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第94話 兄と妹

 マシンガンのような音が耳をつんざく。

 無数の白い玉が鏡美と鬼灯に襲いかかった。

 ‎着弾し土煙があがる。

 

 だが、土煙の中から大きな光の球が飛び出す。

 それは朽長めがけてとんでいく。

 ‎朽長は急速上昇でかわして、右肩の上に伸びる長い筒から赤い火の玉を打ち出す朽長。

 ‎龍の姿の鏡美がとぐろを巻いて、内部で鬼灯を守りながら、自らも光球を吐き出す。

 

 朽長と鏡美の真ん中で双方の玉がぶつかり爆発する。

 ‎俺はアリアと一緒に朽長に迫る。

 ‎朽長は左肩のこぶのようなものから黒いものを打ち出す。

 ‎避けようとする俺とアリアを、それは追尾してくる。

 ‎黒い発射物は空中で4つに分かれ、そのまま俺たちをつけてくる。

 逃げ切れない。

 ‎俺は集中して力を使う。

 そして、黒い4つの小さな物体をお互いに近づける。

 それらが互いに接触した瞬間。

 爆発が起きる。

 なんとか攻撃を避けきった。

 と思ったら、朽長の赤い鎧の一部が外れ、高速で接近してくるのが見える。

 朽長が叫ぶ!


「くらえ!」


 これでは、力を使おうとしても間に合わない。

 ‎飛んでくる赤い物体と俺の間にアリアが割って入る。

 そして、手でそれを受け止めようとするが、弾き飛ばされる。

 ‎彼女は後ろにいた俺ごと、落下していく。

 ‎俺は自分とアリアの体を浮かせることに最大限集中する。

 ‎地面に激突する直前でなんとか2人の体は宙に静止した。


 上空を見上げると鏡美、鬼灯の2人が朽長と対峙していた。


「みなわ、お前たちでは俺はとめられん! まだわからんのか?!」

「私は負けません! お兄様、私の全力を受け止めてくださいませ!」


 鬼灯の結界が球状に展開する。

 ‎その結界の周囲を銀の龍となった鏡美が取り囲む。

 ‎銀色の巨大な毬が出来上がって、表面に一つ空いた穴から鬼灯の炎が火柱のように吹き上がる。

 ‎炎柱が竜巻のようになって、朽長を襲う。

 

 見知った鬼灯の力ではない。

 ‎おそらく普段は絶対見せない彼女の最大出力なのだろう。

 ‎それを鏡美の体で反射、収束させることで増強している。

 ‎

 あの炎には物理的に人を傷つけることはできないが、朽長にとっては有効なはずだ。

 事実、炎にまかれている朽長の苦悶の表情がここからでも見てとれる。動きもほぼ止まっている。

 

 ‎あれだけ兄を恐れていた鬼灯がここまでの力を発揮した。

 

「ぐおおおおおおおおおおおお!」


 響き渡るのは燃え盛る火柱の音と朽長の苦しみに満ちた叫び声。  

 体を直接焼くことはなくても、主観的な熱は相当なもののはずだ。それでも気を失わずにいる朽長はある意味大したものだ。


「みなわ!」


 燃え盛る火柱の音でさえも朽長の叫び声をかき消せず、周囲に響き渡る。


「みなわ! 俺は、俺はお前が怖かった! なんでだか分かるか?!」


 いきなり何を言いはじめているのだ、朽長は。


「俺は、俺は、ずっと好きだった。兄妹なのにお前のことを女として好きになっちまったんだ。だから、お前にどう思われているのかいつもそれが気になってしょうがなかった」


 鬼灯の火柱が消えた。


「お兄様……」

「俺はお前がずっと好きなんだ! だから、鳥羽竜一が赦せなかった!」

 

 唐突な朽長の告白に誰もが驚いていただろう。


「返事を聞かせてくれないか」


 兄が妹を見つめていた。


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