表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

84/99

第84話 能力の弱点

 過去の記憶から姉を作り出した……。

 その張本人である家戸あと葉は微笑んでいる。


「姉さんは私の憧れでした……。でも私をかばって交通事故で……死んでしまいました……。ですから、私は姉さんを……記憶を頼りに作り上げました……」


 そうは言われても目の前の家戸さき葉は作り物とは到底思えない。

 ‎だが、龍となった鏡美に壁に叩きつけられたり、アリアの一撃をまともに受けても、傷一つ負わず平気そうにしているのを見るとやはり普通の人間じゃない。


 だが、そうと分かれば、妹のあと葉のほうさえ倒せば勝てる。

 しかし、アリアはさき葉に動きを封じられている

 ‎それは俺もほぼ動けないことを意味していた。

 ‎しかも俺たちはあと葉の結界の中だ。


 だとしたら鏡美しかまともに立ち向かえないが。


「お兄ちゃんたちを放しなさい!」


 鏡美の声が響くが、姉妹は俺たちを解放する気は全くない様子だ。

 ‎逆に。


「あなたこそ……降参してください。アリアさんも竜一さんも私たちの手の中……。あなたの大事なお兄ちゃんが……どうなってもいいのですか?」


 家戸あと葉に人質にされている。

 ‎これでは、鏡美も動くに動けないようだ。

 ‎降参するかどうか迷っているのかもしれない。


「降参なんかするんじゃない! お前が降参したら俺たちは負ける! そうなったらこいつにどう記憶をいじられるか分からないぞ!」


 俺は鏡美を鼓舞する。

 ‎鏡美が降参を思い止まってくれたらいいのだが。

 ‎なんとか家戸あと葉の能力がどういうものか分かれば勝機はあるかもしれない。

 ‎結界の範囲が狭い以外は、記憶の操作や読み取り、見えない攻撃、家戸さき葉を昔の記憶から複製、姉妹で謎の裂け目を空間に生み出す、という複数の能力を持つということしか分からない。

 ‎最後の謎の裂け目に関してはコラボ技のようなものだから、他の3つから考えるとして。


 この複数の能力を説明できる単一の能力とはなんだろうか。

 ‎過去や記憶に関連する能力なのは疑いようがないが。

 ‎そう思いながら、家戸あと葉を見ると金属バットが握られている。

 ‎なんであんなものを持っている?

 ‎部屋に入ったときから、あれを持っていた。

 ‎そう言えば、俺が食らったあの見えない攻撃はまるで金属の棒で殴られたような衝撃だった。

 ‎なにか関係があるのだろうか。


 あと葉は姉を記憶を頼りに作り出した。

 ‎だとしたら、打撃による衝撃を記憶を頼りに作り出すことはわけのないことなのでは?

 ‎見えない攻撃が過去の打撃を複製したものだと考えたら……。

 ‎ただ、それだとバットを持ち続ける意味が不明だ。


 そう考えているうちに妹あと葉が鏡美に告げる。


「さあ、降参してください……。あなたのお兄さんをボコボコにしてもいいのですか?……」


 あと葉をじっと見ていると金属バットをかすかに強く握った様子が確認できた。

 ‎その直後、俺の頬を激しい衝撃が襲う。


 歯が折れなかったのが不思議だが、痛みで声も出ず、頬をおさえる俺。


 だが、今ので確信した。

 ‎あいつの見えない攻撃はバットを握ることが必要なのだ。

 ‎おそらく、バットを握ることで打撃の衝撃に関する記憶を思い出すことが必要なのだろう。

 つまりバットを奪えば勝てる。

 ‎俺は頬を押さえながらもありったけの声をあげたのだった。


「鏡美! 姉妹の目を潰せ!」


 あの鏡美ならこれで通じると直感した。

 ‎鏡美が口から光を放つ。

 ‎俺は目をつぶる。

 そして、瞼さえ突き抜けるような光を感じたあと、瞼を開く。


 想定通り、姉妹二人が目を押さえている。

 ‎その隙をついて、俺は家戸あと葉に体当たりを仕掛ける。


「しまった……!」

 ‎

 金属バットが彼女の手から離れ床に落ちる。

 ‎だが、勢いあまって俺は彼女を押し倒してしまう。

 気がつけば俺と家戸あと葉の唇は重なっていた。


 ‎

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