるんだろうな……なんて思ってたらずずずっと後ろに下がった。
『やめて下さい! 暴力反対です! 』
「まだ殴ってもねえじゃん」
『ダメなもんはダメです! 』
腕をクロスさせて抗議してくるやつは置いといて、問題はアタシはなんでこんな何にもないところにいるのかだ。
そういやこいつなんつってたっけ……ここは『あちらとこちらの世界だって言いましたよ?』……ああ、そうそう……って。
「なんでアタシが考えていたのが分かるんだよ? 」
『それは私が神様だから思考が読めるのです! 』
「寝言は寝て言え」
くだらねぇ冗談は却下だ。
思考が読めるとか神様だとか何言ってんだか。
だいたい、あちらとかこちらとかさっぱり分かんねぇし。
『……もっとよく考えてみてください。あなたは今日何がありましたか? 朝からゆっくりと思い出してみて? 』
金髪の促すような声に勝手にゆっくりと過去をたどる。
今日は確か朝起きて、いつも通り家のモン達を起こしに回って、それから家族揃って朝食食って……それから……それから?
「……あ、……ああっ、あああああ!!! 」
ゆっくりとそれからの事が脳内に映像として浮かび上がる。
とっさに恐怖で頭を抱えこんでしゃがみこんで肩を震わせる。
アタシはたぶん……あの時アイツをかばって……死んだのか。
でも、悔いは……ない、たぶん。アタシがアイツを守れたんなら。
『そうです。後藤紅璃さん、あなたは今日お亡くなりになりました。大切な人を守ってね』
『だけどあなたが無くなるのはもっともっと何十年も先でした。こちらの手違いによりあなたを早くに命を立たせてしまい、誠に申し訳ないので、救済処置であなたは別世界へ転生することになりました』
でも……これこれでありえねぇだろ。
ヒロインちゃんの口の悪さはご勘弁を。