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剣を手に入れた

「ところでお前さん。お前さんが強いのは聞いてるが、どんな戦い方をするんだ? それによって鍛える武器も変わってくるからな」


 ライオットがそう尋ねてくる。


「そうだな。基本的に俺は殴る蹴るが多いかな。けど刀もかっこいいから使ってみたいし、色々と便利そうだから短刀も欲しい。あと俺の名前は神坂こうさかあきらだ」


「アキラか、覚えたぞ。……なるほどな。しかし刀か。剣じゃないとなると、なかなかに大変なものがあるな。それに俺としては使われもしない武器を鍛えるというのは若干癪なんだが、作らせるからにはちゃんと使ってくれるんだろうな?」


 金を払う以上、その使用法までとやかく言われる義理はないし、どう使おうが基本的には俺の自由だ。だが、だからと言って製作者の意思に反するような使われ方をしては武器としても本望ではないだろうし、作る側も心から良い物を作りたいとは思えないだろう。だからこそ俺は言う。


「ああ。ちゃんと大事に、だがそれと同時に思いっきり使うことを約束しよう。武器が俺の元に来て良かったと思えるようにな」


 そう言うとライオットはフッ、と笑って言った。


「なかなかどうして、最近の若い者の割には芯がしっかり通ってるじゃねぇか。いいぜ、アキラ。お前さんの武器はバルツブルグ一……いや、国一番と言われたこともあるこのライオットが最高のものを鍛えてやる!」


 そう言ってライオットが手を差し出してくる。俺はその手を握り返した。


「頼む。期待してるよ」


 流石は一流の職人。その手はがっしりとして、凄まじい覇気を備えていた。



     ✳︎



「アキラ。今とりあえず採寸自体は終わったが、とはいえ流石に本人がいないと細かい調整は難しい。適宜うちの店に来て試着したりしてもらうことになるからあまり他の街とかには行かないでくれると助かるんだが」


「わかった。基本的に街の中か、その周辺にいるようにする。とはいえ流石に何もしないのも暇だから繋ぎとして何か良さげな剣でも売ってくれないか」


 そう言うとライオットは苦笑した後、壁に陳列してある沢山の武器を指し示して言った。


「あそこにある中から好きなのを持って行ってくれ。金は要らん。この領を救ってくれたささやかなお礼だと思ってくれ。あと、繋ぎとはいえこれらの剣は俺が直々に教えた弟子達が作った作品だからな。お前さん専用の武器が出来上がった後でもそれなりに可愛がってやって欲しい。うちの店に出してる以上、性能はどれもそれなりにあるから安心してくれ」


「わかった。それにしてもどれも良い剣ばかりだな。若い弟子は失敗とかしないのか?」


「ほう、良い剣と悪い剣の違いがわかるのか。……若いのが失敗したり基準に満たなかったやつは、使えるレベルであれば冒険者ギルド直営店に初心者向けで格安で下ろしている。どうしようもないやつは鋳潰してもう一度鍛え直しだ」


「なるほどな」


 ちなみに俺には「鑑定」の技能があるから、武器の性能や製作者、付与効果などは丸わかりなのだ。「鑑定」って便利……。

 そして「鑑定」で以って調べた中で、二番目に性能の良い剣を手に取ってライオットに訊く。


「これ、貰っていいか?」


「驚いた! 本当に武器の良し悪しがわかるんだな。でも何であの剣を選ばなかった?」


 そう言ってライオットが向かい壁に陳列されている剣を指差して訊く。


「一流の職人なんだからわかるだろ? 簡単なことだ。俺は背が小さい」


「ああ、なるほど……」


 そう。残念ながら一番性能の高かった剣は長すぎて、ちょっと俺には扱えそうになかったのだ。普通の人にはちょうどいい長さだったとしても、それはあくまでこの世界基準の普通の人。身長150センチ程度しか無い俺にはとてもでは無いが適正なサイズであるとは言えない。だから適度に短くてちょうど良さげな二番目の剣を俺は選んだ。もちろん二番目と言ったって殆ど性能に差は無い。製作者もどうやら同じ人物みたいだしな。


「ライオットが作ったのは置いてないのか?」


「俺のは全てオーダーメイドだ。作り置きはしない。使用者一人一人に合った武器を作るには本人を目の前でよく観察しないと作れねぇからな。ちなみにその剣を作ったのは俺の一番弟子だが、そいつはもう独立して別の街で鍛治職人をやってる。そいつももう作り置きはしてないって聞いた。だからそこに置いてある何本かでそいつの作り置き作品は最後だ。なかなかに運が良かったな」


「そうなのか。そいつはありがたい」


 とはいえ、それもさもありなんと言った感じはする。何しろこの武器は高いのだ。まともに買おうとしたら上級冒険者でも金を貯めないとなかなか手に入らないような額をしている。それでいて作り置きだ。だったらもう少しだけ金を貯めてオーダーメイドにしたほうが良い武器が手に入るというものだ。つまり作り置きにしては性能が高すぎたんだな。おかげでターゲット層があやふやなまま、客と剣とがマッチしなくて売れ残ってしまったんだ。まあ、誰が数億円もするような建売物件を買うんだという話だ。だから言い方は悪いが、俺は無料で高性能な剣を手に入れられてラッキー。ライオットも売れ残りで恩を返せてラッキー。ウィンウィンというわけだ。


「貸してみろ」


 そう言ってライオットがカウンターの裏にある整備道具やらを取り出し始めた。


「金は貰わないが商品だからな。渡す前にしっかり掃除してやる。やり方を見て覚えとけ。自分でやることになるんだからな」


「わかった。頼む」


 ライオットが実演を始める。時代劇とかで見たような白いポンポンやら繊維の細かい柔らかそうな布やらよくわからない油のようなものやらを使って色々やって見せてくれた。


「これで終わりだ」


 そう言ってライオットは剣を鞘に仕舞って、俺に手渡してきた。


「これでこの剣はアキラ、お前さんのもんだ。刃が欠けたりしたらこの店に来い。治してやる」


「ありがとう。助かる」


「それじゃあ三日後にまた来てくれ。その頃にはお前さん専用の武器の大まかなデザインと方向性が決まってる筈だ。それをもとに作っていくからな」


「わかった。それじゃあ三日後にまた」


「ああ。毎度あり」


 こうして俺は繋ぎだが、立派な剣を手に入れた。

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