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卒業

※若干生々しい描写があります。

「……それで、本当にいいんだな」


「はい。私、景様と結ばれるだなんて嬉しいです」


 夜の帳も完成に下りた頃。俺とアデルは伯爵家屋敷の一室のベッドの上で向かい合っていた。


 この部屋はもともとアデルの部屋だったらしい。まだ親父さんが生きていた頃、つまりアデルが監禁されるまではこの部屋で暮らしていたようだ。もっとも、それも数年前までの話で、それ以降はずっと使われてはいなかったらしいが。

 そんな思い出のある部屋に、俺とアデルは泊まることにした。アデル的には泊まるというよりも帰ってきたと言ったほうが正しいかな。しばらく使われていなかった部屋を掃除している時、アデルは懐かしそうに色々な物を眺めて感傷に浸っているように見えた。


 俺がどこに泊まるかという話になった時、当初はイェルガーも別の部屋を用意しようとしていたのだが、俺とアデルたっての希望によって、俺はアデルの部屋にお邪魔することになったのだった。イェルガーもなかなかに鋭い男で、俺とアデルが同じ部屋で寝ると言った時に何となく俺達の関係性に勘付いたようだった。別にそこまで隠すつもりもないし、バレたらバレたでむしろ堂々とイチャつけるのでこちらとしては問題ないのだが、俺とアデルが部屋に入っていく際、イェルガーがニッコリとこちらを見てきたのには少しイラッとした。何だその生温かい目は!


 そんなわけで俺とアデルは同じベッドの上で向かい合っているわけだが、今日はいつもとは少し空気が違う。それもその筈。今日は名実共にアデルを救った日。つまり、俺が自分にかけていた制約が解かれる日だ。

 覚えておいでだろうか。俺はアデルに散々イタズラこそすれ、直接手を出したことは一度もないことを。キスとかおっぱいを揉んだりとかくらいはしたこともあるが、いわゆる「手を出した」ことは一度もない。なぜなら、今まではアデルの味方になってやることで彼女を精神的に救いはしたものの、依然として状況は何も変わってはいなかったからだ。そんな中途半端な状態で手を出すわけにはいかない。俺からアプローチをしかけたとは言えアデルの気持ちもわかっていたし、俺だって若いんだから色々、それはもう色々とヤリたかったが、解決するまでは最後の一線は超えてはならないと自分を戒めていた。俺なりのけじめだ。俺はこの世界でハーレムを作りたいけれど、決して外道になりたいわけではないのだ。


 しかーし!!!

 その制約も今日で終わりだ。御家簒奪事件は無事に解決したし、領地の今後の発展も期待できる。アデルは力を貸してくれた俺に感謝しているし、有言実行でちゃんと自分を救ってくれた男らしい(身体は女だが)俺にメロメロになるというわけだ! 高笑いが止まらねえぜ!

 景様キャー素敵。ぬわっはっは。

 好きな女にこう言われて喜ばない男はそんなにいないだろう。さっきから俺の頭の中は妄想でいっぱいおっぱいだった。その代わりと言っては何だが、身体と心の逸物はガチガチだった。


「ふふ、景様緊張してらっしゃるのですか」


「あ、アデルだって声が震えてるじゃないか」


「こ、これは嬉しさで震えているのです!」


 仕方ないだろ。こちとら童貞……処女なんだ。女とそういうことをするのは人生初なわけだし、緊張してしまうのも仕方がないというもんだ。まあ、それを言ってしまうとアデルもそうなんだが……。


「景様、あまり痛くしないで下さいね」


「保障は出来ない」


「私も痛くないように優しくしますから」


「……ん」


 その夜、俺達はようやく結ばれたということだけ報告しておく。



     ✳︎



 ああ、朝日が眩しい。澄み渡る空と透き通った空気が美しい。窓から見える景色も一段と輝いていて、小鳥の囀りすら天使達の笑い声に聞こえる。街は今日も元気だ。

 素晴らしい。生きてるって何て幸せなことなんだろう。俺はこの世界に転生したことを心から感謝していた。


 ……よくエッチした次の日は世界が違って見えるとか言うけど、あれって本当だったんだな。今まではどこか斜に構えて世界を見ていたが、今は素直に世界のありとあらゆる出来事を受け入れられるような気すらするぜ。

