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武器購入

寒くなって来ましたね。家に引きこもる頻度が上がるので筆が進みそうです。

 とは言ったものの、やはりまずは武器を揃える必要があるだろう。いや、ぶっちゃけ俺は生身でも強いから武器を揃える必要はそこまで無いのだが、そこはやはりロマンというものがあるからやっぱり必要なのだ。

 それに、金なら問題ない。実はバルツァー伯爵領を救った時に新しく立て直した領政府からそれなりの額をもらっている。一つの領地を救ったにしては申し訳程度の額しかもらってはいないが、それでも個人が使う額にしてはかなり多い。具体的に言うと普通の人間の生涯収入くらいはある。とはいえ所詮はその程度なので、どんなに苦しい領地だったとしても財政に影響を与えるほどの負担ではないのだ。バルツァー領政府としても金を払う、すなわち感謝の意思を示さずに吝嗇りんしょくするというのは体面が悪い。そもそもそんな不義理な組織はどうせすぐ崩壊するのである。その点、バルツァー領政府の皆さんは大変義理堅かった。ちなみにこの程度の額で収まってるのは俺が固辞したからだ。金はいくらあっても困るもんじゃないが、だからと言って苦しんでいる人から巻き上げるほど生活に困窮しているわけでもない。ある程度の義理さえ示してくれれば、あとは余裕のあるところから搾り取れば良いのだ。そう言ったら領政府の皆は涙を流して感動していた。ちょろい。


 そんなわけで今の俺はちょっとした有産階級並みの資産を持っているので、現在進行形で金銭関連の心配は全くない。それ即ち労働の必要性がないということである。有産階級万歳! 金持ちサイコー!

 成金的即席ブルジョワジーな気分を味わいつつ、いやでも俺創造神から直々に神格と神通力を賜っているわけだからこれは最早尊い身分を神授されたも同然なのでは? 王侯貴族と資本家だったらやっぱり王侯貴族のほうがかっこいいよなぁ……。

 それはさておき、俺には「錬金術」の技能があるからぶっちゃけて言えばわざわざ店で武器を購入する必要などないのだが、とはいえやはりまだ今の段階では俺自身が「錬金術」に慣れていないこともあって、実用レベルの武器なら一流の武器屋で買ったほうが性能が良いのだ(二流以下は別)。

 それに金持ちが消費しなければ経済は回らないからな。金持ちはたくさん消費して金を市場に落とす義務がある。使いもせずに死蔵しているようでは何のために金持ちになったんだかわからない。吝嗇は貧乏人と金貸しの性分であって、金持ちの取るべきスタンスではないのだ。よく「無駄遣いしないから金持ちになれた!」とかいう人が節約術の本を出版したりしているが、あんなの金持ちでもなんでもない。ただの貧乏人根性である。使わなかったら貯まるに決まってるだろう。本当の金持ちとはいくらでも無から金を生み出せる人間のことをいうのだ。貧乏人が金を使わずにせっせと貯めて喜んでいる横で、奴らは無駄遣いし放題なのである。まあつまりだ。無駄遣いは金持ちの使命だ! その分しっかり楽しませてもらってるんだから、まあそのくらいやらなきゃ自分の生きてる社会に不誠実ってもんだよな。


 てなわけで前置きは長くなったが、武器を買うべくバルツブルグでも一番と噂の有名武器屋に到着した。

 有名という割にはそこまで大きな店ということもない。工房と小売店が合体したような、いわゆる工房一体型店舗がこじんまりと立っていた。「ライオット工房」。それが工房の名前だ。

 店の中に足を踏み入れる。壁にはこの工房で鍛えられた剣や槍、鎧などの装備が見栄え良く配置されていた。なんだか凄いカッコいい。雰囲気も良いし、さすが一流店といった風情だ。奥のほうからはカンカンカン、と鉄を打つ音が聞こえてくる。


「ライオット殿は前バルツァー家当主の護身用の武具製作を任されるほど腕の立つ方だと聞いています。ここ数年のオリヴィエ統治時代も亡命することなくこの地に留まり続けて下さったそうです。オリヴィエに武器製作を依頼されたそうですが、頑として断っていたそうですよ。バルツァー家現当主として非常にありがたいことです」


「ほおん、そいつは凄いな。でもどうしてそこまでバルツァー家に誠実なんだろうな」


「先代には恩があるからな」


 そこで腹に響くような太い声が割り込んでくる。見ると、店舗の奥の、先程の音からおそらく工房と思われるところから髭もじゃで筋骨隆々な、しかし身長は低いおっさんが出てきた。


「ドワーフ」


「そうだ。まあ若い頃にスティールを出てからは一度も戻ってはいねえがな」


 ドワーフのおっさんが言う。つい思ったことを口に出してしまったが、本当にドワーフだったんだ。この世界にはドワーフもいるんだな。というか。


「スティールって何?」


「ドワーフの国のことです。ここエデルリア王国の北西に隣接しています。小国ですが、国力は非常に高いですね。冶金技術に関していえば世界最先端です。その技術を活かして金属製の武器や道具を輸出して経済が成り立っている国です」


「よく知ってるじゃねえか、アーデルハイトの嬢ちゃん」


「いえ、それほどでもありませんよ。お久しぶりですね、ライオット殿」


「ああ。嬢ちゃんも大きくなったな」


 ライオットはアデルのことを知っているらしい。まあ先程も、先代には恩があるとか言っていたからな。多少の面識はあったんだろう。

 それにしてもドワーフの国スティールか。加工貿易で成り立っているなんて、まるで日本みたいだな。是非一度は行ってみたいものだ。


「それで、お前さんがこのバルツァー伯爵領を救ったという戦女神か」


 ライオットがこちらを見て訊いてくる。


「まあ、巷ではそう呼ばれてるみたいだな。けどこの領を救えたのはアデルの努力もあってのことだぞ。俺だけの力じゃない」


「景様……。ですが私が立ち向かえたのは景様がいらっしゃったからであって」


「なるほどな。今のやり取りでなんとなくわかった。お前さん、なかなかに女たらしだな」


「え? なんで」


「ははは。天性の才能ってヤツか。同じ女のくせに女を惑わせる魅力に溢れてんだ。あまり嬢ちゃんを泣かせるんじゃないぞ」


「???」


 一連の流れがまるで読めない。確かに夜は(違う意味で)泣かせてはいるが、俺がアデルに流させたのは悲し涙じゃなくて嬉し涙だけだ。


「まあいい。お前さんが身体も心も強いのがよくわかった。お前さんなら特別に武器を作ってやってもいい。手を出せ。どんな武器がいい? 採寸してやる」


「は、はあ。ありがとう」


 よくわからないが、何やら一流の職人に認められて武器を作ってもらえることになったようだ。

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