第47話 極めしもの
副会長、鬼灯朽長は俺を凝視する。
視線から強烈な憎悪を感じる。
こいつは間違いなく俺を嫌ってやがる。
まあ俺はこれまで人から嫌われることばかりで、逆に好かれることはほとんどなかったから、珍しいことではない。
しかし、こいつから感じる嫌悪感は尋常ではない。
なにか原因があるのか。
俺を突き刺すくらいの勢いでにらみ続けたあと、隣のアリアに視線をうつす。
そして、副会長は口を開く。
「妹が世話になってるらしいな。付き合ってるんだろお前ら?」
「はい、妹さんとお付き合いさせてもらってます」
「こんな金髪美女がいつも側にいたら、俺の妹でも霞んでしまうな」
その言葉で、なんとなく分かった気がした。
アリアを連れながら大切な妹と付き合ってるのが許せないといったところなのだろう。
「彼女は俺の側から離れられないというのがありまして」
「そんなことは分かってんだよ! お前は校内じゃ有名だからな。まあ俺はお前のことはその前から知ってるけどよ」
副会長は不意に俺の胸ぐらを掴む。
「なにをするんですか?」
俺の問いはまるで聞いていないように口を開く。
「これから訊くことにはっきり分かるように答えろ!
B組を傘下において、その次はSAに入ってくるんだろ?
お前の狙いは会長か?」
かなりずけずけと訊いてきたな。
ここは宣戦布告といくか。
「はい、俺は会長の竜司、弟を倒します。そのために障害となるなら、あなたも」
「ほぉ! お前、案外度胸座ってるところあるな。俺に直接喧嘩売るとはやってくれるじゃねえか!
それも俺のことを会長戦の前哨戦としか思っていやがらないってか。
だが、1つだけ教えてやる!
SランクとSSランクの間には、FランクとSランク以上の差がある。
お前には微塵の勝ち目もない」
俺の力をこいつは知らない。
言いたいことを言っておけばいいのだ。
そもそも俺の最大の復讐対象は竜司であって、こんなやつではない。
「どれひとつ、見せてやろうか。
そこの金髪の女がお前の代わりに戦ってくれるのだろう?
確か2メートルしか動けないんだよな。
だったら力勝負だ」
こいつこんな道端で戦うつもりなのか?
そう言えばいつもはキンキンとうるさいくらいの妹の鬼灯は何も言わないがどうしたんだ。
そう思って鬼灯の方を見ると、顔が青くなって体が震えている。
そこまで兄を恐れているのか。
「どうしたんだ?!
こいよ!
異世界から来たくせに実は弱いのか?」
アリアの方を見ると、彼女はうなずく。
瞳には闘志が燃えていた。
俺もうなずき返す。
アリアが副会長の前に立つ。
「どっからでもかかってきてくれて構わないぜ!」
副会長は余裕の笑みを浮かべている。
そんな副会長と相対するアリア。と、次の瞬間、彼女はその場から消えたかと思うと、間合いを詰め、副会長に蹴りを浴びせる。
だが。
その蹴りは副会長の指1本で止められていた。
「バカな!」
うろたえるアリアに勝ち誇る副会長。
アリアは蹴りを入れたまま動くこともできないようだ。
「これが、結界を極めた者の力だ」
副会長はそう言うと、動けないアリアの頭に触る。
途端にアリアの頭は地面に叩きつけられる。
そして、浮き上がると副会長の手に頭をうちつけられた。
まるでアリアがおもちゃのように、それが何度も繰り返されるのだった。
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