第95話 鬼灯朽長の猛攻
視線を絡ませあう鬼灯と朽長。
長い沈黙のあと。
「私は、私はお兄様のお気持ちには応えられませんわ」
そりゃ、そういう発言になるだろうな。
そうなれば。
「分かっていたさ、そりゃ当然だわな。はははははっ」
朽長が不敵に笑いだす。
「だったら、もうなにも怖いもんなんてねえ!!」
奴の赤い鎧はさらに赤く染まりはじめる。
そして、形状も変わり、背中に羽のようなものが生える。
「これが俺の本気だ!」
真紅の鎧を身に纏った奴は空中を飛び回る。全く追いかけきれない!
視界を縦横無尽に動き回る。
そして、無数の白い光弾が奴の両手から放たれる。
機関銃のような音とともに雨あられと飛んでくる弾を避けることは不可能だ。
「きゃあああああ」
鏡美の悲鳴が響き渡る。あいつの鏡の鱗ですら、すべての光弾を弾き返すことができないようだ。すさまじい破壊力であることを物語っていた。
「鏡美!!」
「なに、よそ見をしている!」
気づけば真横に朽長が迫り、奴の右肩から大きな炎の玉が俺にめがけて放たれる。
近すぎる! 避けられない!
「危ない!」
アリアが俺と朽長の間に割って入ると、大きな炎の玉をまともにその身に受ける!
「うわああああああ!」
アリアの絶叫がこだました。
「アリア!」
彼女は炎を受け止めきったが、全身から煙を上げて、力なく俺の方に倒れこんでくる。
「アリア?! アリア?!」
だが、返事がない。
「鬼灯朽長! てめえええ!」
「来いよ、鳥羽! 会長が恐れるほどの力を見せてみろ!」
竜司が俺の力を恐れている?
にわかには信じがたい。
だが。
この男だけは赦せない!
叩き潰す!!
俺がサイコキネシスで朽長を捕らえようとする。
しかし。
奴の動きが速すぎて、捕らえることができない。
「これまでだ! 食らいやがれ!」
一気に距離を縮められると、朽長の両手の装甲から生えた剣が一閃。
俺の胸をバツの字に切った。
「ぐわああああああああああああ!!」
俺はあまりの痛みに叫んでいた。
叫びがとまらず、声帯がすりきれるまで叫び続けていた。
おびただしい血が胸の傷からあふれでる。
「なんだ、たいしたことないじゃねえか!」
勝ち誇る朽長に、俺は言い返すこともできない。
だが、俺の意識が失われることはなかった。
燃え上がる復讐心はこんなことでは消えることはない。
「な、なに?!」
朽長が慌てふためく。
俺を中心とする球状の結界の周りから黒い霧のようなものが吹き出しはじめる。
「ぐわあああああ」
朽長がその霧を受けて吹き飛ばされるが、なんとか態勢を立て直す。
「これが、会長が恐れていた力か?」
俺はアリアを抱きかかえると朽長を睨み付ける。
「決着をつけよう」




