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第85話 あと葉の全力

 俺の目の前には家戸あと葉の顔があった。

 接触した唇を離すと、俺の手はどういうわけか家戸あと葉の胸を触っていた。

 慌てて手を退ける。


「ちょっと、お兄ちゃん!! なにやってんの?! この場面でそんなことするとかどんだけ変態なの?!」


 鏡美に家戸姉妹の目潰しをさせて、その隙に家戸あと葉を押し倒して、キスしたあげく、どさくさに紛れて胸まで揉む……。

 鏡美の怒りはもっともだ。


 あと葉はさっきの光で目を潰されていながらも、少ししたら状況を把握したのか、顔を赤らめる。


 金属バットを奪うためとはいえ、さすがにかなり申し訳ない気分に陥る。

 だが、あと葉の行動にはまだ謎が残る。

 ‎なぜ、俺と恋人になったのか。

 ‎記憶をいじってそんなことをする必要がどこにあったのだろう?

 

 ‎それとも、俺に気があったのか?

 ‎それはさすがにないか……。

 ‎いや、俺じゃなく弟の竜司に気があるのではないか。

 ‎寝言でも弟の名前を呼んでいたくらいだし、それがもっとも考えられる。

 ‎しかし、だからと言って、俺と恋人ごっこをしてもなんの意味もないはずだ。

 ‎俺と竜司が瓜二つだとしてもだ。

 なにを考えているんだ、こいつは? 

 ‎それとも、記憶を読み取るには恋人のような親密な関係になる必要があるのだろうか。


 立ち上がるあと葉。

 ‎どうやら視力を取り戻しつつあるようだが、相変わらず頬を染めて、俺と目を合わせようとしない。

 ‎なんとも言えない変な空気だ。


「なにをしているんだ、竜一?」


 後ろのアリアは心なしか不機嫌そうだ。

 ‎まあ、変態のような行動をしたのを見て、アリアが上機嫌になるわけもない。


 ちなみに、アリアは咄嗟に目をつぶったらしい。

 そして、一時的に視界が奪われたさき葉を取り押さえている。

 いくら、壁に叩きつけられても、アリアに殴られてもダメージを受けない存在であるとはいえ、単純な腕力ではさき葉もアリアには敵わないようだ。

 だが、とたんにアリアの表情が曇る。

 なにがあった?

 どうやら、アリアがまた動けなくなったようだ。

 そして、さき葉は何事もなかったかのように立ち上がる。

 さき葉の体が占めていた空間が空になっても、上から押さえつけていたアリアの状態は変わらず、そのまま宙に浮く格好になった。


「悪いね、アリアさん」


 瞳を金色に輝かせ、笑顔のさき葉。

 だが、向こうが明らかに優位という状態ではない。

 それは鏡美も分かっていたらしく、銀の尾をさき葉に巻きつける。

 すると、アリアにかかっていた術が一瞬にして解けて、動けるようになったアリアは、下の床に顔からぶつかる。

 形勢は逆転した。


 俺とアリアが家戸あと葉に詰め寄る。


「さき葉はあの通り動けないし、お前もこのバットがなきゃ、さっきまでの見えない攻撃は繰り出せないはず。降参しろ!」

 

 だが、あと葉はこれまでに見せたことのないほど恐ろしい笑顔でこちらを見ている。


「私の力を……侮らないでください……!」


 瞬く間に彼女の周りにいくつもの光の塊ができたかと思うとそれらはみな姉のさき葉へと姿を変えたのだった。


 


 












 


 

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