表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

76/99

第76話 善悪の知識の実

「善悪の知識の木、だと?」


 鬼灯朽長は思った疑問をそのまま言葉に出したようだ。

 結界の力の起源が善悪の知識の実だと、以前叔父が言っていたことを思い出した。

 ‎その実がなる木、ということか。


「これから見せてあげますよ、鬼灯先輩」


 そう言うと竜司は木から銀色に輝く果実をもぎ取る。

 ‎銀の果実は徐々に形を変えていき、蛇の形になって、竜司の足元に下りていく。

 ‎それはアリアの水鏡の剣が変化した銀の蛇によく似ていた。

 ‎蛇は竜司の足元を円形に囲み、蛇の口は自身の尾を食む。

 ‎そして、銀の蛇は輝いた。

 竜司はまばゆい光に包まれ、やがて光が消えると、現れた姿は赤い鎧姿だった。

 ‎その鎧は鬼灯朽長のそれと瓜二つであった。


「お前、その格好は?! どういうことだ?」


 鬼灯朽長は驚愕の声をあげる。

 ‎竜司は淡々と語りだす。

 ‎

「これが善悪の知識の実。

 夢想結界の起源。

 ‎これを手にすれば結界の能力を得ます。

 ‎1人で2つ、3つと能力を増やすこともできます。

 ‎他人と同じ能力を得ることも不可能ではありません」


「ふ、ふざけんな!!」


 壁にうまっていた鬼灯朽長が再び空中に躍り出る。

 ‎そして、結界の力をさらに開放すると傷ついた赤い装甲が修復されていく。


「この鎧でお前を倒す。どっちが本物か白黒つける」


 睨み付ける鬼灯朽長に対して竜司は微笑む。


「鬼灯先輩と同じ力を手に入れて、鬼灯先輩がどういう人なのか分かりました」


「何言ってやがる?! なんで俺のことが分かるって言うんだ?!」


「夢想結界は心をうつす鏡。よく観察すれば人の心の中を見抜けます。たとえば、鬼灯先輩、あなたは近しい人をとても恐れている。  おそらく妹のみなわだ」


「?!」


 鬼灯朽長は驚きのあまり声もでないといった感じだ。


「みなわに受け入れられたいのに、弱い自分が拒否されるのが怖いから、こんな厳つい鎧を身に付けている。

 鬼灯先輩がそんなこと考えてるのが分かったりするんですよ」


「て、てっめえ!!」


 怒り狂う鬼灯朽長が竜司を睨みつける。


「鬼灯先輩、むきになる必要はありません。誰でも人に見られたくない、自分で見たくもない感情があったりするものですよ」


「もう我慢ならねえ!」


 鬼灯朽長は目にも止まらないスピードで竜司との間合いを一気につめて、殴りかかる。

 だが、竜の頭から飛び出した無数の枝が重なりあって壁のようになると、鬼灯朽長の前に立ち塞がった。

 

「ちっ!」


 朽長が枝の壁の前で一瞬動きを止めた隙に、四方八方から他の枝が伸びてきて取り囲み、彼の動きを封じる。


「鬼灯先輩、少し話をしましょう。

 あなたはこの木に選ばれ、それほどの力を与えられたのだから、知る資格はあるでしょう。結界の奥義を」


「奥義だと?」


 鬼灯朽長が訝しげな表情をする。


「先輩、今から奥義をお話しましょう。

 この善悪の知識の実によって、人は善と悪を知る。

 ‎つまり、この世界を善と悪の2種類のものでできていると考えます。

 ‎そして、結界を用いることでこの世界を結界内と結界外という2つに分け、結界内を善として自分をそこに置く。

 ‎これこそが結界の奥義」


 竜司の言葉を聞いた俺は、心の底からどよめいた。

 ‎そして、俺はアリアを見て、そこに自分の心を見たような気がした。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