第71話 家戸あと葉3
竜司を倒してほしいという家戸あと葉の言葉は、俺には到底信じがたかった。
「それはいったいどういうことだ?」
当然のごとく口をついて出る質問。
「姉さんを解放して……もらいたいんです……。
姉さんは……竜司様の弱点を補うために……竜司様の側をほとんど離れられないんです」
竜司の力で防げないのは、偶発的な事故などだ。
それが竜司の弱点。
それを家戸さき葉が予知して回避する必要がある。
結果としてほとんど竜司とともに行動しなければならない。
そのような状態から姉のさき葉を解放してほしいというのは決して分からない話ではない。
「副生徒会長にお前の姉が狙われているというのは本当なのか?」
俺が訊ねると家戸あと葉はぼそぼそと話し出す。
「はい……。
副会長は姉が会長の弱点を知っていると考えていますから……」
「そう言えば、姉のさき葉はどこに行ったんだ?」
「姉は……実は……さらわれました、3日前に副会長に」
思いもよらない発言に俺は混乱してきた。
「3日前に副会長にさらわれた?!
お前の姉は予知能力があるんだろ?
なんでさらわれるんだ?」
「予知ができても、さらわれる未来を回避できなかったのです……」
副会長の強さを考えれば、予知しても逃げ切れない可能性は十分あるか。
だが、少しひっかかる。
「それが本当なら俺たちの記憶を奪ってる場合じゃないはずだろ?
どういう理由か説明しやがれ!」
「それは……副会長に脅されて……今日の真夜中までこの家にあなたがたをいさせろと」
「副会長がどういう理由で俺たちをここにいさせようと?」
「それは……よく分かりません……」
あと葉は消え去りそうな声でそう答えた。
「アリア、どう思う?」
「私はこいつの話を信用できない」
「だが、仮に本当だとしたら」
と、そこまで言いかけて俺は1つの可能性に気づく。
「どうした、竜一」
夜の学園だと誰にも邪魔されない。
副会長はおそらく、家戸さき葉から竜司の弱点を聞き出し、あと葉を使って邪魔になる俺たちの動きを封じ、今夜戦うつもりなのではないか。
竜司と。
そんな直感が働いたのだ。
何か釈然としないところはあるが、俺たちは学園に向かうことにした。




