蹂躙劇
投稿がめちゃくちゃ久しぶりになってすみません!! エタったわけではないのです! 色々と、そう、忙しかったのです!
というわけで今後もよろしくお願いします。
「敵は二人だ! しかも女だぞ」
「捕まえろ! 牢にぶち込んでやる!」
「今夜は楽しめそうだなァ!」
門から出てきた兵士達が下衆な笑みを浮かべてこちらを見てくる。
「一周回って清々しいほどに下衆ですね……」
アデルが顔を顰めながらそう言った。
確かに、この領地に入ってからまともな兵士を未だかつて見たことがないな。あれだけいるなら一人くらいまともな奴もいてもよさそうなんだけど……。
そういうまともな人間は簒奪者の障害になるから排除されたのかな?
まあ、何にせよ敵が惚れ惚れするほどのクズ揃いだと、こちらもやりやすくて良い。手加減したりする必要が無いのは非常に気分が楽だ。これが主君への忠義だとか、己の信じた使命感に燃えてるような憎めないタイプの人間が相手だと若干やり難かったりするのかもしれないけどな。まあそういう相手でも結局はぶっ飛ばすんだけど!
「さあふっ飛べ」
俺は溜めてあった風魔法を一気に解き放つ。猛烈な威力を持った暴風が武装した兵士を門の扉ごと吹き飛ばす。
「「「ぎゃああああっ」」」
ドゴォォン、という地響きを立てながら頑丈な門が崩れ落ちる。すかさず俺とアデルは城壁内に突入した。中に入ったところを弓矢で狙い撃ちにされる可能性があったので、もちろんのこと魔力障壁は展開済みだ。重機関銃の集中砲火にも耐えられるだろう。まあ幸か不幸か、突入したところで弓矢を食らうことは無かったんだけどね。
「なんだ!?」
門番事務所の中から、待機していた憲兵達がわらわらと武装して出てくる。が、どうもしゃきしゃきとしていない感じだ。
変だなと思ったら、扉の隙間からチラッと酒瓶のようなものが覗いていた。……仕事中に酒かよ! どうやら今の簒奪者の統治はどうしようもないらしい。どうせ政権奪取したならせめて業務はしっかりこなそうぜ。門番なんて、簒奪者でもそうじゃなくても街を守る上で一番大事な仕事だろうに。
「なんだこれは! お前達の仕業か!」
頰を赤らめた憲兵の一人が若干怪しい呂律で問い質してくる。お仕事を放棄するような門番が真っ当な人間のわけがないし、面倒だからぶっ飛ばしちゃっていいよな。
というわけで皆さん、早速腹パンで沈んでもらう。
「「「ぐふっ!」」」
ドサドサと倒れていく門番(笑)達。お酒を飲んだまま寝るのはさぞ気持ちよかろう。
さて、邪魔する人間もいなくなったことだし、急いで領主の館に向かうとするか。
「じゃあアデル、道案内頼むよ」
「はい。こちらです」
アデルは今の襲撃で騒然とした大通りに向かって駆け出す。俺は野次馬が近寄ってこないように睨みを利かせつつ、アデルの後を追いかけた。
「しかしこれはまた酷いな……」
「はい。守るべき民を……。本当に許せません」
バルツァー領都の大通りを駆け抜けていた俺達だが、いかんせんこの街の様子は酷かった。道行く人々に活気がない。店もところどころ閉まっているようだし、まるで異世界版シャッター街みたいだ。
大通りはまだいい。街の中心部なだけあって、まだ仕事がある人達が行き交っている様子が伺える。しかし少しでも大通りを外れるともう駄目だ。職を失ってすることの無くなった人達が、道端に座り込んで一種のスラムと化している。そしてそれが街全域に広がっているのだ。
簒奪者、許すまじ。もしこの街の統治者が簒奪者じゃなくて正統な後継者だったとしても、これは革命されても仕方ないレベルでお粗末だ。領地運営の才能が決定的に欠けていると言う外ない。かの徳川将軍は、百姓は生かさぬよう殺さぬよう搾り取るべしと仰ったようだけど、このままだとバルツァー伯爵領の民は近いうち息絶える。その場合、最終的に困るのは統治者である自分達だということがわかっていないんだろうか。まあ尤も徳川将軍のこの台詞が字面通りの意味であったかどうかはまた議論を呼ぶところではあるんだけどな……。
