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森へ行こう

今回からだいぶチートっぽくなります。チートっていいですよね。気分爽快です。まだ誰とも戦わないけど。

 さてさて、命からがらお空の旅から還ってきたことだし、今度はちゃんと具体的な効果を決めてから発動してみよう。

 さっきの件で、あまり考えなしに行動するのは命に関わるということをこの身を以て実感したので、もう無茶なことはしないようにしたい。とはいえせっかく異世界に来たのに、あまりチートや無双が出来ないってのも味気ない。そもそも世界の壁を越えて地球に帰るなんて偉業というか離れ業を成し遂げたいなら、それこそ世界最強くらい成し遂げなきゃ話にならないだろう。だから強い能力……というか戦闘力はやっぱり欲しいところだ。何より生き延びるのに強さは必須だし、この(おそらく)大変危険な異世界に自分より強い存在がたくさんいて、しかもそれらが自分に害意を持っているかもしれないことを考えれば、強くならない選択肢など初めから存在しないんだ。

 それにこの世界、多分だけど、テンプレな世界観の異世界だって萩本さんも言ってたし、地球の中世程度の文明なんだろう。ひょっとしたらそれ以前の水準かもしれないし、逆にやや近世に近いなんてこともあるのかもしれないけど、基本的に中世の世界観から大幅にズレてるなんてことはない筈だ。だから例えば石器時代だとか、超未来文明だとか、はたまた地球そっくりの現代文明だとかそういうことは無いと思っていいだろう。

 ということはだ。まだ近代民主主義とか人権だとかそういう概念が発達してない可能性も大いにあるってことだ。別に絶対王政や独裁政治が絶対悪だとは思わないけど、かといって民衆をぶっ殺しまくったりするのもどうかなと思うんだよね。そしてこの世界にいる権力者達がそういうヤバイ人種である可能性も捨てきれないわけで。必然的に権力とか国家とか、そういうものから身を守るだけの力が欲しいと思うのです。確かに戦いは数だよ。でもね、数をも上回る個がいるのも異世界の醍醐味ってやつだと俺は思うんだよね。だから俺は何万もの兵に負けないくらい強くなりたいのだ。それにやっぱり中世とかなら、女の身で成り上がるにはそれなりの、それこそ全世界に認めさせるだけの強さとか実績が必要だと思うんだ。まったく生きにくい世界に来ちまったもんだなー。現代の地球がいかに素晴らしいかがよくわかる。ああ、帰りたい……。


 話が盛大に逸れたな。まあ理由は色々あるけど、ようは強くなりたいってことだ。無茶しない範囲であわよくば世界最強になれたら尚良し。だから早速練習の続きを始めよう。

 さて、さっきは空を飛ぼうとして失敗したわけだけど、そもそもこの始原の力って何なんだろうって考えた時に、「全ての可能性を創造する力」というのが本質な気がするんだよな。それってつまり、「何でも出来る力」じゃなくて、「『何かが出来るようになる力』を何でも作れる力」って捉えたほうがいいってことなんだろう。だからさっきみたいにいきなり空を飛ぼうと思ってもうまいこと発動せずに、あんな風に自滅の危険性があるってわけだ。最初のほうにも萩本さんに「イメージは具体的なほうがいい」って言われたけど、それってようはこの力に慣れる……というか創造神と同じレベルで使いこなせるようになるまでは具体的な効果を決めてからじゃないと危なくて使えないってことだ。だから配管工おじさんの火球をイメージして使った時はあれと同程度のモノが使えるスキルとして「火球」を習得出来たし、ぼんやりとしたイメージしか抱いていなかった「空を飛ぶ」ことはうまいこと発動出来なかったというわけだ。現に今ステータスを確認してみても、「飛翔」とか「飛行」みたいな技能は一個も追加されていない。ちゃんと具体的な効果を決めて、うまいこと発動してそれに慣れてからじゃないと技能として登録されないんだろう。取り敢えずのところ、当分この「始原の力」は、技能を創造する力と思っていいみたいだ。多分本質は違うんだろうけど、今のところそういう側面でしかこの力を使うことが出来ないんだからそう思ってても何の支障も無いだろう。


