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おいでよ 魔獣の森

主人公が拠点づくりに励みます。

 そこは巨大な森だった。一歩足を踏み入れたら、途端に空気が変わったのがわかった。何というか、全てのサイズが大きかった。まず木の大きさが違う。地球、というか日本の平均的な森なら、どんなに高くても森の高さが十数メートルを超えることは無いし、熱帯地域のジャングルに行ったってそこまで劇的にサイズが変わることは無い。地球で最も高い木はセコイアだが、ここの木は全部そのくらいのサイズなのだ。はっきり言ってヤバイ。ここが異世界なんだってことをはっきりと感じる。

 しかも地球の観光地と違って、ここには整備された林道なんてないからどっちに行ったらいいのかもまるでわからない。そんな鬱蒼とした深い森。それがこの森の第一印象だった。

 それと生えてる木が大きいのもそうだが、加えて木と木が密集しているのだ。だからまだ日が暮れていないのにも関わらずもう既に薄暗い。夜になったら完全に真っ暗になること間違いなしだろう。星明りも届かないに違いない。こりゃあ日が暮れたら行動は無理だな。暗くなったら早めに野営の準備をしよう。


 森に入って体感で数時間。気が付けば辺りが真っ暗になっていた。太陽の光が入ってこないから、いつ日が暮れたのかわからないんだな。なんか俺の通ってた高校みたいだ。校舎が北側を向いてるから、夕日が入ってこなくて気が付いたら真っ暗になってるという、何というか物凄く虚しい学校だったな……。

 そんなことはさておき、早速野営の準備をしなくては。とはいえ食いもんも飲み水も何も無い。正直かなりキツイけど、無いもんはしょうがない。早いとこ寝て、明日に備えるとするかな。

 …………いや、待てよ?これ、始原の力使えば飲み水くらいなら確保出来るんじゃないか!?

 思い立ったが吉日だ。天才とは99%のひらめきと1%の努力で成功するのである。まあ残念ながら俺は天才ではないみたいなんで99%を努力で補わなけりゃならないんですけどね。そんなことはさておき、俺は早速始原の力を意識して、具体的な構想をイメージする。イメージするのは水魔法。どうやら無限にあるらしい自分の魔力を、任意の量まで水に変換出来る能力――――。


「むっ」


 何となく直感で目の前に手を突き出す。すると突き出した手の10センチくらい先に初めはピンポン玉サイズ、やがて段々大きくなってバスケットボール大にまで成長した水球が浮かび上がった。今回もまた成功だ。コツは掴んだとみていいな。

 ステータス画面を開いて確認してみる。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

名前:神坂 景 (Kohsaka Akira)

年齢:19歳

性別:女(心は男)


体力:12790/12800

魔力:∞

知力:145

身体:6→600

能力:始原の力

技能:火球、身体能力100倍、水生成(NEW)

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 よし!しっかり登録されてる。これでこれから水には困らないで済む。この時代に水を気にせずに旅ができるって、けっこうなチートだよな。普段からもお風呂とかでいくら無地を使ったってまったく気にならないし、水回りに関してだけは現代日本と同水準が見込めそうだ。

 早速生成した水に口をつけ、ごくごくと飲み干す。何時間も飲まずにぶっ続けで動いてたから喉がカラカラだ。


「ぷはぁ~うまい!」


 純粋な水はあんまり美味しくないって聞くけど、これはけっこう美味しい。もしかしたら天然水をイメージしたからミネラル分もちょっと入ってるのかもしれないな。

 何はともあれ、飲料水は確保できた。食事は残念ながら無いけど、別に1日2日何も食わなかったくらいで人は死んだりしない。水だったらちょっと危ないかもだけどな。まあ食料は食べられそうなものが見つかったらその都度確保する感じでいいだろう。もう真っ暗だし、この巨大な森にどんな危険があるかもわからない。今日はもう拠点を確保して早めに寝るとしよう。


 さて、拠点づくりとは言ったものの、一体何から始めたらいいんだろう。そもそも野営なんてしたことないし、こんな一年中薄暗い森の中じゃ寒くてかなわない。それに地球ではまだ5月の上旬。この世界と日本の季節がリンクしてるかはわからないけど、この世界に降り立った時の気温や日光の強さからしてそこまでズレてはいない筈だ。暖かくなり始めた五月とはいえ、まだ流石に夜は肌寒い。そんな時期に毛布も無しで外で寝てたりしちゃあまず風邪をひくだろう。いつ終わるとも知れないサバイバル生活中に、それは流石に勘弁願いたい。だからせっかく拠点を作るなら暖かいところがいい。

 また、ここは異世界だ。地球でさえ深い森には虎とか熊とかがいて危ないんだから、それが異世界ならどうなることか。幸い今に至るまでまだ鳥以外の何の動物ともエンカウントしていないけど、地球よりもずっと凶暴で巨大な肉食獣がわんさかいるかもしれないことは想像に難くない。起きてる時ならいざ知らず、寝てる時は無防備だ。いくら始原の力を持ってるとはいえ、寝てる時の全自動反撃システムを構築するのはまだ今の俺には厳しい。それにもし大型の猛獣とかがいなくても、狼とか毒を持った虫とかがいるだけで普通に危ない。マラリア蚊みたいなのがいたらどうするんだ。異世界のワクチンなんて持ってないぞ。というわけで、雨風や寒さをしのげて、かつそんな猛獣や害獣から身を守れるだけの堅牢な拠点、すなわちプチ要塞が必要となるのだ。そしてそれを今から材料を集めて一人で作り上げるのはぶっちゃけ不可能。なのでまた始原の力の出番だ。

