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第79話 覗かれた記憶

 カラス色のおかっぱ頭に両眼、さらに黒の服のエルが手を伸ばしてくる。


「はやく! みんな手を繋いで!」


 エルの指示に従って俺はアリアの手を取った。

 エルはアルと俺の手を握る。

 ‎この感覚は、アリアと出会った最初の日に、あの廃屋と化した工場に飛ばされたときのものだ。

 ‎空間転移の結界。

 ‎俺たちは一瞬にしてその場から数百メートル離れた道路上に転移した。

 

「まだ手を離さないで」


 エルの声には先ほどまでの力はない。

 今の‎結界の使用で相当に疲れたものだと思われる。

 ‎だが、エルはそのままテレポートしようとしている。


「無理をするな、エル」   


 だが、俺の制止を無視して、エルはその後もテレポートを複数回続けた。


「ここは……?! まさか?!」


 最後についたテレポート先は研究所の中の模擬戦室だ。

 ‎見慣れた白い直方体の空間。

 ‎だが、天井も床も側壁も爆発のあとのような傷ができていた。

 ‎そして、部屋のほぼ中央に白衣姿の人影が倒れていた。

 ‎俺はテレポートで疲れたエルをアルに任せて、アリアとともに横たわっている人影のところに駆け寄った。

 やっぱりだ。

 ‎倒れていたのは叔父だった。

 ‎傷だらけだ。

 ‎

「叔父さん、しっかりしろ!」 ‎


「う……うう……竜一か……」


「叔父さん、どうしたんだ?!」


「ハハハ……。実はな、鬼灯朽長に急に襲われてな……。抵抗したけどSSランクは伊達じゃなかったよ……。アルとエルは連れ去られた」


 やっぱり朽長が。


「大丈夫だ。アルとエルならそこにいる」


 叔父は俺が指差す方向を見ると、安心したようにうなずいた。


「それは良かった……。あの2人を育てるのには苦労したからね。それはそうと、言っておかないといけないことがある」


「なんだ?」


 俺が聞き返すと叔父は珍しく神妙な面持ちになった。


「気をつけるんだ……家戸姉妹には……」


「家戸姉妹?」


「あの姉妹はやっかいだ、予想以上にな。妹は記憶に干渉できることはもちろん、記憶を見ることができるらしい。アルとエルのことが鬼灯朽長にバレたのは、あの妹がお前から記憶を盗み取ったせいだろう」


「な……!」


 その可能性をもっと考えるべきだった。

 

 ‎家戸あと葉は記憶を操作する能力があった。だが、記憶そのものを読み取る能力もあるようだ。

 その能力で竜司の弱点を突く具体的な方法を俺の記憶から読み取った。  

 ‎家戸あと葉が鬼灯朽長にこの情報を漏らせば、彼が竜司に戦いを挑んでもなんの不思議もない。

 ‎なにかモヤモヤとしていたのが繋がった感覚はあったものの、一体記憶をどれだけ覗かれたのか気持ち悪くて仕方がない。


 そう言えば!

 ‎俺は大切なことを忘れていた。

 ‎よりにもよってその家戸あと葉とともに鏡美を置いてきたのだ。

 ‎それも記憶をいじられている。

 ‎何かきっかけがなければ記憶が戻らないだろうし、逆に記憶を操作される恐れがある。

 ‎その状態なら鏡美は無防備も同じこと。

 鏡美が危ない!

 ‎

 ‎

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