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第61話 アルとエル

「この二人が俺の子供だって……?! どういうことだ?」


「実はな、この2人は、お前の細胞をもとに作ったんだ」


 叔父はいけしゃあしゃあとすごいことを言ってのけた。


「なんだよ、それ?! どういうことだ?」


「いくらなんでも、やることむちゃくちゃだよ、パパ……」


「ん? どういう意味だ? サイボーってなんだ?」


 鏡美は呆れながらももう慣れてるという感じがする。

 ‎一方、アリアはそもそも意味が分かっていないっぽい。

 ‎アリアのいた世界では科学が発達してるとは思えなかったので、不思議はではないが。


 というか俺の細胞からクローン人間みたいなものを作るなんて、俺はそんな話を当然聞いていない。

 俺は叔父の胸ぐらをつかんで、説明を求める。


「竜一、君の能力がどうして発現しないのかを調べるために私がとった最後の策がこれなんだよ」


 白々しいな、おい。なにが最後の策だよ。

 仮にそれが本当なら俺の承諾を取るはずだろう。

 ‎承諾した記憶はもちろんない。


「あんたには倫理観とかそういうものはないのか?」


 正論を言ってみるが、聞くだけ野暮だったとすぐに後悔をする。


「倫理観という名の発想の縛りが科学の進化を妨げているとは思わんかね」


 この開き直りぶりにはあきれを通り越してもう尊敬の念すら覚える。根っからのマッドサイエンティストだ。


「科学の発展のために個人のプライバシーやらが無視されるのはおかしいって聞いたことあるぞ!」


「意外と勉強してるじゃないか、感心したぞ、竜一!」


 やたらとオーバーなジェスチャーと抑揚を添えて言う叔父。

 ‎勉強しててあんたに誉められたのははじめてだ。

 そこで、2人をじっと見てみるが、俺に特に似ているわけでもないし、俺の細胞から作られたとはにわかには信じがたい。



「でも、俺の細胞から生まれたからってどうして、この二人が助っ人になるんだ?

 そりゃアルは強いけど、でもBランクなんだろ。

 ‎エルって子は長距離転移できるみたいだけど」


 俺の疑問に叔父は自慢げに答える。


「Sランクのエルはともかく、確かにアルはランクは高くない。

 だが、この二人はお前の結界と似た特徴を持っている。

 ‎竜司の力に耐性があると思われる。それだけではない。

 ‎この二人は敵意なく相手を攻撃できるように訓練されている」


「敵意なく相手を攻撃できる?!」


 そんなこと可能なのか。

 ‎一体どんな訓練を行ったのか。

 ‎聞きたい気もするがろくでもない内容のような気がするからやめておくことにした。

 叔父は眼鏡を触りながらさらに続ける。

 ‎

「彼女たちをうまく使えば竜司に一泡ふかせることができるかもしれない。

 先に言っておくと竜司を倒すためにこんな訓練を施したわけではないのだ。

 ‎そんなことをしていたら私はとっくの昔に死んでいただろうな、ハハハ」


 それもそうだな。

 と、ここでふと疑問に思ったことを切り出す。


「そう言えば、なんで今日は頭痛が起きないんだ? こんな竜司を倒すための話みたいなのをやってたら、今頃頭痛で俺もあんたも苦しんでるはずだろ?」


 叔父は顎をさすりながら答える。


「そう、それなんだがね。ここにお前とエルとアルが揃っているからかもしれん」


「それでなんでそんな効果があるんだよ?」


「お前たちの結界は互いに似通っているために効果が共鳴・増幅しているのだろう、双子などでそういう例は割りと見かけるものなんだ」


 そういうものなのか。あまり詳しくはないが、ありそうと言えばありそうではあるな。なんとなく納得しておくことにする。



‎「そう言えば、竜一が魔王に会ってから使えるようになった能力は、この2人のサイコキネシスやテレポートに似ているんだ。

 その方向からも調べたいところだ。とりあえず対竜司の作戦会議といこうか」



 その後、俺とアリアと鏡美の3人は家路についた。

 鏡美は俺と腕を組んで離さない。

 ここのところ、アリアと俺が接近すると鏡美がにらみつけるので、アリアは遠慮して結界の隅に追いやられている有り様だ。

 起きてる間中、そんな調子なので、アリアも鏡美に負けじとにらみ返してるし、アリアもどういうわけか俺にくっついてくる。

 つまり、アリアと鏡美に挟まれて両手に花という状態だ。

 普通ならば喜ぶべきことなのだろうが。

 

 そうして、家の付近に迫ったとき、聞き慣れた声が後ろから飛んできた。


「久しぶりに会いに来ましたら、ずいぶんと楽しそうにやっていますのね」


 街灯が照らす人影は栗色の髪を特徴的な縦ロールにしたお嬢様。

 鬼灯(ほおずき)だった。



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