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第82話 家戸姉妹の謎

「降伏しなさい!」


 銀の龍となった鏡美の声が響き渡る。


 龍の鋭い視線の先に、家戸あと葉がいる。

 アリアに対する攻撃がやむ。

 家戸あと葉は両手をあげて降伏のポーズをとる。

 右膝をついて、息を切らすアリア。


「大丈夫か?」


 俺は彼女に肩を貸して、あと葉から離れる。


 有効範囲が狭いあと葉の攻撃は、上空の鏡美には届かない。

 一方、鏡美は光の球を吐き出すなど攻撃し放題だ。

 勝負はついた。


 だが、なにか釈然としない。

 今回、家戸あと葉は俺たちの記憶をいじくった他、俺の記憶を盗み見て、その情報を鬼灯朽長に漏らした。

 その事が分かっても残るこの違和感はなんだ?


 家戸あと葉は降参しているそぶりを見せてはいる。

 だが、彼女の紫水晶のような瞳は依然強い輝きを放っている。

 あれが敗北した者の目だろうか。

 嫌な予感がする。


 そういえば、姉のさき葉はどうした?

 家戸さき葉の記憶は最初に会ったときのもの以外、残っていない。

 鬼灯が家戸姉妹のことについて話したときに言っていたような気がする。

 家戸姉妹はいつも二人で行動すると。


 だが、今回はどうだろうか。

 逆にほとんど単独行動だった家戸あと葉。


 俺は叫ぶ。


「気をつけろ! まだ姉のさき葉が隠れているかもしれない!」


 すると、家戸あと葉は不敵な笑顔を浮かべて、彼女の足元の結界が光りだす。


 そして、結界から光の塊が飛び出すと人の形を取って、さらにまばゆさを増す。


 思わず瞼を閉じてから、もう一度光の塊のほうを見る。

 ふんわりカールした山吹色の髪に琥珀色の瞳が特徴的で、家戸あと葉によく似た少女がそこにはいた。

 家戸さき葉だ。


「やあ、うちのあと葉をここまで追い詰めるなんてね」


 なんともあっけらかんとした態度だ。

 いったいどうなっているのか。

 家戸あと葉の能力は記憶に干渉したりするもののはず。

 この場に瞬時に姉を呼び出すなんて空間転移も使えるのか?

 さっきの見えない攻撃といい、謎が多い。


 こうして目の前に姉も現れた以上、この姉妹との戦いは避けられない。

 にもかかわらず、俺とアリアはダメージが大きい。

 ここはやはり鏡美に頼るしか。

 妹のあと葉の能力もよく分からないのに姉の能力は未来予知としか聞いていないので、さらに不明点が多い。


「お兄ちゃん、大丈夫! 私がなんとかするから!」


 鏡美が姉妹を睨み付ける。

 すると姉妹はお互いに顔を見合わせると頷き合う。

 そして。


「展開!」


 勢いよく家戸さき葉が声をあげると、彼女の周りに結界が展開する。

 そして、姉妹はお互いの手と手を合わせる。

 そこに灰色とも銀色ともつかない煌めきが起きる。

 二人が合わせた手を離すと、手と手の間に小さな裂け目のようなものが生じる。

 どういう原理であの裂け目のようなものが生まれたのか分からない。

 二人の手が離れるにつれて、その裂け目は四角く広がり、そこから風が吹き荒れる。

 俺とアリアは半壊した家の壁にしがみつくが、激しさを増した気流は俺とアリアを引き離し別々にふき飛ばす。


「うわああああーー!」


 俺とアリアの声が重なる。

 そこに銀の龍となった鏡美が近づいてくると俺を頭でうまくキャッチする。

 同時に尻尾でアリアも拾い上げた。


 鏡美は大きく口を開けると、そこから巨大な光の球を姉妹めがけて吐き出す。


 家戸姉妹が少し手を動かすと、今度は裂け目がバキュームのように周りのものを飲み込み始めた。

 そして、裂け目は鏡美が放った光の球さえも吸い込んでしまったのだった。

 

 

 

  

 

 

 


  

 


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