 必要な条件は今挙げた通り。後はどういう方法でそれを実現させるかだ。まず、拠点づくりのスキルを作ってしまおう。イメージするのは拠点づくりの力。魔力を材料にして、材質から構造まで好きなように製作出来る力――――。


「ステータスオープン!」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

名前:神坂 景 (Kohsaka Akira)

年齢:19歳

性別:女(心は男)


体力:12790/12800

魔力:∞

知力:145

身体:6→600

能力:始原の力

技能:火球、身体能力100倍、水生成、拠点製作(NEW)

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 よし、うまいこと出来た。今回はまだ実践してないけど、習得出来たっぽい。スキルが出来ることの範囲が広いからかな。初めはなかなかうまくいかなくても、いずれ完璧に扱えるようになるだろう。

 というわけで早速、拠点を作ってみよう。寒さを遮断して、頑丈な部屋。材質は金属がいいかな。内側に断熱材っぽいのを貼りつければ寒さも防げるだろう。形は球形。柱がいらなくて、最も強度が取れるのは球だ。窓は要らない。そこを破られたら逃げるところも無いし詰む。流石に出入り口と、覗き用の小窓は作るけど、それもしっかり施錠できるタイプにしておこう。

 こうして出来上がったのが、暗闇の中で金属光沢を発する怪しげなドーム状の物体だ。マジノ線もびっくりの超堅牢な要塞になってしまった。これなら多分、野戦砲が直撃してもびくともしないんじゃないだろうか。まあ実際にはマジノ線は迂回されて要らない子になっちゃったわけだけど……。とはいえ今回みたいに籠城して守りに徹するだけなら最強かもしれない。それも食料が尽きなければの話だけどな。そして今回は最初から食料が無い……。明日は何とか食料を見つけなきゃな。


 出来上がった拠点の中に入り、しっかりと入り口を閉める。全部金属製とはいえ、中にはベッド、水道、風呂トイレが完備されているから居住性も悪くはない。ちゃんとそうなるように作ったからな。流石に金属の上に直に寝るのは痛いから、ちゃんと後で布団も作っておこう。


 水生成で水を出し、火球で風呂窯を温める。異世界初日だけど立派な風呂の完成だ。シャンプーとか石鹸は無いけど、それはしょうがないだろう。いずれ代用品を見つけるしかない。さあ、長距離を歩いて疲れた体を癒そうじゃないか。

 ざぶーん、と音を立てて湯船につかる。余ったお湯が溢れ出て、お湯が少し減った。


「ああ~……、気持ちいい……」


 風呂は最高だ。やっぱり日本人は風呂だぜ……。体を伸ばして湯に深く浸かる。全身の疲れが溶けていくような感じがした。


「ふぅ……」


 深呼吸するように深く息を吐き、今日一日の出来事を思い返してみる。

 朝、電車の中で意識を失ったと思ったら、よくわからない空間に飛ばされて、そこで萩本さんに会って色々衝撃の事実を聞かされ、そして不思議な力「始原の力」を手に入れた。そして異世界にやってきて、始原の力の凄さを実感し、今に至る。

 なんて濃い日だ。こんなに濃い一日を送ったことなんて今まで一度も無い。なんかまるで一日だけで一週間以上経ったような気がする。けど紛れもなく今日一日の間に起こったことなんだよな……。今頃、家族や友人達の間でちょっとした騒ぎになっていることだろう。あと2、3日もしたら大変な事件に発展しているに違いない。そのことを思うと少し心が痛む。けど俺はまだ死んでない。身体は全然変わっちゃったけど、今もしっかり生きてる。始原の力なんていう不思議な力を手に入れて、森の中でこんなドームまで作って風呂に入ってるよ。

 そこまで考えて、これがもし水槽の脳みたいな感じだったら困るなと思った。実は俺は今、病院のベッドにいて、そこで生死をさまよっているのかもしれない。そしてその生死の狭間の世界で、不思議な体験をしていると思っているだけなのかもしれない。けどそんなことを考えてもあまり意味が無い。ちゃんと生きて、地球に帰ればいいんだ。戸籍なんてもういい。男だった頃には戻れない。でも俺自身はこうして今も生きてるんだ。だからちゃんと帰って、俺だよ、ただいまって言えるように頑張るんだ。


 一日を振り返り、今一度決意をしっかり固めたところで湯船から立ち上がる。

 低くなった背丈。やや変わった顔つき。細くなった腕。膨らんだ胸にくびれた腰。鏡に映った自分が、まるで自分じゃないみたいだ。でもこれは紛れもなく今の俺の姿なんだ。これからこの姿で生きていくんだ。


 俺は風呂から出て、体を拭き、着ていた服をもう一度着てベッドに寝転がる。布団はちゃんと作った。スキル名は「布団作成」だった。いくらなんでも使い所が限られ過ぎている。今度ちゃんと、もっと汎用性の高い物質想像系スキルを作ろう。


 明日はどうなるんだろう。森は後どれくらい続くのかな。でもまだまだだろうなぁ。昼にジャンプして見た時、物凄い広かったもんなぁ。終わりが無いのかというくらい広く感じた。でもここなら食料もありそうだし、水もあるし、取り敢えず住処もいつでも作れるようになった。明日もまだまだ進歩があるだろう。明日からも頑張ろう。そう思って目を瞑る。ああ、眠くなってきた。

 生まれ変わった自分の最初の1日が終わる。色々あったな。おやすみ。また明日。

 最後にそう思い、俺は眠りについた。

だいぶチートをものにしてきた感じですね。次回、初の戦闘描写を入れる予定です。

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