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第68話 違和感の正体

 なにかがおかしい。

 ‎そう思うのだが、なにがおかしいのかは分からない。

 毎日はとても楽しい。

 ‎学校に行っても、B組内で事実上トップの扱いになっているので居心地はいい。

 ‎鬼灯とは以前付き合っていたからかさすがに話しにくい。

 ‎だが、正直、あまり鬼灯と付き合っていた実感がない。

 ‎失礼な話かもしれないけど。

 ‎

 ‎他の生徒には今は鏡美と付き合っていると誤解されていた。

 ‎だが、当の鏡美すら俺と付き合っていた感覚はないらしいので、周囲の勘違いに過ぎないだろう。

 ‎なんといっても、俺には家戸あと葉という最高の恋人がいるのだ。


 放課後、あと葉の生徒会の仕事が終わるまで、俺は図書室で勉強し、彼女を待っていた。

 ‎当然隣にはアリアがいる。

 ‎

「少し話があるんだが」


 そのアリアが小声で話しかけてくる。

 ‎当然図書室で私語禁止なので、俺とアリアは屋上に上がった。


「なんだよ、アリア?」


「竜一、私はなにかがおかしいと思うのだが、お前はなにか感じないか?」


 アリアも似た違和感を感じていたらしい。


「俺もなんか変だと思う。だけど具体的に分からないんだ。ただ、今の状態には満足しているんだ」


「そうか、ではこの違和感を放置するつもりなのか」


 アリアは釈然としない様子だ。

 ‎分からなくはない。

 だが、俺は今満たされた気分だ。別に無理に違和感について追及しなくてもいいかと思えてしまうのだった。


 そして、あと葉と待ち合わせると、いつものように一緒に家に帰る。

 おとなしくて控えめでこんなかわいい彼女は今後できないだろうと胸を張って言える。

 ‎だが、とかくうっとうしいのが隣にいる金髪の女騎士様だ。

 ‎戦いでは頼りになるが、あと葉との交際においては、とにかく邪魔で邪魔で仕方がない。

 ‎だが、俺から2メートルしか離れられないので、つねに側にいるしかない。

 ‎普通ならこんな問題を抱えている時点で交際が破綻しかねないが、あと葉は優しいのでなにも言わない。


 日も沈んで暗い夜道、俺たち3人は帰る。

 アリアが横にいるのも知ったことじゃないとばかりに、俺とあと葉は手を繋ぐ。

 ‎

「竜一さん、恥ずかしいです」


 そう言いながら照れるあと葉の表情は抱きしめたくなるほど可憐だ。

 

 

 家に帰って、寝る時間になった。

 ‎ベッドで横たわる俺の隣にはあと葉が眠っている。

 ‎眼鏡をはずし、三つ編みをほどいた姿も素敵だ。

 寝顔がなんともかわいらしい。

 ‎感じていた違和感などやはりどうでもよくなる。

 

「竜……さ……」


 寝言でも俺の名前を呼んでいるのか。

 ‎いとおしくてたまらない。


「竜司……様……」


 竜司様? 

 ‎今、あと葉の口から竜司様とはっきり聞こえた。

 ‎竜司。

 ‎誰だ……。

 ‎竜司、竜司、竜司。

 ‎その名前を聞くと俺は腹の底から憤りが沸き上がるのを感じた。

 ‎

「うう」

   

 頭が痛くて思わず声がもれる。

 俺の声であと葉が目を覚ます。


「竜一さん? 大丈夫ですか?」 


 俺は。俺は。

 ‎全てを思い出した。

 何がどうなっていたのか。

 ‎どうやら記憶が都合よく書き換えられていたらしい。

 そして、記憶を書き換えたのはおそらくこの女だ。


「あと葉」


 俺は家戸あと葉をにらみつけた。


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