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第7話 結界の謎に迫れ

 空中で感電したように痙攣するアリア。

 それを見て俺は弱点が敵にばれていることに気づいた。

 空中のアリアと俺の距離を2メートル以上に引き離そうとすることで、アリアは俺の結界の境界壁に接触し、ダメージを受けている。

 つまり、敵はアリアに直接攻撃をかけているわけではない。

 体を宙に浮かせているだけなのだ。

 しかし、なぜ弱点がばれた?

 ‎昨日の会話が聞かれていたのか。

 ‎だとすれば、考えられる人物は?


「さすがに鏡美じゃないよ」


 聞き覚えのあるどこか緊張感のない男の声がした。

 後ろを振り向くと10メートルほど離れたところに3つの人影があった。

 ‎大人の男とその左右に子供が2人。

 ‎

 ‎子供は2人とも女の子で10歳くらい。 

 左の子が黒、右の子が白の簡素な服を着ている。

 あとはカラス色の髪のおかっぱ‎頭で瞳の色が黒いのも共通している。

 ‎

 ‎一方、大人の男はよく見知った男だ。

 ひょろっとした体に白衣の中年。

 尖った鼻と顎と眼鏡。

 ‎オールバックにして肩まで伸びた髪。


「叔父さん?!」


 ‎そう、研究者の叔父だった。


「もういいよ」


 ‎叔父がそう言うと、白い服の子供はアリアに向けてかざしていた手を下げる。              

 すると、アリアは宙から落ちてくる。 

 ‎傷ついたアリアは‎そのまま床にもろに激突し、けたたましい音があたりに響いた。


「大丈夫か、アリア?」


「ああ……。大したことはない……」


 そう言いながらも彼女は息も絶え絶えといった感じだ。

 アリアに肩を貸して、なんとか支える。

 ‎叔父は咳払いをして自分に注目させる。

 ‎

「私はまどろっこしいのが嫌いだから、単刀直入に言うけど、君の部屋には盗聴器、監視カメラをしかけてあってね」


「えっ、まじかよ!?」


 まあ、それくらいやりかねない人ではある。


「君は大切な研究サンプルだからね。

 常にモニタリングしておきたいんだよ。

 でも、その甲斐はあった。すばらしいね! 

 人間を召喚する結界を発現するとはね。ハハハハ!」


「この人がお前の叔父殿なのか、竜一?」


 丁寧な言葉こそ使ってはいるが、アリアは怒りの眼差しを叔父に向ける。

 これだけ痛めつけられたのだから、無理もない。

 だが、そんなアリアの様子を全く気にとめず、叔父はアリアに近づく。      

 

「とりあえずだ。

 うちの研究所のとびきり優秀な空間転移の結界をもった被験体で君たちをここに連れてきた。

 で、さっきの江田島くんでまずアリアくんの実力を見せてもらおうと思った。

 だが、空間転移の際、離れたところから二人を全く同時には移動させられなくてね。

 それで二人の距離が2メートルを越えてしまった結果、アリアくんはかなりの痛手を負ってしまったようだ」


 ずぼらなやり方に俺も腹が立った。


「やり方が強引すぎるって、叔父さん!」


「私も納得いかんぞ! なぜこのような真似を!」


 アリアも俺に同調した。

 叔父は再び咳払いをする。


「君たち、のんきだな。

 人を召喚する結界なんて前代未聞なんだ。

 君たちは最高の研究サンプルなんだぞ。 

 そして、こうして簡単に拉致されてモルモットにされてしまう。まずはそれが伝えたかったんだ。そして」

 

 ここで意味ありげにいったん言葉を切る叔父。

 アリアを見る彼の眼鏡が怪しく光る。


「アリアくん、君が来た世界の話が聞きたい。たとえば、こういう生き物は君の世界にいたかな?」


 そう言って、叔父は白衣のポケットから1枚の写真を取り出す。

 その写真にのってる生き物らしき存在の姿に俺は驚いた。

 ‎だが、アリアはそう驚いた様子もなく頷いた。

 ‎

‎「ああ、私の世界に確かにいる」

 ‎

 頭に2本の角がはえ、黒っぽい鱗で全身が覆われ、翼のはえたそれはまぎれもなく空想上の生き物であるドラゴンだった。


「これはとある人物に発現した結界で召喚された生き物だ。

 竜一、これについてどう思うかね?」


 このとき、俺は何も分かっていなかった。

 このドラゴンが自分にとって何を意味しているのかということを。

お読みくださってありがとうございます!

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