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冒険をしよう

大大大失態を犯してしまいました。20話で冒険者になっているのをすっかり忘れて、もう1回冒険者になる描写を入れてしまいました。いくらなんでもこれは流石にマズイので、大幅改稿しました。その都合で20話がかなり膨れ上がってしまったので、20話と21話に分割して割り込み投稿してあります。差し支えなければその2本を読んでからこちらを読んで下さると筆者としても助かります……。

 さて、今日から王都に出発するまでの数日間は貴重な貴重な自由時間だ。アデルの問題も解決したし、よくあるテンプレ召喚勇者みたいに魔王を倒したりするような使命も特に無い。地球に帰るまでの七年の期限もあるにはあるが、まあそれだって必須というわけではない。性別が変わってしまっている以上、本人証明なんて不可能に近いし……。

 というわけで、差し当たってやらなければならないことは現状何も無いわけだ。それならば暇つぶしにこの世界を楽しんだって別にいいだろう。せっかく異世界に来たのなら、絶対に押さえていかなければならないイベントがある筈だ。

 ……そう、冒険者としての活動である!


「アデル、俺は冒険をしたい」


「いきなりどうなされたのですか?」


 唐突に、何の脈絡もなくそう告げると、当然のように困惑した返事が返ってきた。


「いや、せっかく暇になったわけだしな。一応冒険者の資格自体は持ってるんだけど、まだ一回も冒険者として依頼を受けたことがなかったからな。この機会に是非とも冒険というものを体験してみたいんだ」


「ええと、それでしたら冒険者ギルドまで案内いたしますね。私も少し息抜きをしたかったのでちょうどよかったです」


 そう言ってアデルは書類の束を机の端に寄せて立ち上がる。少し皴になったスカートをピッと伸ばしてから、こちらに振り返って言った。


「それでは行きましょうか」



      *



「ほおー、これが冒険者ギルドか……」


 二階建ての大きな建物を前に、俺はしきりに感心していた。二階建てとは言ったが、その高さは二階建てよりもずっと高かった。四階建てくらいはあるんじゃないだろうか。


「普通の建物と違って中に訓練場とかが入っていますから、どうしても他の建物と違って大きくなってくるんです。初めて見た人は大抵驚くそうですよ」


 建物を見て突っ立っていた俺にアデルが解説してくれる。なるほど、だからこんなに大きいんだな。


「それでは中に入りましょうか」


「あ、うん」


 初めての冒険者ギルドだ。小説とかゲームで地球にいた時から知っていた分、期待感がものすごいことになっている。ドキがムネムネするぜ。

 扉を開けると、中にいた人間の視線が俺達に集中した。おっ、ここはテンプレなんだな。


「おお、なかなか美人じゃねえか。俺声かけてこようかな」


 少しチャラい感じの印象を受ける若い男の冒険者がこっちを見てそう呟いているのが聞こえてくる。いいね、このまま絡まれればテンプレ通りだ。ところがそいつが席を立とうとしたその直後、隣にいた男が真剣な顔をしてチャラ男君の肩を掴んで止めた。何だ?


「お、おい待て。あの人……いや、あの方はもしかして……」


 すると今度は別の冒険者がその言葉を引き継いで叫ぶ。


「……り、領主様と戦女神様じゃないか!?」


「何! それ本当か?」


 気が付けばギルド内にいる全ての人間が、受付の職員も含めてこっちを見ていた。


「ああ、あっちのナイスバディの嬢ちゃんのほうなんだけどな。簒奪者達が掴まった時、俺たまたま領主様の城の前にいたんだよ。その時に勝利の宣言をしていた人にそっくりなんだ」