 で、次に思いついたのがこの力。「身体能力100倍」だ。ものすごい単純かつ短絡的だと俺自身も思うよ。異能考案のセンスの無さをひしひしと感じる。けどやっぱり力があるって大事なんだよ!特に何かトレーニングをしていたわけでも無いし、平均的な学生程度の力しかなかった俺では絶対にこの異世界では通用しないだろう。それに加えて今は女の体になってるんだから更に筋力は下がってる筈だ。生き残れるわけがない。だから足りない分のパワーは能力で補いましょうね、と、そういうことだ。まあ異能は○個まで!みたいな制限があるわけでもなし(ないよね?後で萩本さんに訊いておこう)、1個くらい安直なスキルがあったって別にいいだろう。

 そして更に注目して欲しいのがこのスキルの特徴。なんと1~100%までの範囲で出力調整が可能なのだ!これって実はすごい画期的で、例えば敵が想定より弱かったりしても強すぎる力でオーバーキルしてしまうなんてことが無いし、何より初っ端からまだ慣れないうちに自滅するなんてことが無いのだ。さっきの空飛び事件から学んだ貴重な教訓が活かされた形だ。自分で自分を褒めてあげたいレベルの出来栄えだと思う。

 ということでさっそくこのスキルを使ってみよう。ちなみにこの力、身体能力が100倍になるわけだから一応反応速度とか体の頑丈さも100倍まで上がるようになってはいるので、扱いきれないなんてことは無い筈。練習すればちゃんと使えるようになる筈だ。さて、まずは2%からいこうか。今の2倍だ。深く息を吸い、体の奥の力を意識して、考えた力の設定を強くイメージする。身体能力100倍、まずは2%!


「ふっ!」


 力強い熱が身体中を駆け巡る。熱が身体の隅々まで行き渡り、やがてしっくりと馴染むのを感じる。何となく自分の力が強くなってる感じがする。今すぐ上がったパワーを試してみたいけど、何かを殴ろうにもここは草原だから何もない。あるのは地面と草だけだ。2倍程度じゃ地面は割れないし、2倍の力で草を毟ったってどうしようもない。仕方がないのでジャンプしてみることにする。


「ほっ」


 軽くジャンプしただけなのに、いつもより高く跳べてる気がする。しかも体が軽い。そりゃ女になってるんだから当然体重は下がってるけど、そういうのともちょっと違う。何というか、身軽になった感じがする。……来た。成功だ。身体能力100倍、今回はちゃんと成功したかもしれない。よし、続いて3倍だ。


「ふんっ」


 また成功だ。今度はさっきよりも高く跳べた。というか人生で一番高いかもしれない。凄い。気持ちいい。次はちょっと飛ばして5倍でいってみよう。


「はっ」


 うおっ、高い!自分の身長くらい跳んだ気がする。今回も成功だ!次は10倍!


「とっ」


 成功!段々慣れてきた。にしても高い!もう地球人類が跳べる高さじゃない。まるで忍者だ。まあ忍者も一応人類だけどな!

 次、20倍!……成功!30倍……成功!よし、いいぞ。なんかいける気がしてきた。50倍だ!……成功ッ、高い!学校の屋上くらいなら届くかもしれない。しかしあんまりに高いんで着地が難しい。落ちてる最中に体制が崩れてうまいこと着地出来ない。これも慣れだな……。一応体の強度も100倍だから万が一着地に失敗してもそこまでダメージがでかいわけじゃないけど、痛いものは痛いからな。なるべく失敗しないようにしよう。

 さて、次は80倍に挑戦だ。これでうまくいったら最後、100倍にチャレンジしよう。うまくいくかな……?


「ふっ!」


 跳べた!80倍は成功だ。着地もうまく出来た。いいぞ、凄い楽しい。これが異能だ。超!エキサイティン!!


