第50話 王との対談
「やあ、兄さん」
弟の竜司は鬼灯の家に上がり込むと、さも当たり前のように俺とアリアのいる部屋にやってきた。
しかも1人ではなく、2人の女の子を連れている。
その2人は瓜二つというほどよく似ていた。
だが、髪と瞳の色が違う。
向かって左側の女の子は髪も瞳も黄色で、髪は長く軽くウェーブがかかっている。
向かって右側の女の子は髪も瞳も紫色で、3つ編みをして丸い眼鏡をかけている。
ともに結界学園の制服を着て、ブレザー姿。
身長は鏡美よりもやや小さいくらいか。
「あの2人が生徒会の会計と書記をやってる家戸姉妹ですわ」
鬼灯が耳元で俺にささやく。
あの2人も障害となるわけか。
鬼灯から簡単に能力の内容は聞いてはいるが、どうもはっきりしない。
それにしても頭が痛い。
どういうわけか、この弟の前だと。
「どうしたんだい? 兄さん。顔をしかめているけど。頭が痛いのかな?」
こちらことは見透かしているぞと言わんばかりの余裕の笑み。
「お前、なにしに来たんだ?」
「兄さんに会いに来たんだ」
「俺はお前の顔なんて見たくねえ!」
また頭痛がひどくなる。
「それは知ってる」
「ってかなんで、俺がいるって分かった?」
竜司は後ろの2人を指差しながら言った。
「あの2人のうち、黄色いほうには予知能力的なものがあってね。兄さんがここにいることが分かったんだ。少し話をしないか、兄さん。」
「お前と話すことなんかなんもない」
「兄さん、なに考えてる?」
全てが分かっていそうな顔でそれを訊ねてくるところが、いけすかない。
「お前は心が読めるんだろ? 俺のことはお見通しって感じじゃないか?」
「心が読めるわけではないけど、大体わかるよ。兄さんは僕を倒したくてしょうがない、というくらいは分かる」
「お前、おちょくってんのか!!」
こいつの浮かべている微笑みを苦痛に満ちた顔にしてやりたいと俺は心に誓うが、そうするとますます頭痛がひどくになる。
「竜一さん、大丈夫ですの?」
俺がしきりに頭をおさえるので、鬼灯が心配してくれる。
そんな鬼灯を見て、竜司は話を続ける。
「そう言えば、鬼灯さんは兄さんと付き合ってるらしいね。僕は君のことか気に入っていたのに、どうして僕からの誘いを断った?」
「誘い?」
俺が訝しげな顔をして、弟に問う。
「兄さん、彼女に僕は告白したんだ。
なのに彼女は断った。
好きな人がいるからと。
それで、兄さんと付き合った。
うらやましい限りだよ。だからこそ」
弟は言葉をそこで切って、続けた。
「僕は兄さんが赦せないんだ」
「ぐわああああああ!」
俺は絶叫していた。
割れるように頭が痛い。
と、突然鬼灯が倒れた。
以前、鬼灯から弟のことを聞き出そうとしたときに似ている。
「兄さん、彼女をかけて、今度僕と結界戦しないか?」
俺はその言葉に耳を疑うのだった。