 あと、初めてはやっぱり痛かった。指だけでも結構痛いもんだな。アデルと二人、お互いに痛がりつつも、その痛みを喜びあった昨日の夜は、一生忘れない思い出になるに違いない。俺のエロエロメモリーに保存しておこう。

 それともし俺が日本で童貞じゃなかったら、こっちでも処女じゃなかったりしたんだろうか。その辺の因果関係は若干気にならなくもない。今となっては肉体的にも空間的にも時系列的にも確かめようがない話だけどな。


「ん……」


 横から声が聞こえる。胸まで毛布を被ったアデルが身じろぎして、こちらを向いていた。

 穏やかな寝顔が可愛らしい。昨日まではやはりどこか表情に翳りが見えたが、今は寝顔も晴れやかな気がする。

 そうだ。俺はこの子と結ばれたんだよな。そう再認識すると、また心に喜びが湧き上がってくる。

 横で眠る少女がとても愛おしい。俺はいつから恋愛小説の主人公になったのだろう。


「うん……。……あきら様?」


 目を覚ましたアデルと目が合う。普段と違って、寝惚けてとろんとしているアデルもまた可愛い。


「おはよう、アデル」


「おはようございます……」


「愛してるよ」


「私もお慕いしております……」


 ふわふわした表情で、にっこりと微笑んだ彼女は有り得ないくらいに魅力的だった。


「…………っし、辛抱ならねえ!」


「景様? あっ……」


 結局そのまま行為に突入してしまい、起き出してきたのは正午に近い頃だった。



     ✳︎



「昨晩は随分とお楽しみでいらしたようで」


 あの後朝風呂をアデルと二人で浴びて、朝食を食べようと食堂に行くと、イェルガーにいきなりそう言われた。朝一(と言っても既に昼近いが)の台詞がそれか、と思わなくもないが、いかんせん領政に支障を来すくらいヤリ倒したのは俺達なのでぐうの音も出る。


「もっと俺らの初夜を祝福したらどうなんだ?」


 俺とアデルにとっては記念日なのだ。初夜くらい好き勝手にさせろ!


「私は別に苦言を呈しているわけではない。一度、こういう台詞を言ってみたかっただけなのだ。その証拠に……アデル様、今後の領政の企画書と早速入った領民からの陳情書、長らく商売活動を抑制されてきた商人達への対応や他領への権威回復の報せなど、様々な問題をカテゴリ分けして纏めておきました。それぞれ過去の領政記録の判例を参照しながら対応策を練っております。至らぬ点はあるかとは思いますが、アデル様のサイン一つで終わるものもいくらかある状態にしてあります」


「流石だな。けどやり過ぎるなよ。あんたを信用していないわけじゃないが、一歩間違えばオリヴィエと状況は変わらないんだからな」


「……ご忠告、肝に命じておこう。アデル様、今後の家臣団の暴走を防ぐべく、構造的な解決策を模索して参ります」


 もちろん、だからと言って領主の独裁は良くない。領地は領主のモノなんだから理屈上は独裁でも悪くはないのだが、それも領主が善良かつ有能であればの話。無能だったり、悪徳領主だったりしたらその領地は一気に廃れて蟄居改易の危機になる。ようはバランスだ。領主権限は強めのほうが統治はしやすいが、領地の健全な経営のためには家臣団と領主の両者は持ちつ持たれつの関係性を続けたほうが良いのだ。


「その通りであります。……しかし、想像する限りにおいて貴女は貴族出身ではなさそうであるが、相当な教養をお持ちのようだ。一体どこでどのような育ち方をなされたのか、大変気になりますな」


「まー遠くのほうでそれなりに、ね」


 異世界日本とおくのほうでで、受験戦争勝組それなりにね。


 まあもっとも、この世界に飛ばされてからしばらく経つ。まだ留年くらいで済むかもしれないが、行方不明扱いになってることを考えるとそろそろ大学から籍が消えてもおかしくはないんだよなぁ。せっかく苦労して入ったのに、籍くらい残しておいてくれないもんかね。まあ日本はどこへ行っても基本お役所仕事だからな。規則から外れるような特別な対応を期待するのは難しいだろう。残念。

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