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第64話 大いなる力

 俺とアリアは放課後すぐに研究所に向かった。

 ‎鏡美は今日は部活やら生徒会のことで忙しいらしく、同行できなかった。


 例によって、叔父の研究室に通される。

 ‎叔父は椅子に座り、デスクに頬杖をついていた。

 ‎

「よく来たね、竜一」


「叔父さん、何が分かったんだ?」


 叔父は深くため息をついてから、話を切り出した。


「君が魔王と会って得たという能力のことなんだがね。

 過去のデータをより深く解析した結果、重大な事実が判明した」


 単刀直入に話すのを好む叔父にしては、ずいぶんと回りくどい物言いに感じる。


「なんだよ、そのもってまわったような言い方。もっと分かりやすく言ってくれ」


「お前が新たに得た力、それは全て結界によるものだ。

 つまり、アリアくんの召喚、異世界からの帰還、異世界からエネルギーをこちらに移すこと、サイコキネシス。

 ‎君は少なくともこの4つのことを行ったが、これは単一の力だと分かったのだ」


「単一の力? そうとは思えないが」


 この4つは、あまりに違いすぎて、1つの力によると説明されても納得しにくかった。


「この4つに共通点がある。それは物の場所を移動させる能力だということだ」


「物の場所を移動……?!」


 確かにそう言われてみれば。

 だが、大きな疑問が残る。


「俺の結界は2メートルのはずだろ?! 

 アリアが普段動ける範囲は2メートルだけど、それ以外は2メートル以下の射程じゃ説明のつかない!」


「そう、そこがとても重要な部分だ。

 データ解析の結果、君は結界の半径を変化させていることが分かった。それも瞬間的にだ」


 なんだ、それ。

 全く意味が分からない。


「結界の半径を自由に変化させることができる能力者はほぼ0だ。

 例外として私が知っているのはお前以外には鬼灯朽長だけ。

 君はそれを一時的にだが、やってのけた。

 Sランク能力者すら到達できない地点に君は立ちつつある。

 ‎どうだね、気分は?」


 急に俺を持ち上げるような叔父。俺はなにかふわふわしたような異様な感覚にとらわれた。

 ‎信じられない。

 ‎同時にいまだその力を使いこなせない自分に苛立ちを感じた。 

 ‎しかし、それだけじゃない。

 ‎なにか手放しに喜べない。

 ‎

「よかったじゃないか、竜一」


 隣のアリアが笑顔で言う。


「お前は私に守られるのが嫌だったはずだ。お前自身が私より強くなりつつある。お前が望んでいたことだ」


「ああ」


 だが、心はなぜか晴れない。

 ‎力がまだ自由に使えないことも理由ではあるが。

 ‎

「どうした、浮かない顔をして」


 アリアが心配そうに尋ねてくる。

 ‎

「大丈夫だ」


 そう言いながら俺は震えている手でアリアの手を握った。

 アリアはなにも言わず優しく握り返してくれた。


 思い返せばこの言い知れぬ不安こそがすべてのはじまりだったのかもしれない。




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