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第69話 家戸あと葉

 家戸あと葉にどういうことか問いただすのでもよかったが、俺は今は敵の術にかかったふりをすることにした。

 ‎

「なんでもないよ、あと葉。ちょっとだけ頭が痛かっただけだ」


「そうですか、ならいいのですが」


 ほどなくして再び眠りにつく家戸あと葉。

 ‎さっきまでかわいいとしか思えなかった顔が、憎たらしくさえ見えてくる。

 とりあえずアリアおよび鏡美と連携を取るためにも、彼女たちの記憶を取り戻して、対応しないと危ない。

 記憶を知らない間に変えられるなんて恐ろしい。


 次の日の放課後、家戸あと葉が生徒会業務を行っている間にアリアと二人きりになった。

 ‎屋上でまずアリアと話す。


「記憶を……?!」


「そうだ、それで1週間の間に家戸あと葉が俺の恋人になりかわった」


 アリアはさきほどから頭が痛むらしく顔をしかめながら、しかし納得するようにうなずきながら、俺の話を聞いていた。


「なるほど。そうか、竜一。違和感の原因がはっきりした」


 アリアの記憶が戻ったのを十分確認してから、俺は今後の方針を話した。


「それでだ、俺はこのことはあと葉にはバレないようにしたい。

 記憶を書き換えてくるヤバいやつだ。

 ‎バレないようにして敵の様子を探る。

 ‎忘れさせられていたが、姉の家戸さき葉は何をしているのかも確認しないと」


「そうだな、あとは鏡美の記憶も戻さないとだな」


 だが、あと葉がいないところで、鏡美と会うのは思いの外、難しかった。

 ‎あと葉と鏡美はともに生徒会に拘束されることが多かったからだ。


 


 結局この日、俺はあと葉がいないところで、鏡美とは会えなかった。

 ‎もうすぐ寝る時間だ。


 家戸あと葉は俺の部屋の窓から月を眺めていた。


「今日も月明かりがきれいですね……」


 窓の外を見たまま、話しかけてくるあと葉。

 表面的には記憶を取り戻していることをバレないように振る舞わないといけない。

 ‎よく考えれば、どこまで俺のことが聞き出されたのかも分からない。

 ‎かなり慎重に接する必要がある。


「ああ」 ‎ 


 俺はなんとも気のない返事をしてしまう。

 しかし、家の中にあがりこんで、好きでもない男の隣で平気で眠れるこいつの神経はかなり図太い気がする。


「竜一さん?」 ‎


「なんだ?」


「あなたにとって……命よりも何よりも大切なものはありますか?」


「えっ?」


 突然の質問に俺は動揺した。

 ‎  

「命をかけてでも……守りたいものや、これさえやればたとえ死んでもかまわないと思えるものは……ありますか?」


「……いきなりなんだ?」


 意図が分からず、答えられないうちに彼女は続けて問いを投げかけてくる。


「では……こう訊きましょう」


 そこで家戸あと葉はこちらを振り返る。


「今でも復讐がお望みですか?」


 眼鏡の下の紫の瞳があやしく光っていた。

 ‎










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