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お節介野郎

説明回なので、だいぶ台詞と改行が少ないです。読みにくかったらごめんなさい。

「すみません。取り乱してしまいました……」


 少し落ち着いたアデルが謝ってくる。


「気にしないでいいよ。それより事情を聞いてもいいかな」


 俺は、落ち着いたアデルから詳しく話を聞くことにする。


「はい」


 そう言ってアデルは話し出した。

 アデルは、俺の予想通り貴族だった。本名は、アーデルハイト・オフィーリア・フォン・バルツァー。ここヴァルツィーレの隣にあるバルツァー伯爵領の、伯爵家の令嬢だったという。ところがそのバルツァー伯爵家では、とある問題が起こっていた。

 もともとアデルは伯爵の一人娘だったのだが、幼くして実母は他界、当主の妾から目の敵にされていたらしい。妾のほうには息子が2人いたので、自分の子供にお家を継がせたかったのもあるんだろう。アデルは当主である父親の見ていないところで色々嫌な目に遭っていたらしい。当時、理由は不明だが家がだんだんと傾いてきており、借金の形に領地の土地や事業の利権を次々と失っていたため、バルツァー伯爵はそれらの問題にかかりっきりでアデルに構う暇が無かったという。アデルもそのことはしっかりと理解していたので、父親の足を引っ張らないよう耐え忍んでいたようだ。

 やがて過酷な執務ゆえか、当主もやや不自然に病死し、妾はアデルの親権を継承して継母となった。継母はどこからか男を連れ込んで当主に仕立て上げ、自分の長男を世継ぎにしたらしい。本来ならばバルツァー伯爵家の血を引くアデルが当主となる筈が、継母はあれよあれよと言う間に見事にお家を乗っ取ることに成功したみたいだ。完全なるお家簒奪ではあるが、もともと没落しかけてた上に家臣団や親戚もほとんどいない状態だったため、止める者もおらずなし崩し的に家を乗っ取られたらしい。

 とはいえ周りに認知されていないだけで、王国法の定める戸籍上においてはアデルが当主を引き継ぐことになっていることには変わりはないので、実権の有無はともかくアデルの存在は邪魔なものとなっていた。もし、アデルが社交界に出ればすぐに発覚することだ。継母とその一派達はアデルが外に出て、自分達が家を簒奪していることを外にバラされることを恐れた。その結果、止める者のいなくなった伯爵家ではもはや隠すことなくアデルをいびるようになる。最終的に、生き証人であるアデルはずっと幽閉されて不遇な生活を送ることになったようだ。

 伯爵家という立派な家に生まれたのにも関わらず、そのような悲惨な家庭環境で数年を過ごしていたアデル。もともと厄介者扱いされた籠の鳥だったが、最近になって「病死」させられそうになったり、直接的に命を狙われるようになったので意を決して逃げ出したのだそうだ。この街までは、普段は絶対に連れて行かれない「慰安旅行」に家族と共に来たらしいけど、本当は街道を移動中に運悪くアデルだけ暴漢に襲われて始末されることになっていたようだ。その計画を密かに聞いてしまったアデルは、計画が実行される前日の夜、屋敷に比べて比較的警備の薄い宿から抜け出して、それからずっと近くの倉庫に身を潜めていたらしい。

 しかしどんなに没落している家の、それも簒奪者であっても貴族は貴族。何の後ろ盾も無い一人の少女が逃げ続けるには相手が悪すぎた。努力の甲斐なくいずれ見つかって始末されるのだろうと絶望しかけていたところに、俺と出会って今ここにいるんだそうだ。


 …………何というか、非常に胸糞悪い話だ。聞いてみれば、アデルには何の非も無いじゃないか。もちろんアデルの主観に基づいた話だから、若干の誇張表現が含まれてる可能性も無視出来ない。それでも尚、許せないくらいには酷い話だ。

 話を聞き終わった頃には、俺は完全にアデルに感情移入してしまっていた。深い事情を知った今、もう後には戻れない。というか戻りたくない。アデルを助けてあげたいという気持ちが抑えられない。


「アデル」


「はい、なんでしょう」


「もしよかったらなんだけど、俺と一緒に来ないか?」


「……え?」


「聞けば相当酷い状況じゃないか。それに頼る相手もいない。……でも俺には助けられるだけの力がある。なんだか、これって運命みたいじゃないか」


 運命を司る神はいない。創造神はいるけど、創造神自体は個々の人間相手にまで関わってはこないことを俺は知っている。いるのは天界の職員だけで、その職員さえもこの世界に於いてはどこにいるのかすら検討もつかない。久しく話していないが、萩本さんは地球(さらにいえば日本の関東地方)担当の職員だ。

 でも、俺には今回のアデルの件についてはなんとなく運命のようなものを感じていた。俺には助けられるだけの力があって、アデルは俺の目の前に現れた。偶然かもしれない。というか偶然そのものだ。それでも俺はアデルを見捨てることが出来なかった。


 端的に言おう。俺はアデルに一目惚れしたのだ。


 アデルは可愛い。そんじょそこらの人とは比べ物にならないくらい可愛い。そして可愛いだけじゃない。これまでの本当に短い間話しただけでわかる、その純粋で素直な性格。そして心が強い。まさに良妻賢母だ。良妻賢母は女性蔑視で差別的な言葉、と主張する人間がいるけど、そんな人間のことは知らない。俺は褒め言葉として使っているし、そもそも俺の好みの問題だ。

 惚れた女を守れないような人間は、惚れた女に愛される資格は無い。少なくとも俺はそう思っている。だからこれは、完全なる俺のエゴだ。俺が欲しい女を手に入れるために、女の家庭事情に踏み込んでお節介を焼く。捉えようによっては最悪の行為だ。それでも、そのことを自覚していても尚、俺はアデルを助けたかった。


「で、でも、いいんですか! 相手は貴族ですよ! 伯爵家なんですよ!」


 目に涙を浮かべながら言うアデル。


「伯爵家がなんだってんだ。そのくらいどうとでもしてやるさ」


「さっきの冒険者なんて目じゃないくらい強力な刺客を送ってくるかもしれないんですよ! 貴族に逆らったら国全体が敵に回るかもしれないんですよ!」


 両目から涙を流しながら叫ぶアデル。


「大丈夫だ。俺にはそれすら跳ね除けることの出来る力がある」


 始原の力は最強だ。貴族相手でも普通に勝てるだろう。搦め手に出て来られたら困るかもしれないけど、この世界に来てからまだ日の浅い俺にしがらみは少ない。


「……本当に、本当に助けてもらってもいいんですか……?」


 もう大泣きしながら、か細く呟くアデル。


「いいんだよ。……アデル、お前は俺が助けてやる」


「うっ……。うわああああん……」


 ついにアデルは声を上げて泣き出した。

 俺はアデルをぎゅっと抱き締める。童貞(今は処女だったか!)の俺には相当勇気の要る行為だったけど、なんとか抱き締めることが出来た。


「うっ……グスッ……」


 そのまましばらく、アデルが泣き止むまで俺は彼女を抱き締め続けていた。

説明回は書きやすいんですよね〜

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