そんでもって更に酷いのは、これだけ活気が無いと革命を起こす気力も起きないということだろう。革命というのは不満の溜まった、ある程度力のある人々が団結して起こすものだ。ここまで搾取されて貧困に喘いでいると、そもそも革命を起こすことすら出来なくなってしまう。現代日本の隣国なんかがそれに近い。革命が起こることなんてまずありえない。
「急ごう。少しでも早くこの状態をなんとかしないと」
「はい」
十分ほど走った頃か。俺達は領主の城の前にやってきていた。十分といっても走ってるのはこの俺だ。常人の数倍、それこそ車と同じくらいの速度で走ってるから結構距離は移動した。何キロも走ってようやく中心部の城に辿り着けるんだから、この街が大きいことがよくわかる。現代日本の都市と比べると大したことないように思えるだろうが、この世界の技術水準でここまで発展させるのは難しい。これほど大きい街があるってのは凄いことだと思う。それだけアデルの家の統治が良かったってことだろうな。もっとも今は簒奪者の悪政のせいで見る影も無くなってしまっているが。
「何だお前らは!」
入り口に立つと、悪そうな顔をした門番が槍を構えた威嚇してきた。どこから情報が漏れるとも限らない。誰も入れるなと厳命されてるんだろう。
「本当の伯爵家って言ったら通じるか?」
「何!?」
馬より速く走ってきたから当然といえば当然なんだが、どうやら城門付近で起こった騒ぎについてはまだご存知ではないらしい。好都合で何よりだ。
「な、何を意味のわからないことを……」
門番の、ほんの少しだけ狼狽した様子が見て取れる。居城の門番を任されるだけあって、コイツはそれなりに兵士の中では上の立場なのかもしれないな。
でもまあそんなことはどうでもよいのだ。俺達はとにかく中に入って簒奪者共を捕らえて、証拠を掴みさえすればいいんだから。
「ということであんたにも眠ってもらうよ」
「くっ、て、てきしゅぐああっ!!」
敵襲、と言おうとしたんだろうけど、それはさせない。言わせない。言わせたら証拠が消されちゃうかもしれないだろ? まあこの惨状を見る限りにおいて、状況証拠だけで充分な気もするけどな。
特に問題もなく門をくぐり抜けることが出来た。目指すは簒奪者のいる部屋だ。
「じゃあアデル、案内頼むよ」
「お任せ下さい。数年間閉じ込められてはいましたが、もともとは自分の家。抜け道も沢山覚えています」
「頼もしいな」
「恐悦至極です」
そう言ったアデルは少し嬉しそうな顔をしていた。可愛い。
「そこを右です!」
後ろを走るアデルの案内を聞きながら、俺は城の廊下を突き進んでいた。万が一、見回りの兵士やトラップなんかに出くわしたらアデルが心配なので、俺が前に出てそういうのを未然に防ぐという算段だ。実際、何度か兵士と鉢合わせしてその度に沈めてきているのでかなり効果のある陣形だと思う。陣形といっても所詮は2人しかいないんだけどな。
それにしても、廊下の壁に掛けられた絵や置物、彫刻などが多い。それも煌びやかで豪奢なものばかりだ。
「簒奪者の野郎、金遣い荒そうだな」
「お父様の治世の頃にはこんなのなかったです」
だろうな。長年、民から搾取を続けてきただけある。民が疲弊するわけだ。
それにしても趣味が悪い。こういうテンプレートな悪者は金ピカで豪奢なもの好みそうなもんだが、今回の奴はそういう意味で「趣味が悪い」わけではない。確かに金ピカではあるのだけど、……なんだこの造形は。芸術的センスのかけらも感じない。これだから成金は……と思ったが、そういえば俺も成り上がり志望だったことを思い出した。人のこと言えないや。
そうこうしているうちにそのまま何人かの兵士を倒し、俺達は簒奪者がいると思しき部屋の近くまでやってきたのだった。
さあ、遂にご対面だ。まずは一発、殴らせてもらうぞ。
俺は気合を入れ直して、部屋の前に向かって歩き出した。