「おれも見たぞ。城門でチンピラ兵士共がなにやら騒いでた時に、兵士共をぶっ飛ばして一気に走り抜けていったんだ」


「お、オレももう一人のほうも見覚えがあるぞ。数年前から病で表に出てこなくなっていたアーデルハイト様にそっくりだ……」


「そうなのか……! じゃああの方々は本当に……」


「間違いねえ、アーデルハイト様と戦女神様だ!」


「……万歳。アーデルハイト様、万歳! 戦女神様、万歳!」


「「「アーデルハイト様万歳! 戦女神様万歳!」」」


 …………あれぇ。これは予想外だった。テンプレだったら普通、ここで絡まれる筈なんだけどな……。

 気が付けば、冒険者ギルド内は俺達を讃える声で満ちていた。控えめに言ってヤバイ。ヤバイとしか言いようがないけど、ヤバイ。仮面でもしてくればよかったかな……。


 それからしばらくの間、万歳コールは続いた。その間俺達は一歩もその場所を動くことが出来なかった。物理的にではなく精神的に……。



     *



「この度はお騒がせしてしまい大変申し訳ございませんでした。本来であれば止めるべき立場である私達も騒ぎに乗じてしまい、なんと謝罪したら良いのか……」


 まさに平身低頭、といった様子でギルドマスターと職員達が頭を下げてくる。


「いえ、お気になさらないで下さい。領民が私と景様をここまで歓迎してくれるということは、領主としてもっとも喜ばしいことですから」


 アルカイックスマイルを浮かべながら、たおやかな様子でアデルがそう返す。もっとも、アデルのこの台詞は決して社交辞令なんかではなく普通に本心なんだろうけどな。


「そう仰っていただけるとこちらといたしましても恐悦至極にございます」



 それからしばらくお互いがお互いを持ち上げ続けるといった、現代日本でよく見る光景が繰り広げられた後、ようやく冒険者として活動する上での説明が始まった。


「まず、戦闘を伴う依頼を受注する前に、Eランクへの昇級試験を受けていただきます」


「昇級試験?」


 そういえばなんかあったなそういうの。


「はい。コウサカ様の現在のランクはF級となっておりますので、冒険者ではありますが実質的には冒険者らしいことはまだ何も出来ない状態です。ですのでひとまず昇級の手続きを済ませる必要があります。具体的にはステータスの登録をさせていただきます。そのステータスをもとに、こちらで適切なランクを決定いたします」


「ステータス?」


「はい」


 ステータスか。そういえばしばらくステータスの確認をしてなかったな。見られちゃマズいものとかもそれなりにあるんだけど、このステータス登録って必須なんだろうか。


「冒険者がE級に昇級する場合において、初期ステータスの登録は義務となっております。ランクが上がって以降はステータスも個人情報として武器になりますから初期登録から先の更新の必要はありませんが、最初は適切なランクから始められるようステータスを開示する必要があるのです。この規則は王族や貴族の方であっても変わりはありません。もともとギルドは国や領地から独立した組織ですからね。ちなみにこれを拒むと戦力不足だと見做され、E級になることが出来ない制度になっておりますのでそのあたりはご了承下さい」


「なるほど」


 流石はギルド。王権すら跳ね除けるか。これは言い逃れ出来そうにはないか。


 さてとだ。久しくステータスの確認をしていなかったから今の自分のステータスが気になるな。体感でどれくらい強くなったのかは何となくわかるとはいえ、実際に具体的なステータスの伸び幅を数値で確認したわけじゃないからここらへんで確認はしておきたい。

 最初にこの世界に来た時に比べて結構強くなった感じがするし、地味に楽しみだ。

 というわけでドン。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

名前:神坂 景(Kohsaka Akira)

年齢:19歳

性別:女(心は男)


体力:836/836

魔力:∞

知力:146

身体:55

能力:始原の力

技能:身体能力100倍、拠点製作、鑑定、無限収納、言語理解、マップ、錬金術(火球・水球等の元素生成系技能が統合)

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 おお……。最後にステータスを確認した時に比べて大幅に上昇してるな。特に体力と身体強度が5倍以上に上がっている。たくさんの敵、それこそ内実はダメダメだったとはいえ、仮にも伯爵領軍級の規模の兵団と戦っているわけだからな。そりゃあステータスも上がるだろう。

 この当初に比べて5倍以上の力を持つ身体で「身体能力100倍」を使ったら、最初の素の状態の実に500倍の力になっているわけだ。同じ100倍でも元の強さが違うと威力も桁違いだな。


 それと、このステータスがギルドに登録されてしまうわけか。体力とか知力のあたりは別にいいけど、無限の魔力とか始原の力のあたりを見られるのは困るな……。


「なあ、例えば技能を持ってたら、それもそっちに把握されるのか?」


「いいえ、登録されるのはあくまで体力・魔力・身体の3項目のみです。技能は重要な個人情報ですからね。登録されたりはしませんよ。稀に3項目はてんでダメでも技能が特殊で実は強かった、というケースが無いわけではないのですが、そういう人達は自然と直ぐに昇級しますから規則通りE級から始めてもらっています。あと、何かしらの功績がしっかりと目に見える形で証拠がある場合はそれが特殊要素として等級判定に加算されたりもします。コウサカ様の場合、この街と領地を救ったという破格の功績がありますからね! 間違いなく大幅加点となると思いますよ!」


 マジか。いやまあ加点されること自体は嬉しいんだ。過去最速で冒険者ランクを上り詰めた人物! みたいなのに憧れが無いわけでもないからな。けど問題はそこじゃない。魔力だ。俺の魔力が無限だってことがバレてしまう。これ、多分だけど珍しいどころの騒ぎじゃないよね? まず間違いなく大騒動に発展するよね? 面倒なのは嫌なんだけどなぁ。

 と、そこまで考えて、既に戦女神とか呼ばれて十分に面倒なことになっている現実を思い出した。それに、バレたらバレたで抑止力にもなるからむしろ面倒なちょっかいが減るかもしれないとも考えられるよな。第一こうやって色々思い悩んでること自体がもう面倒くさい。あーもうなるようになっちまえ!


 てことでステータス測定をしました。

 結果。


 測定器の水晶玉が光り輝いたと思った直後に爆発して粉々になりましたとさ。はいテンプレいただき〜。


 結局、測定は不可能って言うんで、大体の戦闘力は既に実証されてるわけだから問題無いということでA級冒険者として登録された。いきなりA級として認められたのは俺が初めてで、必然的にA級に到達した期間も過去最速らしい。やったね! なんかコレジャナイ感が半端ないけどな……。


 何はともあれ、紆余曲折を経たものの無事に俺は本格的な冒険者としてちゃんとデビューしたのだった。これで異世界でやりたかったことをまた一つクリアした。嬉しい。

次回、魔物討伐……できるといいな。

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