「ふぅ……」


 100倍を前に、一度深呼吸をして気持ちを落ち着かせる。80倍まではうまくいったとはいえ、やっぱり力の上限までいくのは緊張するもんだ。大丈夫。いける。……よし!


「はぁっ!」


 高い。遠くが見える。さっき空を飛ぼうとして失敗した時は周りを見渡す余裕なんて無かったけど、今ならしっかりと見ることが出来る。そして今から向かおうとしている森がとんでもなく広いってことがわかった。……成功だ!


「よっしゃーーっ!」


 嬉しくて空中で叫ぶ。力を自分の思い通りに制御出来て、何十メートルもジャンプした。凄い爽快感だ。

 そのまま着地しても嬉しさが無くなるわけじゃない。溢れるパワーを試したくて、俺は思い切り地面を殴った。ドゴォッ!と音を立てて地面が抉れる。100倍のパワー、半端じゃない。


「うおおおおお!」


 ドゴゴゴゴゴ!と、そのまま何度も地面を殴りまくって地面を穴だらけにする。同じところを何度も殴りつけるもんだから穴のひとつひとつがどれも大きくて深い。


「あははははっ」


 ヤバイ。これは楽しい。こんな経験したことない。というか多分地球人類は誰も経験してないだろう。何だこのパワーは。このチートは。楽しすぎて笑いが止まらないぜ。


 そのままひたすら満足するまで地面を殴り続けて、気が付いた時には辺りが穴だらけになっていた。まるでここだけ空爆されたみたいだ。なんかまたさっきの火球と同じことしてるな……。

 ふと空を見上げると鳥が飛んでいる。森が近いからかな?俺は足元に転がっている、今しがた掘り返したばかりの石ころを掴んで持ち上げる。身体能力100倍だ。……投げる力はどれだけ伸びているんだろう?

 石を掴んだまま、肩を大きく振りかぶる。目標、あの鳥。果たして飛んでいる鳥を落とせるか!?

 ……結論から言うと、当然のように外れた。けどめちゃくちゃ遠くまで飛んだ。2~3キロは飛んだんじゃないか?目安になるものが何もないから目測ではあるけど、かなり飛んだのは間違いない。間違いなくオリンピックで優勝出来るレベルだ。優勝どころか、一昔前の大砲とだって勝負できるかもしれない。しかも今の、手で握れるサイズの石が数キロ先まで飛んでいくのをはっきり確認出来たんだ。身体能力100倍、凄いな……。


 さて、「身体能力100倍」がちゃんと使えるのはもう十分に検証出来た。ステータスを確認してみよう。


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名前:神坂 景 (Kohsaka Akira)

年齢:19歳

性別:女(心は男)


体力:12790/12800

魔力:∞

知力:145

身体:6→600

能力:始原の力

技能:火球、身体能力100倍

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 うおっ……。一気にチートキャラ化したな……。それにちゃんと「身体能力100倍」もステータスに反映されてるようでよかった。これで始原の力も一応はまともに扱えるようになったってことかな。まずはひと安心だ。これで取り敢えず、自分の身を守ることだけはなんとかなりそうだ。

 それじゃあ始原の力の練習もひと段落ついたことだし、森へ行くとするかな。ただ歩いて行ったんじゃつまらない。せっかく「身体能力100倍」を習得出来たんだ。それを活かしていかなきゃな。


 というわけで、走る。ただひたすらに走る……身体能力100倍で。速い。超速い。体感で高速道路を走る車くらいスピードが出てる気がする。俺、異世界に来てまだたったの数時間なのに、もうこんなにチートしちゃっていいのかしら……。

 そんなこんなで結局、数時間は確実にかかると思われた森だけど、思いの外早く着いてしまった。まだ日も暮れてないし、ちょっとだけ森の中まで進んでみようか。にしても人生初の森でのサバイバルが異世界か。ドキドキハラハラだなぁ。安全第一でいこう。

次回、森に突入します。


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