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第53話 キス

 鏡美と俺のキスはしばらく続いた。

 しかも舌まで入れてきやがる。

 俺は戸惑うばかりでされるがままだった。

 やがて、鏡美が俺の唇を解放する。


「か、鏡美、いったいどういうつもりだ?」


「好き。私はお兄ちゃんのことが好きなの」


 そう言うと鏡美は再びキスをしてくる。

 また舌がねじこまれてくる。 

 彼女の舌先が俺の前歯の裏側に当たるとなんともしびれそうな感覚になってくる。


 長いキスのあと、彼女は俺にのったまま上体を起こし、俺の右手を取ると。

 自分の胸に押しつける。

 アリアほどではないがその感触は鏡美が確かに女の子であることを示していた。


 妹としか見ていなかった鏡美が突然女の子として意識させられるようになっていく。


「お兄ちゃん、私ならずっと側にいるよ。

 たとえ、お兄ちゃんが力があっても無くても側に居続けられる。

 復讐がしたいならなんでも手伝う。

 どんなお兄ちゃんだろうが、受け入れられる」


 真剣なまなざしの鏡美にひたすら圧倒される。


 そう言えばアリアは、と思って横をみると、アリアはじと目でこっちを見ている。

 顔は真っ赤だ。


「どこ見てるの? お兄ちゃん」


 そう言いながらさらに自分の胸に俺の手を押しつけてくる。

 ‎アリアはずっとこの光景を見ている。

 ‎俺はどうしたらいいんだ。

 ‎また、鏡美が顔を近づけてくる。


「待った、アリアが見てる」


 そう言うと鏡美は微笑む。

 ‎なぜか、普段の子供っぽい笑顔ではなく、どこか色気のある妖しい表情。


「見せつけてあげたらいいよ」


「無茶言うな」


「お兄ちゃん、私と付き合って」


 これが鏡美の心からの告白だ。

 ‎いきなりの告白ではあるが、以前から気持ちはあったのだろう。 それはこういうことにほとんど関心を示してこなかった俺にでも分かる。

 ‎これはいいかげんに扱ってはいけない。

 ‎俺のなかでは妹としか見れない部分も大きいが、本当に向き合って確認する必要がある、そんなふうに俺は考えた。


「わかった、じゃあ試しに付き合おう」


 鏡美のそのあとの喜びようは凄かった。


 そうして、付き合うようになった俺と鏡美。

 相変わらず妹みたいな感覚は抜けきらないが、家のなかでは鏡美はアリアに負けないくらい俺と一緒にいようとした。


「お兄ちゃん、どうしてアリアさん、連れて帰ったの? 向こうの世界に置いてくれば、いろいろと丸く収まったじゃん」 


 なんてアリアを牽制するようなことも言ったりした。


 鏡美からしたらアリアは邪魔なのだ。

 その態度があまり露骨なものだから、アリアもいい顔はしなかった。


 しかし、俺はなにをやってるだろうか。

 ‎今度弟と鬼灯をかけて戦うことになっているのに、その鬼灯と別れて、鏡美と付き合いはじめてしまった。

 ‎俺は自分の心がよく分からない。


 デートの際、鏡美はアリアに直球の質問を投げた。

 

「アリアさん、お兄ちゃんのこと、どう思ってるんです?」


‎ 突然修羅場を俺の周囲に召喚しないでほしいものだ。

 ‎

「どうって、恋愛対象として見てるいるのかということか?」


「はい、そうです」


 どこか困っているアリアと、なんとも愛想のない言い方をする鏡美。


「男だとは意識しているが、恋愛感情はない。

 だが、こいつがこれまで置かれた状況から、復讐には手を貸そうと思う。

 そんなところだ」


「へぇー。じゃあ全然好きではないってことだね」


 鏡美の返事はどうも意地悪く聞こえてくる。


「そういや、お兄ちゃんはアリアさんのこと、どう思ってるの?」


 今度は唐突になんだ? と思わず言いたくなる。


「どうって別に。女の子だとは思うけど、恋愛感情はないよ」


「えええ?! 嘘くさぁ。こんな美少女でスタイルもいいのに恋愛感情ないとか絶対ありえないでしょ?!」


 なんなんだこいつは。

 そう思ってるなら質問してくんな。


「じゃあ、ほんとになんとも思ってないなら、私の目の前で抱きしめあって!」


 はぁ? なんだそのわけの分からない要求。


「ほら、はやく」


 鏡美に促されて、俺とアリアは向かい合った。


「特別許可で今は抱き合うの許すから」


 そう言われ、俺はアリアと抱きしめあった。

 胸の高鳴りがやばい。こいつこんなに華奢な体していたのか。


「はい、ストップストップ!」


 鏡美が中断させる。

 そして、不機嫌そうに言う。


「二人とも怪しいなあ。なんとも思ってなかったらさっきみたいに意識しないと思うけどなあ。よし、だったらキスして」


 なにを言い出すのか、鏡美。

 いくらなんでもそれは無茶ぶり。


「なんとも思ってなかったら、ただ粘膜の接触でしょ、キスなんて。そこで意識するとしたら怪しいってことだよ」


「そんな無茶な!」

 

「鏡美、いくらなんでもそれは!」


 俺だけではなく、いつもは静かなアリアさえ少しうろたえている。


「いいからキスしろ!」


 ふざけてからかうような、でもどこか逆らうことを許さない口調の鏡美。



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