はじめての討伐依頼
「それでは早速になりますが、依頼は受けていかれますか?」
受付嬢が依頼受注の有無を訊いてくる。そうだな、せっかく冒険者になったことだし、気分が乗ってるうちに何らかの依頼は受けておきたいよな。
「そうな。じゃあ何か一つお勧めのやつでもあれば受けようかな」
「かしこまりました。それでは少々お待ち下さい」
そう言い残して受付嬢がカウンターの奥へと引っ込んでいく。どんな依頼があるのかな、とか思いながら俺はまだ見ぬ人生初の依頼に心を躍らせていた。
ちなみにアデルであるが、鑑定の水晶玉が壊れてしまったので再入荷されるまでは冒険者登録は出来ないとのことだった。だから今日はアデルは同伴するだけ。俺の横で話し相手になる予定である。でもそれ今までと何も変わらないような……。結局、資格を取ってもやること自体は変わらないんだなと思いましたまる
「こちらなどいかがでしょうか」
そう言って受付嬢が取り出してきた分厚い冊子を開いてあるページを指し示す。
「はぐれホーンブルの討伐依頼?」
「はい。こちらは適正ランクがD級となっております。ホーンブルは個体数が多く食用肉となりますので、常設依頼ですね。コウサカ様のことですので相当のお力を持たれていらっしゃるとは思いますが、こと冒険者に関しては初心者でいらっしゃいますからまずはこちらから始めてはいかがでしょうか」
「うーむ」
「要らぬ気遣いでしたでしょうか?」
受付嬢が不安そうな表情で尋ねてくる。
「ああいや、そういうわけじゃない。不安にさせて悪かった」
「ではいかがなされましたか」
「この"はぐれ"ってとこなんだけどな。わざわざ"はぐれ"って付くってことは、普通は群れなんだろ? もし群れてたらこの依頼の扱いはどうなるの?」
「それはですね、数匹程度でしたらワンランク上のC級扱いに、大規模な群れでしたらその規模に応じてBからA級になります。ただ、群れをなす魔物にしては珍しくこのホーンブルは頻繁にはぐれ個体に遭遇するので、ある程度の実力のある方にとっては非常に戦いやすい相手となっております。ホーンブルはそれ単体である程度強いですので、周囲に別の魔物が近寄らなくなりますからね。必然的にホーンブル一体のみを相手にすればいいことが多いので、集中して倒せる分討伐率も上がるのです」
「なんだ迷子が多いのか」
「そういうことですね。魔物研究をしている学者の方の研究結果でも、どうやら本当に種族として致命的に方向音痴らしいですので」
それで大丈夫なのかホーンブルよ。よくそれでこれまで生き残ってこれたもんだ。まあ見知らぬ環境でも生きていけるほど強いと言えばそれなりに凄くは聞こえるんだけどな。
「ちなみに、例えばD級冒険者がC級相当の群れに遭遇してしまった場合、規則上は依頼を受注出来なくなるけどそれは依頼失敗扱いになるの?」
「いえ、その場合は依頼が不成立ということになり、依頼料は支払われることはありませんが偵察依頼をこなしたということで若干の褒賞金が支払われます」
「なるほどね。でもまあ俺はA級だしな。別に、ソレを倒してしまっても構わんのだろう?」
某サーバント的な台詞を言ってみる。
「もちろんです。強い冒険者の方は我がギルドでも歓迎しております。そもそもこのランク制も若い冒険者が無理して死ぬのを避けることを目的とした制度ですので、ある程度の経験や実力のある方が大丈夫と判断した場合はその場で臨機応変に対応して下さって問題ありません。依頼が発生しているわけではないので依頼達成扱いにはなりませんが、きちんと素材買取はさせていただきます」
「わかった。色々ありがとう。それじゃあこのはぐれホーンブルの討伐依頼を受けるよ」
「かしこまりました。それではこちらが細かい契約条件と依頼内容になっております。問題が無ければここにサインをお願いします」
細かい条件を読んで納得した俺は紙にサインする。
「……これは何語でしょうか?」
あ、しまった。つい日本語で書いてしまった。一応この世界の言葉も「言語理解」のお陰でネイティブばりに書けるのだが、気を抜くとどうも母国語が出てきてしまうな。
「いやーごめん間違えて故郷の文字で書いちゃった。書き直したほうがいい?」
「あ、いえ、大丈夫です……」
受付嬢が少し困惑していた。次から気をつけよう。
「これで手続きは完了です。期限までの間にホーンブルの討伐証明部位をカウンターまでお持ち下さい。素材等があれば、買取カウンターのほうで査定の後買取させていただきます。もし解体をなさりたくない等あればお申し付け下さい。有料にはなりますが、解体サービスのほうを承っております。その分の料金を差し引いた額を当ギルドのコウサカ様名義の口座に振り込みいたしますのでよろしくお願いします」
「わかった。多分それ頼むことになるわ」
汚れるから解体したくないしね。
「それじゃあ行ってくる」
「はい。今後ともよろしくお願いいたします。お気をつけて行ってらっしゃいませ」
そうして俺達は冒険者ギルドを後にした。さあ、討伐だ!
ようやく冒険者としての仕事開始だ!……と思いきやのまだ開始しないやつ。作者のストーリーを進める速度が遅すぎる!




